夏の風物詩ともなった人気ペット、金魚
こちらも江戸時代の王道ペット、金魚。
手軽に飼うことができるペットとして今も人気の高い金魚ですが、その祖先は今から1600年ほど大昔に中国で見つかった突然変異の赤いフナだったんだとか。品種改良を重ねに重ねて今のように多種多様な金魚になったのです。
ちなみに、金魚は人間が手を加えることで現在のような華麗な姿を保っているので、金魚に手を加えず放っておくと祖先のフナに近い姿に戻っていくんだそう。金魚は自然界には存在しない不思議な生き物なのですね。
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そんな金魚が日本にやってきた時期については諸説ありますが、室町時代というのが有力です。結構、昔からいたんだ。
金魚が庶民にまで愛されるペットとなるのは江戸時代も中期以降のことで、国内での養殖が盛んにおこなわれるまでは舶来の金魚は「こがねうを」と呼ばれ一部のセレブだけが鑑賞できる特別な生き物でした。
江戸時代中期以降、養殖技術の発展により金魚は大量生産が可能になり価格も低下、金魚を売り歩く金魚売りや金魚の露店が町に現れるようになるとグンと手に入りやすくなり庶民的なペットになりました。
金魚の養殖は武士の副業としてもメジャーだったそう。
こちらの絵は江戸時代の夏の風物詩ともなった金魚売。初夏から秋の始め頃まで「めだかぁ~、金魚ぅ~」と呼ばわりながら、金魚の入った桶を担いで金魚を売り歩いていました。桶の金魚が弱らないよう歩き方にもコツがあったんだとか。
また、桶の取っ手をよく見ると金魚の入った「金魚玉(きんぎょだま)」が。これはガラス製の金魚入れで、軒先などに吊るして金魚を鑑賞しました。日の光にキラキラしてさぞ美しかったことでしょう。
値段も下がり庶民でも手に入れやすくなった金魚ですが、ある1冊の金魚飼育書の登場により人気爆発、金魚ブームが到来しました。
その本がこれ。
1748年(寛延元年)に出版された『金魚養玩草(きんぎょそだてぐさ)』です。
その内容は現代の金魚ガイドブックに劣らず、いい金魚・悪い金魚の見分け方、オスとメスの区別、卵の産ませ方、エサのつくり方、病気とその治療法などなど。図解入りでわかりやすいこともウケて大ヒットし、なんども再版されベストセラーとなり金魚ブームの火付け役となりました。
では、江戸時代の庶民はどんな風に金魚を飼っていたかといいますとこんな感じ。
木製の桶に金魚が泳いでいて、水草も見えます。のぞき込む子どもたちはエサをやっている最中のようで、その表情はいかにも興味津々、とても楽しそうです。
現代では金魚を飼うとなるとガラスやアクリル、プラスティック製の水槽が一般的ですが、江戸時代には大きなガラス製品は一般的ではなく、こうした木桶のほかタライや陶器もしくは漆器の水鉢に入れて飼いました。
レトロな印象のあるガラス製の金魚鉢も意外と歴史は浅く、普及したのは昭和以降のことです。最近、丼で金魚を飼育する「どんぶり金魚」がSNSなどで話題になっていますが、江戸時代の飼育法に似てますね。
江戸時代、桶や水鉢で金魚を飼っていたので、鑑賞スタイルも現代と異なり上から金魚をながめる「上見(うわみ)」が一般的でした。
余談ですが、「上見」スタイルが一般的だったので、金魚は「上から見た時にいかに美しく見えるか」を第一に改良が重ねられたそうです。
いくら眺めていても見飽きることのない愛くるしい金魚は浮世絵にもたくさん描かれています。金魚を擬人化したものなどオモシロイ作品もたくさんあり、いかに金魚が江戸時代の人々に愛されていたかがよくわかります。