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春画とはなにか?
「春画」とはなにか?
数十年前までは「春画」(読み方 しゅんが)という単語を口にするのも憚られるような日陰の存在だった春画。ですが、近年では春画の展覧会に大勢の人が集まり、局部への無粋なボカシなどの処置も行われないなど春画の社会的ポジションが大きく変わってきました。
とはいえ、改めて「春画とは?」と聞かれると「昔のエロい絵」というくらいしか知らない、という方も多いのではないでしょうか?では、まず、「春画ってなんなの?」というところから解説していきます。興味が出てきた方は、ぜひ以下の記事もチェックしてください!
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「春画」とは、簡単に説明すると「ありとあらゆるものの性の交わりを描いたもの」といったところでしょうか。
「え?男女の性行為を描いたものなんじゃないの?」と疑問に思う方もいると思いますが、春画で描かれるのは男女の交わりだけではありません。男性同士もあれば女性同士もある。
もっといえば、性行為の相手は人間に限らず、動物や死体、妖怪、幽霊といった人外だったりもします。
かの天才絵師・葛飾北斎の蛸×海女の春画などは有名ですよね。ちなみに、蛸×海女というアイデアは北斎以前からあるもので、北斎のオリジナルではありません。が、北斎の蛸×海女は迫力が類似作品を圧倒的に凌駕している傑作春画です。
これも人外もの春画。古典怪談『牡丹灯籠』を春画にしたもので、妻を亡くした浪人が抱いていたのは美女ではなく骸骨だった! という場面。前のページは男女との性交図でページをめくると女性が骸骨になっている、というユニークな仕掛け春画本です。
こちらの春画が有名な古典怪談『牡丹灯籠』を元ネタにしているように、春画は古典やその時の話題作、当時の流行や人気の人物、さらには教育書など硬派なものまで、ありとあらゆるものを元ネタにしたりパロディにしたりしました。
「性行為というのはこの世のはじまりである」ということをさまざまなアイデアと工夫でもって表現しようとしたのが春画ともいえるかもしれません。
この春画のように元ネタをわかっていると「ははーん、なるほどね」とニヤリとできるわけですから、春画というのは知的な遊びでもあったのです。
いろいろな呼び方があった春画
現代では性行為を描いた絵画作品を「春画」と総称し、「春画」と書いて「しゅんが」と読むのが一般的ですが、この呼称が一般に定着したのは明治時代以降のことだそう。
それ以前にはさまざまな呼び方がありました。どんなものがあったかといいますと、絵画作品なら「枕絵(まくらえ)」「笑い絵(わらいえ)」「ワ印(わじるし)」「つがい絵」「勝ち絵」など。本の場合は「艶本(えほん・えんぽん)」「会本(えほん)」「笑本(えほん)」「咲本(えほん)」など。
春画と「笑い」は切っても切り離せない関係にあります。農業大国日本においては古来、セックスは繁栄の証であり五穀豊穣の祈りに通じるものとして、生命力あふれるメデタイもの、という考えがありました。性に対して大らかで、笑いを交えて明るく楽しむ姿勢があったんですね。そのスタンスは春画にも顕著に表れており、笑いを誘う作品が多くあります。ゆえに「笑い絵」。
また、「枕絵」と呼ばれたのは「枕の伽にする絵」というような意味。春画は性行為の指南書という実用的な使われ方もしたそうで、花嫁道具のひとつとして持って行ったんだとか。果たしてどこまで参考になったかはわかりませんが…。
また、女性のための自慰の仕方を解説した春画なんてものもありました。
ほかに春画には火除けや厄除けなどありがたいご利益があると信じられており、戦国時代には「春画を持って出陣すると勝つ」という俗信も生まれ武士たちは鎧櫃に春画を忍ばせ戦場に出たんだとか。春画が「勝ち絵」と呼ばれる所以です。