【250年前のアイドル】笠森お仙が人気絶頂のなか突然消えた理由とは?

  • 更新日:2017年8月18日
  • 公開日:2017年1月22日

江戸時代に江戸中の男性を夢中にさせた女性がいました。その名は「お仙」。現代のトップアイドル顔負けの人気を誇ったお仙とはどんな女性だったのかご紹介します。

水茶屋で働く仕事中の笠森お仙(鈴木春信 画)
水茶屋で働く仕事中のお仙。男性客がガン見してます(鈴木春信 画)

あそこの茶屋には美少女がいるらしい


笠森お仙江戸時代中期を生きた実在の女性です。

江戸は谷中にあった笠森稲荷門前の「鍵屋」という水茶屋(今でいう喫茶店みたいなもの)で働いていました。

今っぽく表現すれば「美人すぎるウェイトレス」というところでしょうか、お仙は、同時代に美人と評判となった浅草寺奥山の楊枝屋「柳屋」の柳屋お藤、二十軒茶屋の水茶屋「蔦屋」の蔦屋およしとともに「明和三美人」と呼ばれました。

お仙は12歳頃から家業の水茶屋でウェイトレス(茶汲み女)として働くようになったそうですが、当時から美少女だったお仙、たちまち「鍵屋とかいう茶屋で働いている女の子、めっちゃかわいくない?」とお客さんの間で話題になったんだとか。

お仙がどれくらい美人だったかについては、江戸時代マルチ文人にして御家人の大田南畝がこう書いています。以下、超訳。

「鍵屋のお仙という娘は生まれながらの美人で、スッピンでも超美人。お客は茶を飲んでも気もそぞろで、ヨダレ流してお仙に見とれてる」

今時の「美人すぎる○○」は場合によっては反応に困る場合もありますが、お仙の場合は正真正銘の美人だったようです。しかも接客態度もよかったそうなので、当然ながら人気はうなぎのぼりでした。

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人気浮世絵師の美人画モデルとなり人気大爆発


そんな美人すぎるウェイトレス・お仙の評判は口コミでじわじわと広がり、当時の人気絵師鈴木春信の耳にも届いたのか、春信はお仙をモデルに多くの美人画を描きます。

春信の描く美人画は、折れそうなほど細い手足と柳腰の儚げな美しさが特徴なのですが、これがお仙の可憐さとベストマッチ。

当時、浮世絵は今でいうブロマイド的な役割もしていましたから、お仙を描いた浮世絵はさながらアイドルのブロマイドのようなもの。お仙の浮世絵が江戸市中に出回ると、「なにこの美少女! え!? 鍵屋ってとこで働いんの? 今から行くわ」という具合に浮世絵を介してお仙ファンが激増し、鍵屋にはお仙を一目見ようとお客が殺到しました。

ではここで、鈴木春信によるいろんなお仙を一挙にご紹介。

まず、一生懸命働いているお仙ちゃん。

一生懸命働いている笠森お仙(鈴木春信 画)
画像中央にいるのがお仙です。

次、ナンパされるお仙ちゃん。

ナンパされる笠森お仙(鈴木春信 画)
絶対に連絡先を聞かれているな。

次はライバル対決なお仙ちゃん。

明和三美人のうちの二人、柳屋のお藤と笠森お仙(鈴木春信 画)
鍵屋に来店したのはなんとお仙と同じく「明和三美人」と評判をとった柳屋のお藤。ちなみに春信はお藤もたくさん描いています。そんなお藤にお茶を出すお仙ちゃん。2人の間には見えない火花が散っている気がします。

次は猫と戯れる無邪気なお仙ちゃん。

猫と戯れる笠森お仙(鈴木春信 画)
この男性客はお仙の気をひくために猫を連れてきたに違いない。

次は特別サービスなお仙ちゃん。

三味線を持つ男性の髪をとく笠森お仙(鈴木春信 画)
三味線を持っているのは女性ではなく男性です。男性客の髪をといてあげているお仙。この絵が出たあと、絶対、「あのぅ、ボクの髪もお願いしたいんだけど(チラ)」って客が続出したはず。お仙にしたら迷惑だったでしょう。

次はある意味、大サービスなお仙ちゃん。

江戸時代のアイドル・笠森お仙(鈴木春信 画)
お団子を持つお仙の絵なのですが、風でまくれてしまった裾からのぞく真っ白で華奢な足がまぶしい。しかもよく見ると、夏用の着物なのか腕がスケスケ。鈴木春信はたくさんの春画を描いていますので、チラリズムはお手のもの。でも、これもお仙にしたらいい迷惑だったでしょう。

と、まぁ、こんな感じでいろんなパターンのお仙を春信は描きまくりました。春信自身がファンだったんでしょうね。

なお、春信以外の絵師もお仙を描いています。

猫を懐に入れる笠森お仙(一筆齊文調 画)
ちょっと春信のタッチと似ていますが一筆齊文調という絵師の作品。一筆齊文調もたくさんお仙を描いています。懐に猫を入れているのですが、猫も美女に抱かれてうれしいのかニコニコしてます。

打って変わって、ずいぶん雰囲気の違うお仙の絵もあります。

アダルトな笠森お仙(『善悪三拾六美人』「笠森お仙」豊原国周 画)
『善悪三拾六美人』「笠森お仙」豊原国周
幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・豊原国周の作品。色気を通り越して凄みすら感じます。

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