笑いごとじゃないよー

「三十六 浅草駒形堂」(1859年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「三十六 浅草駒形堂」(1859年)
満天の星がきらめく冬の夜。年の瀬も近いのでしょう。餅屋が夜を徹して餅をついています。が、杵にすいついた餅が伸びすぎて近くにいた男性の頭にくっついちゃいました。餅がくっついた当人は困り顔ですが、周りの男性陣はゲラゲラ笑っています。おそらく徹夜作業でへんなテンションに突入しています

このあとめちゃくちゃケンカした

「三十七 本所立川通り景」(1859年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「三十七 本所立川通り景」(1859年)
江戸の下町、本所を流れる竪川沿いには材木置き場がたくさんあったそうで、描かれているのはそこで働く男性たち。高々と積み上げられた材木の上に立った男性が、下で待つ男性に向かって木材を投げたまではいいが、途中でひもがほどけてバラバラになった木材の雨が頭上に降り注ぐ……。これはイタイ。上の男性も「あ! ごめん!」みたいな表情してますが、このあとケンカになっただろうことは火を見るよりも明らかです。

我も我もとーー

「三十八 小石川にしとみ坂の景」(1859年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「三十八 小石川にしとみ坂の景」(1859年)
のどかな江戸の郊外。ここは水戸の黄門さまでおなじみ水戸徳川家の上屋敷の裏手にあった小石川西富坂。たくさんのみかんの入った籠を担いでいた物売りが、運悪く野良犬のケンカに巻き込まれてしまい、たいせつなみかんがあっちにコロコロ、こっちにコロコロ。近くにいた人々は我先にとみかんを拾って食べようとしています。画像中央の女性は勢いあまってすっ転び、地面に顔からダイブ。もう少し自重しましょう。

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やけに美しいダイビングポーズ

「三十九 深川万念はし」(1860年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「三十九 深川万念はし」(1860年)
深川で漁をする漁師コンビ。川にしかけていた四つ手網を引き上げようとしたところ、ブチっ! とひもが切れ、引っ張っていた男性はその反動で川にダイブ。ピンと伸びた脚が妙にきれいなのが笑えます。

あと、魚も妙にキュート。

「三十九 深川万念はし」(歌川広景 画)の魚のアップ

ちなみに、四つ手網にまるで富士山がかかっているようなユニークな構図は北斎の代表作を参考にしています。

「網裏の不二」(『富嶽百景』(三編)より、葛飾北斎 画)

『富嶽百景』(三編)より「網裏の不二」です。広景は北斎が大好きだなぁ。

よーく見てね

「四十 四ツ木通りの引ふね」(1861年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「四十 四ツ木通りの引ふね」(1861年)
男女の客を乗せた小舟が川を進んでいます。普通の船と違い船頭さんがおらず、船に結んだ綱を船頭さんが引っ張っているのがおもしろい。これは「サッパコ」と呼ばれた曳舟で、曳船川のように川底の浅い川で使われたそうな。さて、船客がビックリしたような表情をしていますが、その理由はよーく見ないとわからない。じつは土手で一服している物売りとすれ違いざま、物売りのキセルに船客のひとりが吸っていたキセルが引っかかってしまったのです。キセル消失事件にビックリしていたわけです。

キセルにキセルが引っかかる様子(「四十 四ツ木通りの引ふね」、歌川広景 画)

ほら、よく見ると、キセルにキセルが引っかかっています。

頭上注意! ってもう手遅れか……

「四十一 浅草御厩川岸」(1860年)(『江戸名所道戯尽』より、歌川広景 画)
「四十一 浅草御厩川岸」(1860年)
土蔵に漆喰を塗っていた職人たち。あ! っと思ったらもう手遅れ。上にいた職人が手をすべらせ漆喰を盛っていた板を落としたら、そこは下にいた職人の頭上……。おかげで漆喰まみれです。「ごめん、ごめん」みたいな顔してるけど、ごめんじゃ済まされなそうです。

こちらのハプニングの元ネタになったのがこちら。

「足代の不二」(『富嶽百景』(3編)より、葛飾北斎 画)

『富嶽百景』(3編)より「足代の不二」。順調に作業中だった北斎の絵をもとに、広景はその後に起こったかもしれない出来事をユーモラスに描きました。ビフォーアフターみたいです。

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