• 更新日:2022年4月3日
  • 公開日:2016年12月13日


江戸っ子の大晦日はやっぱり年越し蕎麦で〆る


さぁ、いよいよ大晦日。

現代人の年越しスタイルといえば、12月31日の深夜0時に鳴る除夜の鐘を聞きながら(もしくはテレビで見ながら)年越し蕎麦を食べる、というのが多いんではないでしょうか。

でも、太陽が沈むと1日がおしまい、と考えられていた江戸時代大晦日の日没が年越しのタイミングでした。なので、大晦日の夜にお雑煮や年取り膳を食べ、歳神様をお迎えしたのです。ちなみに歳神様をお迎えするため大晦日の夜は一晩中、神社などにこもって寝ずにもの意味する習慣もあったんだとか。眠い!

なお、“不夜城”吉原も大晦日は午後10時頃(引け四つ)で全店閉店、元日も終日休業でした。なので、「吉原できれいな遊女を侍らせて寝正月とシャレこもう!」なんてことはどんなお金持ちにもできませんでした。

さて、大晦日に欠かせないBGMといえば除夜の鐘でしょう。

「除夜」とは「旧年を除く」という意味で、大晦日の夜に除夜の鐘をつくようになったのは奈良時代からなのだとか(諸説あり)。そんな昔からゴーン、ゴーンやってたんですね。ちなみに108回鳴らすのは人間の煩悩の数が108つと仏教でいわれており、鐘をつくことで煩悩をひとつずつ心から突き出してしまおうというわけです。

もうひとつこれがなくちゃ年が越せないというのが年越し蕎麦。

蕎麦といえば江戸グルメの代表格ですから、もちろん年越し蕎麦は大晦日の定番でした。

『どうれ百人一首』より年越し蕎麦をすする男性
『どうれ百人一首』より年越し蕎麦をすする男性
余談ですが、江戸っ子=蕎麦大好き!みたいなイメージがありますが、じつは江戸時代中期以前は江戸でも蕎麦よりうどんの方が人気でした。ナンテコッタイ。また、古くは今でいう蕎麦がき=蕎麦で、麺状のものは「蕎麦切り」と呼ばれ別メニューでした。

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やがて蕎麦の人気はうどんを凌駕し、江戸っ子はなにかにつけ蕎麦を食べたり、蕎麦を贈ったりするようになりました。引っ越したら「引っ越し蕎麦」、吉原の遊女が馴染み客から布団をプレゼントされたらご祝儀に蕎麦・・・てな感じです。歌舞伎役者は舞台でセリフを間違えると「とちり蕎麦」といって共演者や関係者に自腹で蕎麦を振る舞う、なんてユニークな慣習もあったそう。また、商家などでは毎月末(晦日〈みそか〉)に「今月も無事に過ごせたね」といって蕎麦を食べました。この「晦日蕎麦」のラストを飾るのが大晦日に食べる年越し蕎麦であり、江戸時代中期頃には庶民にも年末の恒例イベントとして定着したようです。

江戸時代中期に刊行された『眉斧日録(びふにちろく)』という本にも「闇をこねるか大年(大晦日)の蕎麦」とあります。

江戸の二八蕎麦屋(『大晦日曙草紙』より)
江戸の二八蕎麦屋。おいしそうに蕎麦をすするお客で賑わっています(『大晦日曙草紙』より)
なお、2月初旬の立春の前日に食べた「節分蕎麦」こそが年越し蕎麦だった、という説もあります。「年越しになんで蕎麦?」という理由については諸説あり、未だに決着はついていません。有名な説をざっと列挙するとーー

その1「細く長く説」
細く長い蕎麦にあやかって長寿を願う、というもの。
その2「運蕎麦説」
鎌倉時代に博多の承天寺で謝国名という人が、年末に貧しい人々に「世直し蕎麦」として人々に蕎麦餅を振る舞い、それを食べた人々の運気が上がったことにあやかって、というもの。
その3「切れやすい説」
ブチっと切れやすい蕎麦を食べ、1年の厄災や穢れ、なんなら借金とも縁を切ろう、というもの。
その4「蕎麦たくましい説」
激しい風雨にさらされても日が当たれば再び立ち上がる蕎麦のたくましさにあやかろう、というもの。
その5「金運説」
金銀細工師が金箔を打つ時にソバ粉を使ったり、金粉を集めるのに蕎麦団子を使ったことから、蕎麦はお金を集める縁起物、というもの。
その6「デトックスフード説」
蕎麦には五臓六腑を清める効果があり、蕎麦を食べ清らかな身体で新年を迎えよう、というもの。

などなど。どれもそれっぽくもあり、後付感もあり・・・果たして真実はどれだ!?

なお、具体的にどんな蕎麦メニューを年越し蕎麦として食べていたのかは残念ながら不明・・・。江戸時代はミニ氷河期で今より寒かったから、かけ蕎麦じゃないかと個人的には予想しています。でも意地っ張りな江戸っ子のことだから「もり蕎麦を寒い時に食べるのが粋☆」とか言いそうな気もしますね。

こうして大晦日の夜も更け、日が昇ればめでたい元日となりました。

あけましておめでとうございます。

大掃除に餅つき、年末セールに年越し蕎麦ーー今でも続く年末の恒例イベントは江戸時代にぜんぶあったんですね。意味が消えたもの、姿を消したものもありますが、伝統行事として大切にしたいものです。

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