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フィクションの正義のヒーロー、ホントは実在していた
義賊・鼠小僧といえば正義のヒーローとして歌舞伎や小説、ドラマなどで大活躍。
文豪・芥川龍之介も『鼠小僧次郎吉』という短編小説を書いていますし、近年の歌舞伎では、演劇界の奇才・野田秀樹が脚本・演出を手がけ、故・中村勘三郎(当時、勘九郎)がケチでドジな鼠小僧を熱演した『野田版鼠小僧』が大評判となりました。
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一番新しい「鼠小僧もの」ですと、赤川次郎の小説『鼠、江戸を疾(はし)る』をドラマ化したNHKの同名ドラマもあります。ちなみに、主人公の鼠小僧を演じたのは、この人。
タッキーこと滝沢秀明。
このように、数々の作品で主役を張った鼠小僧ですが、彼はフィクションではなく江戸時代の実在の人物でした。実際の鼠小僧も大泥棒だったわけですが、本当のところイメージ通り”義賊”だったんでしょうか?
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私はこうして盗賊になった――テンプレのような転落人生
鼠小僧、本名は次郎吉。
生まれたのは江戸時代後期の1797年(寛政9年)のことで、現在の日本橋人形町で産声を上げました。父親は歌舞伎小屋・中村座の便利屋だったそう。
当時の子どもたちと同じく、鼠小僧も10歳頃になると木具職人の家へ奉公に上がりました。が、向いてなかったのか、16歳で親元に帰って来ちゃいます。
その後、鳶職に就いたそうですが、素行がよろしくなかったようで25歳の時に「お前など息子じゃない!出て行け~!!」と勘当されてしまいます。
それからは絵に描いたような転落ぶり。
荒れた生活からギャンブルにのめり込み、あげく、ギャンブル資金を稼ぐために盗みに手を染めるようになったとか。
「もうカタギの世界には戻れねぇ」
覚悟を決めたかのように盗みを重ねていきました。のちの鼠小僧の自白によりますと、盗みに入ったのは武家屋敷ばかり28カ所32回。複数回入られている屋敷よ、とりあえずセコム入れとこうか。
しかし、28歳のときに現行犯逮捕されます。
ところが、鼠小僧はよほど肝が太かったようで「すみません、盗みはこれが初めてです。ほんの出来心で……」とあたかも初犯であるかのようにいけしゃーしゃーと大嘘をつき、絶体絶命のピンチを切り抜けました。
とはいえ無罪放免とは当然ながらいかず、入墨(いれずみ)のうえ江戸から追放という刑に処せられます。
余談ですが、江戸時代の刑罰には身体刑のひとつとして入墨を入れられるというものがありました。
入れられる場所や模様は罪状や地域によって異なったそうですが、「前科者である」という消えない烙印になったのです。場合によってはオデコに「犬」と入墨を入れられることも……あんまりだ!
さて、鼠小僧に話を戻しましょう。
ついに前科持ちとなってしまった鼠小僧、江戸を離れ上方へ向かったそう。新天地で心機一転、心を入れ替えマジメに働くようになる――ことはなく、再び盗人稼業に戻ってしまいます。ダメだ、こりゃ。