遊女の1日
日の出とともに始まるハードな1日
ちなみに、遊女には「花魁」と呼ばれる高級遊女から「新造(しんぞう)」という若手の下級遊女まで厳格なヒエラルキーがあり、待遇もぜんぜん違いました。今回は平均的な遊女の1日を追っていきます。
また、江戸時代の時刻は不定時法のためここにご紹介する現代の時刻は大まかな目安ですのであしからず。
では、遊女の24時間を見てみましょう。
●早朝6時(卯の刻/明け六つ)●
ゴーン、ゴーンと浅草寺の時の鐘が鳴り響きます。夜明けです。遊女と夢のような一夜を過ごした客たちも帰る時間です。この頃になると吉原唯一の出入り口である大門(おおもん)の木戸も開きます。
遊女たちは客の目覚めとともに目覚め、帰り支度を手伝いました。そして、「もうお別れの時間だなんて……また絶対来てね」なんて言って別れを惜しみました。
もちろん“営業用”のセリフですが。これを「後朝(きぬぎぬ)の別れ」といいます。
こちらは後朝の別れを描いたところ。まだ薄暗い妓楼のなかでお客が朝帰りの真っ最中。遊女たちが階段のところまで見送りしながら、帰り支度を手伝っています。
上客の場合には大門までお見送りすることもあったとか。VIP待遇です。
お客を送り出したあと、遊女たちは部屋に戻り二度寝の床につきます。遊女たちは、夜中であろうとお客が目を覚ましたら一緒に目を覚まさねばならない、という暗黙の了解があったそうでお客と一緒の間は熟睡できなかったんだとか。
花魁といった高級遊女は個室を与えられていましたが、下級遊女や見習いの少女(禿/かむろ)たちは大部屋で雑魚寝。ようやく訪れた安眠のひとときでも下級遊女たちにプライベートはありませんでした。