ちょっとメンドクサイ? 江戸時代の喫煙の作法
江戸時代前期には「茶道」や「華道」と同じように「タバコ道」ともいえる喫煙に関する作法が上流階級の人々の間で流行ったそうです。
それはたとえば…。
他家を訪問した際、使用人に案内された部屋に入ると席の前にはタバコ盆。
「うむ、これはありがたい。では、お心遣いに感謝して、亭主が現れるまで一服しながら待つことにしよう」と、煙管を手に取る。
これはNG。
手に取ってはいけない。
ややあって、亭主が現れひと通りのあいさつもすみ、「さ、タバコをどうぞ」と亭主に勧められたので、「それでは」と、ようやくタバコを喫う。
これもNG。
喫ってはいけない。「なんだい、わかってないね、この人は」と、なってしまう。
必ず遠慮します。
主人「さ、タバコをどうぞ」
客「いえいえ、まずはご主人から」
このやりとりを2~3度くりかえしてのち、ようやく客は煙管を手に取り一服。
そして、必ず褒める。
「これはまたよいタバコですなぁ」
これも重要。このひと言を忘れると、亭主にやっぱり呆れられてしまう。
正直面倒ですが、これがタバコ道における「遠慮の美学」。
とはいってもやっぱり江戸時代の人にとってもメンドクサかったようで、この作法もやがて消えてしまったようです。
愛煙家VS嫌煙家~400年以上続く終わりなき論争~
嫌煙の動きが強まる現代でも、嫌煙家と愛煙家のバトルは決着を見ませんが、喫煙率が今より圧倒的に高かったといわれる江戸時代にもやっぱり今と同じく、愛煙家と嫌煙家のバトルがあったようです。
では、さっそくではありますが、
江戸時代の嫌煙家VS愛煙家ファイッ!!
嫌煙家の主張
- 効能なくて害ばかり、健康に悪い(江戸時代のベストセラー健康本『養生訓』にもタバコの害が書かれている)
- 大切な財産を煙にするなんてバカバカしい。お金のムダ
- 喫煙している時間もムダ
- 愛煙家は「タバコはコミュニケーションツール」なんて言うが、タバコが登場する以前だってコミュニケーションできていた
- タバコの火が原因で大事な衣服や家、はてには命を落とすことだってある
- くわえ煙管、かっこ悪い
愛煙家の主張
- 嫌煙家は「タバコは毒」と言うが、タバコが原因の病気って具体的になに?
- お金がもったいないと言うが、タバコの喫いすぎで破産した人なんて聞いたことない
- 嫌煙家はタバコを喫ったこともないのに嫌悪するから所詮は空論
- ひとり旅の際、タバコの香りが野犬やオオカミ除けになることだってある
- 食後の一服はなにものにも代えがたい
- 仕事や読書の休憩時間に一服するタバコの美味さよ
江戸時代に決着はつかず、現代においても嫌煙家VS愛煙家の論争は止むことがありません。
今と異なるスタイルでの喫煙文化だった江戸時代ですが、変わらぬ部分もあったり、とっても興味深いですね。