• 更新日:2017年8月18日
  • 公開日:2017年7月12日


空からの奇襲攻撃

「廿九 虎の御門外の景」(1859年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「廿九 虎の御門外の景」(1859年)
葵坂という坂道を行く武士たち。すると空からひもが切れた凧による奇襲攻撃が。突然のできごとに慌てふためく武士たち。なんというかサムライも幕末になるとだらしないもんです。

余談ですが、江戸時代に子どもにも大人にも大人気だった凧あげ。あまりの人気過熱ぶりに幕府が禁止令を出したこともあるのですが、たぶんこんな感じに武士に落下するとかあったんでしょうね。実際、大名行列にも落っこちたらしいし。

さらに余談。画像右に滝が見えますが、これは溜池から江戸城外濠に落ちる滝で、鯉が滝登りすることもあったそうな。

ちなみに背景は師匠・広重のこちらの絵にそっくりです。

『名所江戸百景』より「虎の門外あふひ坂」(歌川広重 画)
『名所江戸百景』より「虎の門外あふひ坂」
昼間と夜という違いはありますが、滝や坂、坂の上の木や建物もほぼ同じです。

驚きかたがマンガ

「三十 両国米沢町」(1859年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「三十 両国米沢町」(1859年)
画像奥に見えるのはたくさんの人が行き交う両国橋。手前に見えるお店が並ぶにぎやかなエリアは米沢町というところ。画像右、娘さんがヘンテコなポーズをしていますが、その視線の先には……うなぎ!? どうやら魚屋さん(?)がザルに入れていたうなぎが逃亡したらしい。画像左からは続々と逃亡うなぎがニョロニョロ。娘さんの災難は続くーー。

スポンサーリンク


運んでいるのは実は…

「卅一 砂村せんき稲荷」(1859年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「卅一 砂村せんき稲荷」(1859年)
ここは野菜の名産地として有名だった砂村にある仙気稲荷の境内。この稲荷社は現在も東京都江東区南砂にあります。さて、画像右にいる女性たちがなにやら不審げな表情で振り返っています。その視線をたどってみると……ふむ、大きな荷物を担いだ2人の男性が歩いているようす。しかし、よく見てください。荷物かと思ったら、なんと後ろの男性の巨大な陰茎ではありませんか。それは、女性たちもこんな表情になります。仙気稲荷は「疝気(せんき)」つまり下半身の病気にご利益がある、と有名だったので、この男性も治癒祈願にきたのでしょう。治るといいね。

ちなみに。こちらの哀れな男性の元ネタはもはやおなじみ『北斎漫画』(第12編)より。

「大嚢」(『北斎漫画』(第12編)より、葛飾北斎 画)

「大嚢」というタイトルの絵です。広景はこれを反転させて描いています。

ラッキー!

「三十二 上野広小路」(1860年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「三十二 上野広小路」(1860年)
キラキラとたくさんの星がまたたく夜。遅い時間にもかかわらず、大人も子どももたくさんいます。近くで縁日でもあったんでしょうか。画像左下、なにやら人だかりができていますが、どうやらなにかのはずみで屋台が壊れてしまったようです。食べものの屋台だったみたいで、混乱に乗じて子どもが散らばった品物を拾い食いしてます。悪いやつだな〜。

せっかくおめかししたのに(泣)

「三十三 柳橋妙見の景」(1860年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「三十三 柳橋妙見の景」(1860年)
「柳島の妙見さま」として信仰を集めた法性寺(ほっしょうじ)の近く、「橋本」という超有名な高級料亭がありました。特に若鮎が有名だったらしい。描かれているのは、その高級料亭の船着場。なのですが、おめかししてやってきた女性客がすってんころりん。しかも転んだ先の船には堆肥が積まれていたらしく、船頭が鼻をつまんでます。うわぁ、災難。さらに悲劇は連鎖し、女性が転んだ拍子にはね上がった板が男性のアゴを直撃。うわぁ、こっちも災難。

それにしても、このシリーズの登場人物はよくクソまみれになっています。

見世物じゃないわよ

「三十四 筋違御門うち」(1859-60年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「三十四 筋違御門うち」(1859-60年)
江戸城の筋違御門(すじかいごもん)前の広場。人相見が女性客の人相を見ようと天眼鏡をかざしたら、あらビックリ、こんなことになっちゃった。近くにいた子どもは目を丸くし、通りがかりの人々も思わず振り返っています。思いがけず見世物にされてしまった女性……知らぬが仏とはこのことです。

この奇想天外なアイデアにもじつは元ネタが。

「天眼鏡」(『北斎漫画』(第12編)、葛飾北斎 画)

『北斎漫画』(第12編)より「天眼鏡」。『北斎漫画』はネタの宝庫です。

ゆかいな酔っ払い

「三十五 吾嬬の森梅見もとり」(1859年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「三十五 吾嬬の森梅見もとり」(1859年)
梅の名所でもあった亀戸天神で梅見を楽しんだ人々が堤防を歩いています。先頭を歩く男性はすっかりできあがっているようで、頭にハチマキ、手には扇子、折ってきちゃったのか梅の枝まで担いでいます。マンガかコントに登場しそうな典型的な酔っ払い。さらに酒の入った瓢箪も落っことし、酒が道に流れています。後ろから追いかけてきたお友だちも「やれやれ」といった表情です。

江戸ブログ 関連記事

江戸ブログ 最新記事

あわせて読みたい 戦国・幕末記事