• 更新日:2022年4月3日
  • 公開日:2016年12月13日


謎の物乞い集団登場。年末風物詩の商売いろいろ


先に登場しました大掃除用の煤竹を売る「煤竹売り」や「門松売り」など、“年末限定”の商売もいろいろありました。

期間限定の商売はほかにこんなものも。

江戸時代の暦売り(『守貞謾稿』より)
『守貞謾稿』より
これは「暦(こよみ)売り」。

暦とは今でいうカレンダーのようなものです。現代でも年末になると新年用のさまざまなカレンダーが書店や雑貨店などいろんなお店で売られていますが、江戸時代には暦売りが売り歩いていました

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暦売りが現れるのは年末から正月末までで、老人が多かったのだとか。江戸では「ご調宝大小柱ごよみ、綴ごよみ」という呼び声で売り歩きました。江戸の暦は現代のカレンダーとは全然別物。奥深くてユニークなのでまた別の機会に。

ほかに、神棚にお供えするお神酒(みき)徳利の口飾りを売る行商人や古いお札を集めて歩く「札納め」も暮れの風物詩。

徳利の口飾り売り(『四季交加』より 北尾重政 画)
笑顔がチャーミングな徳利の口飾り売り(『四季交加』より 北尾重政 画)
ユニークなのが「節季候(せきぞろ)」という物乞い軍団

↓これがセキゾロ。

節季候(せきぞろ)(江戸時代の門付の一種、『人倫訓蒙図彙』より)
『人倫訓蒙図彙』より
なんだこれ、怪しいぞ。

これは江戸時代前期から続く商売で、家の前で芸を見せチップをもらう「門付(かどづけ)」の一種。2〜3人ほどでグループを結成し、赤・白・青など色とりどりの紙で飾った編み笠をかぶったり、赤い布で顔を隠し頭にウラジロをつけた笠をかぶったり、松竹梅を描いた紙エプロンをつけたりと、メデタイんだかヘンテコなんだかよくわからないファッションで登場しました。

見るからにやかましそうな節季候ですが、これが騒音的な意味で本当にやかましかった

手に太鼓やササラという竹製の楽器、拍子木を持ちそれを鳴らしまくったうえ、「節季候、節季候、めでたい、めでたい」「節季ぞろぞろ、さっさござれや、さっさござれや」などと囃し立てたのです。

正直、メーワクもいいところ。正月準備で忙しい店先や家先でこれをやられた人々は「これあげるからどっかいって!」とばかりにお金や米などを与えて追っ払ったんだとか。そりゃそうだ。

最初は江戸・京・大坂の三都で見られた節季候ですが、江戸時代後期になると江戸だけになってしまったそう。うるさすぎたのかしらん・・・。

アイデア勝負の珍商売がたくさんあった江戸の町ならではの商売ですね。

最後は大晦日の吉原にだけ出現する謎のキツネ男

狐舞い(『隅田川両岸一覧』より「吉原の終年」葛飾北斎 画)
『隅田川両岸一覧』より「吉原の終年」葛飾北斎 画
画像中央にいるキツネ面をかぶっているのがそれで、「狐舞い」といいます。

吉原に限り、獅子舞ではなく狐舞いがやってきたのですが、華やかな吉原らしく狐舞いのビジュアルも華麗。白面のキツネ面に赤熊(しゃぐま)の毛をかぶり、身にまとうは錦の衣装。

御幣や鈴を手にしたキツネが笛・太鼓のお囃子とともに舞い踊る姿はさぞや美しかったことでしょう。でも、キツネ男は吉原の遊女たちにとっても嫌われていました。

なぜなら、

狐舞いに抱きつかれると妊娠する」という噂が真しやかに流れていたから。

遊女にとって妊娠は商売の妨げになるので、まああの手この手で避妊をしていました。ですので、狐舞いが妓楼に上がり込むと遊女たちは逃げ回ったそうです。なんと美しき鬼ごっこかな。

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