• 更新日:2017年5月5日
  • 公開日:2016年9月16日


喫煙に欠かせないタバコセットとは?


さて一服しようとなった場合、屋内の場合なら用意するのが「タバコ盆」という喫煙セット。

『東海道 藤川宿』(渓斎英泉 画)
『東海道 藤川宿』(渓斎英泉 画)
こちらの絵には女性が横たわりながら読書する姿が描かれていますが、手前に煙管と取っ手のついた入れ物が見えます。これがタバコ盆です。

このタバコ盆は喫煙に必要なアイテムをすべて収納したとっても便利なすぐれもの


最初は家にあるお盆で代用していたそうですが、次第に機能的にも装飾的にもグレードアップしていき、大名や豪商などはとても豪華なものを使っていました。

青貝松葉螺鈿タバコ盆
青貝松葉螺鈿タバコ盆
これは螺鈿(らでん)が施された非常に豪華なタバコ盆。その美しさはもはや芸術品です。

お盆に乗っているのは――

  • 煙管(手前)
  • 火入れ(左奥)
  • タバコ入れ(中央)
  • 灰吹き(右奥)

です。これが喫煙に欠かせない基本アイテム4点セットになります。

明治天皇が宮中の御用掛に下賜されたタバコ盆

こちらは明治時代のタバコ盆ですが、明治天皇が宮中の御用掛に下賜されたという逸品。

陶器でできた火入れと灰吹きには菊の御紋があしらわれているほか、煙管にも菊と鶴が。こ、これは、畏れ多くて使えません。

さて、喫煙アイテムのうち、火入れは現代のライターの役割を果たしたもので、なかに炭や炭の粉を丸めた「たどん」を入れて、これに火をつけて着火具にしました。火は数時間キープできたそうで、火入れがあればいつでも好きな時に喫煙できました。

タバコ入れは刻みタバコの収納ケースで、灰吹きは今でいうところの灰皿です。


煙管ですが基本構造はこんな感じ。

煙管の構造
画像引用元:JT
「火皿」に刻みタバコを詰め、吸い口に口をあて喫煙します。

雁首と吸い口が金属製で、間をつなぐ羅宇(らお)が竹でできた「羅宇煙管」というものが多かったようです。

羅宇煙管(雁首と吸い口が金属製、羅宇が竹製)

煙管はヤニがつくとタバコの味が落ちるのでこまめな手入れが必要でした。手入れの際には、紙をよったコヨリなどを管に通して掃除したそうです。

『江戸自慢程好仕入ほぐぞめ』(歌川国芳 画)
『江戸自慢程好仕入ほぐぞめ』(歌川国芳 画)
これはなかなか面倒。

ということで、喫煙の習慣が広まると羅宇屋という商売も登場します。

江戸時代の羅宇屋

羅宇屋は劣化してしまった羅宇の交換や、ヤニ取りなどをしてくれる商売。交換用の羅宇や掃除グッズを携帯しています。

「らおや~……きせるッ!」

と、呼ばわりながら町中を歩き、声がかかると軒先で作業しました。

ちなみに、画像上が江戸の羅宇屋、下が上方の羅宇屋。東西でスタイルが違ったんですね。

煙管の種類には「羅宇煙管」のほかにも材質によって、金や銀、鉄といった金属で全体ができた「延べ煙管(のべきせる)」や、ガラス製の煙管、はたまた石や陶器製のちょっと変わった煙管もありました。

江戸時代のアイテムはいちいちオシャレです。

銀製の延べ煙管(「銀三升御召形雲龍文延べ煙管」)
これは銀製の延べ煙管。本体には施された龍の彫刻が圧巻(「銀三升御召形雲龍文延べ煙管」)

明治時代中期の煙管屋
明治時代中期の煙管屋。バラエティ豊かな煙管が店先に並んでいる。煙管のほかにも喫煙グッズがずらり。画像引用元:長崎大学附属図書館

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