酔っ払いの末路
こちらも花見の季節。花見で飲みすぎたんでしょうか。男性は足を踏み外してドブに落っこちたようで全身ドロだらけ……。ヒモの切れた草履を片手に、友だちに肩を貸してもらってトボトボ歩く姿は哀れを通り越して滑稽です。ドロだらけも気にせず笑顔で友人を支える友だち、マジいい奴。それに比べ通りすがりの女性たちはクスクス笑っています。ひどい!
ちなみに、このドロだらけコンビにも元ネタがあるんです。これ。
『北斎漫画』(第12編)より「泥田棒」。太もものドロ手形まで一緒です。
一陣の風が起こすドラマ
ここは神田川に架かる美倉橋のうえ。突然ふきつけた強い風に橋を渡っていた人々が慌てふためいています。画像左の男性は空高く傘を飛ばされ、隣の女性はマリリン・モンロー状態のうえ懐に入れていた懐紙が風に持っていかれて、中央の男性も笠を奪われ、右奥の男性は布をかぶっちゃって「前が見えないよぅ」となっています。それぞれの身に起きた一瞬のハプニングが生き生きと描かれています。
吹き荒れる風の音や人々の声まで聞こえてきそうなこちらの絵。登場人物たちには元ネタがあります。またもや登場の『北斎漫画』(第12編)より。
「風」というタイトルで北斎が5人の風に翻弄される人々を描いていますが、このうち3人を広景が作中に描いています。人物だけでもおもしろいですが、背景が加わることで世界がさらに広がる感じがしますね。
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笑いごとじゃないよ〜
満開の桜に彩られた隅田川。花見の人気スポットだった隅田川の土手で、縁台に腰かけ花見を楽しんでいた花見客に悲劇が。バキッと縁台の足が折れて、ドリフばりにドテーン、茣蓙(ござ)もベローン。もうメチャクチャです。隣にいた男女の客はのんきにケラケラ笑っています。いいから助けてやれ。
そばもしたたるいいサムライ
学問の神様・菅原道真公を祀る湯島天神。小高い場所にあった天神さまは眺望も抜群で、遠くには上野の不忍池が見えます。そんな絶景とは対照的に繰り広げられる悲喜劇。出前の途中、蕎麦屋は野良犬に足を噛みつかれ運んでいたそばを落っことしちゃった。で、運悪く、近くを歩いていた武士の頭にひっくり返ったそばが……。完全にコントです。お供はめっちゃ笑ってますが、武士はめちゃくちゃ怒っています。蕎麦屋が無礼打ちされないことを祈るのみ。
これもなにかの吉兆か
お正月のひと幕。江戸の空にたくさんの凧があがっています。画像中央、よく見ると凧の糸になにかが引っかかっています。どうやら、お正月の風物詩・三河万歳コンビのひとりがかぶっていた烏帽子のようです。烏帽子を取られた本人も、近くにいた子どもも大人もみんな大笑い。笑う門には福来るーーお正月からおめでたい。
これでもくらえッ!!
金太郎ファッションの子どもたちが水鉄砲で遊んでいたら、通りがかりの武士の顔面にクリーンヒット! わざとじゃないんですよ、と隣にいた女性もいっています(たぶん)。幕末ともなると武士も“笑い”の対象に成り下がっていたようです。
いや〜ん、誰かとって〜〜
ここは潮干狩りスポットとして有名だった深川洲崎。たくさんの人が潮干狩りに興じています。余談ですが、春から初夏のレジャーとして潮干狩り(当時は「汐干狩」と書いた)が人気となったのは江戸時代からのことで、アサリやハマグリ、カキなどもザクザク採れたらしい。こちらの絵では、貝の代わり(?)に巨大なタコが出てきたよう。しかも女性の白い足にグネグネと絡みついています。画像左下の男性も真っ黒な魚(ヒラメ??)が出てきて驚いたのか、ひょうきんにひっくり返ってます。
ちなみに……こちらの作品の風景の下敷きになっているのは師匠・広重のこの絵。
ぱっと見だとわかりにくいですが、画像右半分に注目。土手や建物、遠く&手前で潮干狩りしている人々までそっくりです。のんびりした潮干狩り風景も広景の手にかかるとずいぶんユーモラスに仕上がりました。