ステップ8 浮世絵を販売するのも版元の仕事
作品が完成したら、版元が自分の店で販売したり、小売店に卸したりします。
わたしたちが江戸時代の浮世絵(複製じゃない)を買おうとするとかなりの出費を覚悟せねばなりませんが、江戸時代、浮世絵はとってもリーズナブル。時代によって変動はありますがだいたい大判錦絵1枚20文前後(500円くらい)という感じでした。ああ、江戸時代にタイムトリップできたら浮世絵を買い漁りたい……。
さて、版元は作品の売れ行きをみて、人気があるようならば摺師に追加摺りを依頼しました。ちなみに最初に摺るものを「初摺(しょずり)」といい、200枚前後を摺ったといわれます。対して摺増ししたものを「後摺(あとずり)」といいます。
一説に、「2,000枚売れれば好評だった」といわれる浮世絵作品ですが、歌川広重の代表的シリーズ『東海道五十三次』のなかには10,000枚摺ったものもあったとか。いかに『東海道五十三次』シリーズが大ヒット作品だったかがわかります。
浮世絵は版画なので、「初摺」でも「後摺」でも大差ないように思いませんか?
ところがどっこい、「初摺」と「後摺」ではクオリティが全然違うんです。
なにが違うのかをざっとまとめるとーー
- 「初摺」は絵師が細かくチェック、「後摺」は摺師まかせ
- 「初摺」は描線がシャープ、版木が摩耗するので「後摺」は描線がぼやける
- 「後摺」は大量生産が目的のため、手間のかかる技法は省略されることも
という感じです。
浮世絵を鑑賞する際にはちょっと気にして見てみると楽しさ倍増です。
浮世絵というと「絵師の作品」というイメージがありますが、じつは版元の意向が大きくものをいい、絵師・彫り師・摺師の匠の技が結集してこそ浮世絵というのは成立していたのですね。浮世絵の展覧会も各地で開かれていますので、ぜひ、肉眼で“庶民のための超絶美術”を楽しんでみてください!
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