活動期間わずか10カ月!謎多き浮世絵師・東洲斎写楽の第2期の作品38点を紹介

世界にその名を馳せる謎多き天才絵師・写楽。写楽全4期のうち第2期の作品38点をご紹介します。「初めて見た!」という作品もきっとあるはず。



写楽による前書き。「都座」(芝居小屋の楽屋頭取)が口上を読み上げているという趣向(東洲斎写楽 画)
シワシワのおじいちゃんが孫からのお手紙を読んでいる図。ウソです。これは「都座」という芝居小屋の楽屋頭取が口上を読み上げているところ。透けている文字を見ると「口上 これより二番目新版似顔絵御覧に入れ奉り候」とあり、写楽による前書きになっているという趣向。
さて、東洲斎写楽といえばデフォルメの効いたインパクトのある役者絵(上半身だけの)が有名ですよね。たとえば、これとか。

『市川鰕蔵の竹村定之進』(東洲斎写楽 画)
大胆なカラーと斬新な表現、これぞ写楽(『市川鰕蔵の竹村定之進』)
前回の繰り返しになりますが、一般的に写楽作品として有名なものはほとんどがデビュー作28点に集中しています。つまり、第2期以降はマイナーな作品がたくさん。

第1期の役者絵は1794年(寛政6年5月)に上演された芝居の登場人物を描いたものでしたが、第2期では同年7月・8月に上演された芝居の登場人物たちを描いています。

さてさて、前置きはこれくらいにして実際に作品を見ていきましょう!

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デビュー作から大きく変化した第2期の作品たち


市川男女蔵(おめぞう)の関取雷鶴之助(いかづちつるのすけ)と三代目大谷鬼次(おにじ)の浮世土平(東洲斎写楽 画)
市川男女蔵(おめぞう)の関取雷鶴之助(いかづちつるのすけ)と三代目大谷鬼次(おにじ)の浮世土平
こうまで潔く尻を向けて立つ役者絵って珍しいんじゃないでしょうか。堂々たる尻です。ちょっと不自然なほどのポージングで立っていますが、それがまた浮世土平という悪役のふてぶてしさを表現しているようです。その横でカッコよく見得を切るイケメン、という対比がおもしろいです。

三代目大谷鬼次の川島治部五郎(東洲斎写楽 画)
三代目大谷鬼次の川島治部五郎
セクシーポーズをしているわけではありません。この人は悪役で、人を殺したところ。殺された人物の息子が近づいてきたので袖で顔を隠しているんです。刀の柄にかけた手が不気味です。殺(ヤ)る気に満ち満ちています。ギロッとにらむ眼光の鋭さもポイント。また、手足の線描に比べてとても太い着物の線が独特の雰囲気を生んでいます。

市川男女蔵(おめぞう)の富田兵太郎(東洲斎写楽 画)
市川男女蔵(おめぞう)の富田兵太郎
先ほどの悪役が殺した人の息子さんが、この人。手にした提灯の明かりに浮かび上がる敵(かたき)の姿を見て刀に手をかけたところです。この作品と上の作品は2つでセットになっているわけです。

頭から背中、足先にかけて描かれるS字ラインにこの人物の緊張を感じます。そして、裾からチラッとのぞくつま先がすばらしい!特にそった親指。このあたりの表現に写楽の非凡さを感じます。

悪人とその人に殺された息子、が登場することからもわかるようにこのお芝居『二本松陸奥生長(にほんまつみちのくそだち)』は、お家騒動と敵討ちをミックスさせたストーリー。上演されたのは1794年(寛政6年7月)で、「河原崎座」という芝居小屋で興行にかけられました。

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さて、この時に同時上演されたのが『桂川月思出(かつらがわつきのおもいで)』というお芝居(厳密には舞踊)で、年の差カップルの心中もの。その登場人物たちも写楽は7点の作品にしています。

三代目坂東彦三郎の帯屋長右衛門と四代目岩井半四郎の信濃屋お半(東洲斎写楽 画)
三代目坂東彦三郎の帯屋長右衛門と四代目岩井半四郎の信濃屋お半
立ち姿の男性と座り姿の女性。女性の腕と足がつくる曲線が艶めかしいです。許されぬ恋に落ちた年の差カップルの2人は、これから桂川に身を投げともに死出の旅路に向かうところ。2人の着物の縦じまはまるで川の流れのようにも見えます。

ちなみにお半ちゃんを演じた四代目岩井半四郎は、愛嬌のある丸顔から「お多福半四郎」の愛称でファンに親しまれた女形。写楽はデビュー作28点のなかでも半四郎の丸顔をユーモラスに描いています。

四代目岩井半四郎の信濃屋お半(東洲斎写楽 画)
四代目岩井半四郎の信濃屋お半
親子ほども年の離れた男性と恋に落ちるヒロインのお半。肩上げもとれない振袖姿はまだまだ子どもである証。黒地の着物に流れる白いラインの大胆さ、そこに華を添える襦袢や帯の赤い色。まだまだ子ども、それでも道ならぬ恋に溺れるというこのお半の危うさやアンバランスさを感じます。

三代目坂東彦三郎の帯屋長右衛門(東洲斎写楽 画)
三代目坂東彦三郎の帯屋長右衛門
男性がじっと見つめる先にいるのがお半ちゃん。身なりからしてお金持ちそうなオジさまです。手にした煙管(きせる)とその持ち方に大人の余裕を感じます。チェック×チェックというのもオシャレ上級者ならではのファッションです。

二代目小佐川常世の長右衛門女房おきぬ(東洲斎写楽 画)
二代目小佐川常世の長右衛門女房おきぬ
娘ほど年の離れたお半ちゃんとの恋に燃える帯屋長右衛門の妻です。顔から足元にかけて弧を描くようなラインが美しい。黒い帯が画面全体を引き締めています。帯を締める手がいいですねぇ。ギュッと掴んだ帯の描く直線が、この女性の芯の強さを象徴しているようです。

岩井喜代太郎の二見屋娘お袖(東洲斎写楽 画)
岩井喜代太郎の二見屋娘お袖
見事なS字ライン。着物の縦じまと相まってものすごくスラリと涼しげ。帯の深い緑色が全体をしっとりと落ち着かせています。煙管を持つ手元も「これぞ女形!」という色気を漂わせます。

市川鰕蔵のらんみゃくの吉(東洲斎写楽 画)
市川鰕蔵のらんみゃくの吉
懐から出した匕首(あいくち)をチラつかせる悪漢。V字に開いた襟元から伸びる首から顔にかけての白い部分と、同じくV字に開いた裾から伸びる脛から足元にかけての白い部分がシンメトリーになっているようです。

谷村虎蔵の片岡幸右衛門(東洲斎写楽 画)
谷村虎蔵の片岡幸右衛門
見ての通り悪役です。両手を開き見得を切っています。谷村虎蔵は悪役を得意とした役者なのですが、写楽はデビュー作28点のなかでも谷村虎蔵を描いています。2つを比較してみると、その表情はほぼ一緒。

谷村虎蔵の鷲塚八平次(東洲斎写楽 画)

ほらね。

これ以外にも写楽は同じ役者だと顔の描写がほぼ一緒ということがままあります。これも写楽の謎のひとつです。

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