ステップ5 絵師による色指定


彫師から墨摺を受け取った絵師は、色指定をしていきます。

が、ここでも版元の意見が大きく影響します。絵師が使いたい色数が自由に使えるわけではないんですねぇ。モノクロの段階での絵のできばえとか、流行などを踏まえて版元が色数にも意見を出します。

版元の意見を踏まえ、絵師は頭のなかに完成形をイメージしながら、1色ごとに墨摺に色を薄朱などで指定します。着物の模様などもこの段階で指定します。

色の指定が完了したら、再び彫師の出番です。

ステップ6 使う色の数だけ版木をつくる


色指定された墨摺を絵師から受け取ったら、彫師は色ごとに版木を彫っていきます。

絵を裏返しに版木にのり付けして彫っていくのですが、「ここは赤」と指定された部分だけが残るように彫るのがポイントです。たとえば、赤・青・黄・黒の4色で構成された浮世絵版画なら、赤用の色版木、青用の色版木、黄用の色版木、黒用の色版木、と使用する色と同じ数の色版木がつくられたわけです。20色なら20枚の色版木が必要なのですから、たいへんな手間がかかります。

浮世絵の彫師の作業場(『的中地本問屋』十返舎一九 作)
新人からベテランまでが働く彫師の作業場(『的中地本問屋』十返舎一九 作)
さぁ、次は摺師の登場です。

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ステップ7 作品の出来・不出来を決定づけるのは摺師の腕


摺りの作業を行う前にまずは下準備。

使う紙に、“にじみ”を防ぐため「どうさ」というニカワ液にミョウバンを加えた液体を塗ります。それが終わったら、紙をヒモにひっかけて陰干しします。

「どうさ」を紙に塗る女性たち(『今様見立士農工商』「職人」部分 三代歌川豊国 画)
「どうさ」を紙に塗る女性の頭上にはたくさんの紙が陰干しされています(『今様見立士農工商』「職人」部分 三代歌川豊国 画)

さて、摺りの作業を見ていきましょう。

まず、竹の皮を棒に巻いた“ミニほうき”のような「はこび(とき棒)」という道具で水に溶いた絵の具(顔料)を鉢から版木に移します。

絵の具の原料は、植物や鉱物など天然素材が中心。赤・青・黄・黒の4色が基本カラーで、これを混ぜ合わせたり、素材を変えることで無限のカラーバリエーションを生み出しました。

摺師の作業場の棚に並ぶ絵の具の入った鉢(『今様見立士農工商』「職人」部分 三代歌川豊国 画)
摺師の作業場の棚に並ぶ絵の具の入った鉢(『今様見立士農工商』「職人」部分 三代歌川豊国 画)
次に刷毛(はけ)で絵の具を版木に広げます。

そしたら、色版木につけられた「見当」に合わせてピッタリと紙を置き、紙の繊維一本、一本にまで色が浸透するよう馬連(ばれん)に体重を乗せ摺り込んでいきます。

摺師の体重が紙全体に均等に乗るように、摺台は手前が高く、奥が低い構造になっています。

こうして1色が摺りあがると、摺師は自分の左側に摺りあがった紙を置きできばえをチェックしました。

摺る順番にも決まりがあって、輪郭線→薄い色or面積の小さい部分→濃い色と摺り進めていくのが一般的でした。

なんとなく、輪郭線は最後に仕上げとして摺るイメージがあったのでこれは意外。なんでも、色ズレを防ぐために基準となる輪郭線を最初に摺るのが合理的だったようです。

さて、ここで摺師による代表的テクニックをいくつかご紹介。

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