さてお次は、『神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)』と同時上演された『四方錦故郷旅路(よものにしきこきょうのたびじ)』の登場人物を描いた役者絵をご紹介しましょう。

この作品は天才脚本家・近松門左衛門作の人形浄瑠璃『冥途(めいど)の飛脚』という悲恋の物語を歌舞伎にしたものです。

二代目市川高麗蔵の亀屋忠兵衛と初代中山富三郎の梅川(東洲斎写楽 画)
二代目市川高麗蔵の亀屋忠兵衛と初代中山富三郎の梅川
これから死出の旅路に出る悲劇のカップル。同じ色味の着物に帯、1本の傘を一緒に握る手に運命を共にする2人の覚悟が現れているようです。「黒雲母摺(くろきらずり)」という黒いキラキラ背景に浮かび上がる白い顔や手足はすでに死者のようにも見えます。

ちなみに、忠兵衞は飛脚問屋の養子で、遊女・梅川に入れあげた挙句、彼女を身請けするためにお店のお金に手をつけちゃうというダメ男です。

松本米三郎の仲居おつゆ(東洲斎写楽 画)
松本米三郎の仲居おつゆ
遊女・梅川のいる大坂新町にある遊女屋で働く仲居さん。

中島和田右衛門の丹波屋八右衛門(東洲斎写楽 画)
中島和田右衛門の丹波屋八右衛門
ダメ男・忠兵衞の親友役。難解な役どころ。情にアツい友だち想いの男、という解釈もされているが、写楽の絵を見る限りどー見ても悪役です。

四代目松本幸四郎の新口村(にのくちむら)孫右衛門(東洲斎写楽 画)
四代目松本幸四郎の新口村(にのくちむら)孫右衛門
養家の金に手をつけ、追われる身となった忠兵衞の実父。貫禄あります。息子を心配し、国元から様子を見にやってきた場面です。演じている四代目松本幸四郎は、男気あふれる役を得意とし写実的な芸風の役者だったそう。

四世松本幸四郎の新口村孫右衛門と中山富三郎の梅川(東洲斎写楽 画)
四世松本幸四郎の新口村孫右衛門と中山富三郎の梅川
恋人である忠兵衞の父・孫右衛門の草履の鼻緒が切れ転んだのを見て、それを助ける遊女・梅川。素性を明らかにしなくても雰囲気から息子の恋人だろうと察した父の複雑な表情が見所。「誠がない」といわれる遊女ですが、ここに描かれた梅川には誠実さが漂います。

以上、1794年(寛政6年8月)興行『神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)』『四方錦故郷旅路(よものにしきこきょうのたびじ)』より11点の役者絵でした。

写楽第2期の作品はこれでおしまい。2カ月で38点の作品を世に送り出しました。第1期よりさらにペースを上げています。そして、次の第3期ではさらにさらにペースを上げものすごい数の作品を次々に発表します。版元・蔦屋重三郎と写楽は勝負をかけたのです。

そんな決意の第3期はまた次回に!

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