常設展示も充実している國學院大學博物館
表参道駅から徒歩15分。閑静な場所にある國學院大学渋谷キャンパス。オシャレなエリアにあるだけに大学もとってもきれいでまずびっくり。
國學院大學博物館は構内のちょっと外れたところにある建物で、企画展のほか常設展示「考古ゾーン」「神道ゾーン」「校史ゾーン」があります。もちろん無料。
だがしかし、大学付属の博物館とは思えないほど凝った展示がされていて、展示物も盛りだくさんでここだけでもものすごく楽しい。特に「考古ゾーン」は圧倒されるほどの土器や石器があり歴史好きなら絶対興奮します。
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まさかの無料!まさかの撮影OKな企画展
さて、今回訪れたのは『浮世絵ガールズ・コレクション』という、いかにも楽しげな企画展。2019年6月29日から8月25日まで開催で、國學院大學博物館が新収蔵した浮世絵コレクションを初公開! とのこと。
展示スペースはコンパクトながら、とても見やすい展示がされているうえ、さすが大学の博物館というべきか解説がものすごくわかりやすい。
展示は第1章「3つのキーワードで知る!浮世絵」、第2章「江戸の美少女」、第3章「明治のおきゃん」の3章構成だったのですが、第1章で浮世絵初心者でも入りやすいよう、浮世絵の剃り方や浮世絵の見方といったファーストステップ解説もちゃんとしてくれていて感動しました。
入って2歩目くらいで感動していたのですが、(これで無料……)と思い出しさらに感動しました。
しかも、ほとんどの博物館や美術館が撮影NGのなかまさかの撮影OK(ただし個人利用に限る)。普通、スマホを取り出すだけで注意されるのが当たり前なのに、静かな館内にシャッター音を響かせてしまう背徳感といったらない。OKと書かれていても誰かに注意されるのではとビクビクしてしまった(笑)。
美人画といえば女性たちのヘアスタイルも見どころのひとつなのですが、江戸時代の女性の髪型は多種多様でとても複雑。そこについてもちゃんと解説してくれているので本当にありがたい。しかも、江戸時代の笄(こうがい)や簪(かんざし)まで(参考までに……)と横に展示されているという心憎いばかりの親切展示。
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粋な江戸美女ぞろいの第2章
第2章のテーマは「江戸の美少女」。ダイナミックな武者絵やかわいい猫の絵で人気の高い“奇想の絵師”歌川国芳の美人画がずらりと並びます。国芳の美人画がこんなにまとめて見られるのはなかなか珍しい(たぶん)。
取り上げられているのは『山海愛度図会(さんかいめでたいずえ)』という1852年(嘉永5年)に出版された国芳の美人画シリーズ。小さなコマ絵には日本各地の名産品が描かれ、メインの美女は副題の「〜たい」に沿って描かれたいろいろな年齢、職業、階層の女性たち。
女性たちは国芳が手がけ、コマ絵は国芳の弟子が手がけるという師弟コラボになっているのも本シリーズの特徴。なかには国芳の娘が描いたコマ絵もあります。葛飾北斎といい河鍋暁斎といい、天才絵師たちが自分の娘とコラボしがちなの微笑ましい。
展示作品のうち、特にグッときた作品をいくつかご紹介。
「〜たい」という副題のつけ方もユーモアとセンスがたっぷりなので注目ポイントです。
セクハラお獅子
お正月のお獅子がおめかししたかわいい女の子にグイグイ迫っています。少女は「やめてよ!」とばかりに手にした羽子板でガードしてます。
お獅子の斜め上方向から“ぬっ”と出てくる感じが絶妙です。ちなみに、コマ絵に描かれているのは、葛西の海苔漁のようすです。ほのぼの。
ん〜目にしみる〜
描かれているのは町屋の女性。大きな腕を手になにかを注ぐとしているところですが、とにかく煙がすごくてしかめっつら。なのにちょっと可愛らしく見えるのは口元のせい?
ついでに自作の宣伝も
話題の連続小説(合巻)を手にする女性はよほど面白いのか、読んでる途中に放心気味。読みながら続きが気になるその気持ちよくわかります。
ちなみに女性が持っている本はじつは国芳が挿絵を手がけている実在の本。自分の美人画で自作の宣伝をしているのです。
花より美しい
豪華な簪が目を引く美少女は武家のお姫さま。女中をお供に花見見物にやってきたところです。そわそわワクワクしている表情が初々しくて可憐です。
願うのはなに?
チャリーンとお賽銭を入れて熱心に願い事をする女性。後れ毛が色っぽいです。
後ろ姿にも余念がない
合わせ鏡を使って襟元のおしろいの仕上がり具合をチェック中。その表情を見るに満足のいく仕上がりだったようです。
ちなみに会場には体験コーナーがあって江戸時代の本物の鏡をのぞき込むことができます。予想以上にクリアに写り、びっくり。
こういう体験コーナーがある展覧会って新鮮ですし、浮世絵に描かれているものをリアルに感じられてとても素晴らしいと思います。
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