足のない幽霊の原点?
切れ長の目もとが色っぽい美人ですが、腰から下はすーっと消えています。この絵の作者は江戸時代を代表する画家のひとり円山応挙(まるやまおうきょ)。
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写生を重視した画風が特徴です。応挙が描いたこの幽霊画は「足のない幽霊」の元祖ともいわれており(諸説あり)、以降の幽霊画に大きな影響を与えました。
一説に、夢に現れた亡き妻の姿を描いたとも。
もう1枚、応挙の幽霊画。
下卑た表情がグロテスク、ときどきユーモラス
さきほどのしっとりと美しい幽霊とはうってかわって、なんともユニークな幽霊画。これも応挙の作品です。伺うような上目遣い、にんまりと笑う口元からニョッキリと伸びた歯……インパクトがものすごい。
応挙関係でもう1枚。こちらは楽しい作品です。
リアルすぎる幽霊、本当に“出た”
写生を重視した応挙は、幽霊も写実的に描きました。いないものをリアルに描くというのもなんだか変な話ですが……とにかく、応挙の幽霊は超リアル。
ということで、幕末の絵師・月岡芳年(つきおかよしとし)がこんな絵を描いています。ズバリ、あまりに応挙の幽霊画がリアルなので本当に幽霊がヒュ~ドロドロと出てきたの図。
芳年らしいブラックユーモアがきいています。
お次は月岡芳年の幽霊画をご紹介しましょう。独創的な作品で知られる浮世絵師ですので、幽霊画でもオリジナリティを発揮しています。
妙にエロティック
亡くなった妊婦を埋葬するとなるという伝統的な幽霊・妖怪「産女(うぶめ)」を描いた1枚。
腰布は血にまみれ、よくみると抱いている赤ん坊の細い足が見えています。恐ろしくも物悲しい雰囲気の漂う幽霊画です。が、白いうなじから腰にかけてのS字カーブ、ぴったりとまとわりついた腰布……妙にエロティックでもあります。
次も芳年の作品。
本当に怖いのは生きている人間の妄執か
宿場にある宿屋の2階に通じる階段にいるのは、病によりやせ衰えた女郎。厳密にはまだ生きているので幽霊ではないのですが、骨と皮だけになりながらも客を招くような手つきには生への妄執が感じられます。
一説に、作者の芳年が実際に宿場で病み衰えた女郎を目にし、これを描いたとも。芳年は幽霊よりも恐ろしいものを見たのかもしれません。
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