喫煙に欠かせないタバコセットとは?
さて一服しようとなった場合、屋内の場合なら用意するのが「タバコ盆」という喫煙セット。
こちらの絵には女性が横たわりながら読書する姿が描かれていますが、手前に煙管と取っ手のついた入れ物が見えます。これがタバコ盆です。
このタバコ盆は喫煙に必要なアイテムをすべて収納したとっても便利なすぐれもの。
最初は家にあるお盆で代用していたそうですが、次第に機能的にも装飾的にもグレードアップしていき、大名や豪商などはとても豪華なものを使っていました。
これは螺鈿(らでん)が施された非常に豪華なタバコ盆。その美しさはもはや芸術品です。
お盆に乗っているのは――
- 煙管(手前)
- 火入れ(左奥)
- タバコ入れ(中央)
- 灰吹き(右奥)
です。これが喫煙に欠かせない基本アイテム4点セットになります。
こちらは明治時代のタバコ盆ですが、明治天皇が宮中の御用掛に下賜されたという逸品。
陶器でできた火入れと灰吹きには菊の御紋があしらわれているほか、煙管にも菊と鶴が。こ、これは、畏れ多くて使えません。
さて、喫煙アイテムのうち、火入れは現代のライターの役割を果たしたもので、なかに炭や炭の粉を丸めた「たどん」を入れて、これに火をつけて着火具にしました。火は数時間キープできたそうで、火入れがあればいつでも好きな時に喫煙できました。
タバコ入れは刻みタバコの収納ケースで、灰吹きは今でいうところの灰皿です。
煙管ですが基本構造はこんな感じ。
「火皿」に刻みタバコを詰め、吸い口に口をあて喫煙します。
雁首と吸い口が金属製で、間をつなぐ羅宇(らお)が竹でできた「羅宇煙管」というものが多かったようです。
煙管はヤニがつくとタバコの味が落ちるのでこまめな手入れが必要でした。手入れの際には、紙をよったコヨリなどを管に通して掃除したそうです。
これはなかなか面倒。
ということで、喫煙の習慣が広まると羅宇屋という商売も登場します。
羅宇屋は劣化してしまった羅宇の交換や、ヤニ取りなどをしてくれる商売。交換用の羅宇や掃除グッズを携帯しています。
「らおや~……きせるッ!」
と、呼ばわりながら町中を歩き、声がかかると軒先で作業しました。
ちなみに、画像上が江戸の羅宇屋、下が上方の羅宇屋。東西でスタイルが違ったんですね。
煙管の種類には「羅宇煙管」のほかにも材質によって、金や銀、鉄といった金属で全体ができた「延べ煙管(のべきせる)」や、ガラス製の煙管、はたまた石や陶器製のちょっと変わった煙管もありました。
江戸時代のアイテムはいちいちオシャレです。