暑さを忘れる「冷やし」メニューいろいろ


夏がやってくるとメニューに増えるのが「冷」が名前についた料理たち。

冷やし中華に冷麦、冷奴……最近では冷やしおでんとか冷やしカレーなんてのもありますよね。こういった「冷やし」メニュー、じつは江戸時代にもいろいろとありました。

その1 冷奴


冷奴は江戸時代の夏の定番メニュー

米、大根と並び「江戸三白(さんぱく)」と呼ばれるほど食材として重宝された豆腐。値段も手頃で栄養価も高い豆腐は庶民の食卓に欠かせない食材として大人気で、夏ともなれば江戸っ子たちは冷奴に舌鼓を打ちました。

江戸時代の豆腐売り(『守貞謾稿』より)
江戸時代後期の風俗百科事典『守貞謾稿』に描かれた豆腐売り。水を張った桶に豆腐を入れて売り歩きました。
余談ですが、なぜ冷やした豆腐を「冷奴」と呼ぶのかについて。

「奴(やっこ)」というのは参覲交代などの大名行列の際に先頭で槍などを持つ「槍持奴」のこと。この槍持奴が着ていた半纏(はんてん)に「釘抜紋(くぎぬきもん)」と呼ばれる大きな四角い紋が染め抜かれていたのですが、これが豆腐にそっくりだったのです。そこから豆腐を「奴豆腐」と呼ぶようになり、冷やした豆腐は「冷奴」、あたたかい湯豆腐は「湯奴」「煮奴」と呼ぶようになったんだそう。

さて、江戸っ子たちはどうやって冷奴を食べていたのか、気になりますよね?

『守貞謾稿』によれば、冷奴といえば生醤油に薬味がポピュラーだったよう。今と同じだ!

冷奴の薬味というと今だと刻みネギが真っ先に思い浮かびますが、江戸時代の王道は、大根おろし、青海苔、わさび、辛子、青唐辛子、陳皮(ちんぴ/みかんの皮を乾燥させたもの)などが薬味として使われていました。たしかにどれもおいしそう。レッツ、チャレンジ。

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その2 冷そうめん


そうめんは江戸時代の七夕に欠かせない食材(『文月西陣の星祭り』三代歌川豊国 画)
そうめんは七夕のイベントに欠かせない食材でもありました(『文月西陣の星祭り』三代歌川豊国 画)
夏休みのお母さんたちの強い味方、そうめんも江戸時代から夏の定番グルメでした。

そうめんの歴史については不明な点が多く、奈良時代に唐から伝来した索餅(さくべい)というお菓子の一種がそのルーツともいわれ、現代のような姿になったのは室町時代なんだとか。

江戸時代になると庶民にも七夕のイベントが浸透し、七夕にそうめんを食べる習慣も定着します。そんなこともあり、そうめんは夏の定番グルメになっていきました。醤油ベースのツユにつけて食べる、というのも現代とほとんど同じです。

江戸時代、そうめんを茹でる女房とそうめんを食べる亭主(『無益委記(むだいき)』恋川春町 作)
そうめんを茹でる女房とそうめんを食べる亭主。江戸版SFシュールマンガ『無益委記(むだいき)』恋川春町 作)より。
ちなみに、あたたかいツユにそうめんを入れた「にゅうめん」も冬の定番グルメとして江戸時代以前から親しまれていたんだとか。冷たいそうめんよりあたたかいそうめんの方が先に定着していたというのはちょっと意外な感じがしますね。

その3 冷水(ひやみず)


歌舞伎役者が演じる江戸時代の冷水売り(『清書七假名 みづうりの夕照八景のうち』三代歌川豊国 画)
歌舞伎役者が演じる冷水売り。激流を泳ぐ鯉を染め抜いた浴衣も涼しげでステキ(『清書七假名 みづうりの夕照八景のうち』三代歌川豊国 画)
暑い夏、カラカラに乾いた江戸っ子たちの喉を潤してくれた夏ドリンクがこの冷水。「ひやっこい、ひやっこい」の売り声で江戸市中を歩いた冷水売りは夏の風物詩でした。

冷水売りが担ぐ桶に入っているのは、掘抜き井戸から汲んできた冷たい湧き水。冷蔵庫がない時代なので、冷たい水というだけで助かる。この湧き水に砂糖を加え、白玉を浮かべたものが「冷水」です。お値段は1杯4文(約80〜100円)とリーズナブルで、追加料金を支払えば、砂糖の増量サービスも受けることができました。

冷たさをよりいっそう感じることができるように、錫(すず)や真鍮(しんちゅう)などの金属製の器で提供したそうですから、なかなか商売上手です。金属の器は見るからに涼を呼びそうです。

『守貞謾稿』によれば、江戸の冷水は白玉入りだけど、京坂の冷水は白玉なしの砂糖水で「砂糖水売り」と呼ばれたんだとか。なお値段も1杯6文と江戸よりちょいお高い。白玉ないのに……。

冷蔵庫もないし、氷も超貴重だった江戸時代、時間が経てば冷たい湧き水も生ぬるくなったでしょうが、「ひやっこい」の売り声に呼び止められ日陰で飲む冷水は身も心も涼しくしてくれたことでしょう。

お次はドリンクつながりで夏の飲み物についてご紹介。

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