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煙管はそれを持つ人のシンボル
たとえば、遊女。
喫煙をする遊女の姿が数多くの浮世絵にも描かれているように、タバコと遊女の縁は切っても切れぬほど深いもの。
そんな遊女たちが愛用したのが朱塗の羅宇が艶めかしい長い煙管。ランクの高い遊女ほど長い煙管を持つことができたんだそう。

中央の花魁が持つ煙管は特に長い(喜多川歌麿 画)
遊郭での風習に吸いつけタバコというものがあります。
張見世(はりみせ)に並びお客を待つ遊女は、気に入った男性客を見つけると格子越しに自分が吸った煙管を男性の方に差し出します。
これを男性が受け取ればカップル成立、男性はその遊女の客として店に入る、というわけです。遊女流の“逆ナン”。なんとも色っぽい。
イケメンが店の前を通るとあちこちから煙管が差し出されたんだとか。
たとえば、歌舞伎役者。
個性的な太い煙管が好みだったようで浮世絵にもたくさん描かれています。

当時の人気役者が手にしているのはズングリとした形が特徴的な太い煙管(『四世松本幸四郎の山谷の肴屋五郎兵衛』 写楽 画)
ほか、尾張藩の7代藩主の徳川宗春の煙管はかなりユニーク。
宗春は、“暴れん坊将軍”こと8代将軍・徳川吉宗のライバルとして有名なお殿様。
吉宗の質素倹約政策に対して、「経済を活性化させるには消費が一番」という政策を打ち出し名古屋バブルをつくりだした人物です。
宗春は非常に変わり者のお殿様で、行動も自由なら、ファッションも奇抜。ド派手な着物に、頭にはヘンテコな笠、めちゃくちゃ長い煙管を手に牛にまたがり市中を歩いたというから普通じゃありません。

画像右、牛に乗っている変な格好の人物が徳川宗春
そんな宗春の煙管はなんと長さ約3.6m(2間)だったとか。ホントに喫っていたとしたら肺活量半端ない。
実用品とは思えませんが、これは締め付け政策を打ち出す時の将軍・徳川吉宗に対する反骨精神のシンボルだったといわれています。
一方、お金持ちのお坊ちゃんや遊びを極めた「通人(つうじん)」などは全部が銀でできたゴージャスな銀煙管をステータスシンボルにしたんだそう。
全部銀ですからね、お値段も相当なものだったでしょうから、そりゃシンボルになります。
余談ですが、「ヤニさがる」という言葉があります。意味は「気取って構える」「得意げになってニヤニヤする」など。主に男性に対して使われる言葉で、あんまりいい意味ではありません。
この「ヤニさがる」は江戸時代のカッコつけ男性の喫煙スタイルから生まれた言葉で、こんな風にカッコつけて煙管を喫う姿に由来するのだそう。

『吉野屋酒楽』より(山東京伝 作)
口にくわえた煙管の雁首をこれでもかと上げています。めちゃくちゃカッコつけています。でも、これじゃあヤニが口のほうに下がってきてしまいます。で、カッコつけ男は「ヤニさがり」なわけです。