やっぱり花より団子! お花見グルメは花見弁当&酒、そして桜餅
「花より団子」という言葉がありますが、このあたりも江戸っ子も現代っ子も似たようなもの。お花見グルメといったらまず思い浮かぶのが「お花見弁当」でしょう。
最近だとSNS映えするフォトジェニックなお弁当もたくさんありますよね。江戸時代の人々もお花見には豪華なお花見弁当を持って行きました。日頃は食べないような豪華メニュー満載の重詰スタイル。
一体、どんなお花見弁当に舌鼓を打っていたのか気になりますよね?
江戸時代の料理本『料理早指南』にお花見弁当のメニューがくわしく説明されていますので、ちょっとご紹介しますとこんな感じ。
- 一の重
- かすてら玉子、わたかまぼこ(アワビのワタ入りかまぼこ)、若鮎色付焼、ムツの子、早竹の子旨煮、早わらび、打ぎんなん、長ひじき、春がすみ(寄物)
- 二の重
- 蒸かれい、桜鯛、干大根、甘露梅
- 三の重
- ヒラメとサヨリの刺身(白髪ウドとワカメ添え)
- 四の重
- 小倉野きんとん、紅梅餅、椿餅、薄皮餅、かるかん
- 割籠(わりご)
- 焼きおむすび、よめな、つくし、かや小口の浸物
春の味覚が満載で、文字だけでおいしそうですね。なお、こちらのメニューは「高級お花見弁当」なので、あくまでセレブ向け。
ちなみに、これと対照的なのが落語『長屋の花見』に登場するドケチ大家さん作のお花見弁当。そのメニューは、酒の代わりに番茶、かまぼこの代わりに大根の半月切り、卵焼きの代わりにタクアンというもの。おい、大根ばっかりじゃないか!(怒
まぁ、これはあくまでフィクションのなかのドケチ弁当なのであれですが、庶民も“ハレの日”仕様のお花見弁当を楽しんだことでしょう。
お花見をはじめ、紅葉狩りやお月見などのレジャーに活躍したのが「提重(さげじゅう)」というピクニック用携帯お弁当セットです。
こちらは金蒔絵が施されたゴージャスな提重。
提重には、重箱のほか、お盆、徳利、盃、取り分け用の銘々皿、お盆などがコンパクトに収納されていました。こんな超便利グッズが江戸時代にあったなんてビックリです。
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さて、こちらもお花見には絶対に欠かせない「花見酒」。
“俳聖”松尾芭蕉の高弟で酒豪としても知られる宝井其角はこんな句を詠んでいます。
「酒を妻 妻を妾の 花見かな」
とにかく酒が呑みたいんだ、という気持ちがストレートに伝わってくる句です。
お花見を描いた浮世絵にもたくさんの酔っ払いが登場します。
陽気な酔っ払いは楽しいですが、泥酔して人の世話になったり、ほかの花見客とケンカするなどトラブルを起こす迷惑な酔っ払いもたくさんいたようです。そのあたりも昔も今も変わりません。
締めはスイーツでいきましょう。
桜の季節になるとあちこちに並ぶのが桜餅。近頃ではコンビニでも見かけます。桜餅というと関東と関西でスタイルが異なることは有名ですよね。
こちらは関西風の桜餅。「道明寺」ともいいます。道明寺粉を蒸したモチモチの餅が特徴。
一方、関東風の桜餅はこちら。
クレープのような薄い生地が特徴です。「長命寺」と呼ばれることもあります。その呼び名の由来ともなっている向島・長命寺門前の桜餅は江戸時代から現代まで知名度も人気もバツグン。江戸っ子たちもお花見のお土産に長命寺の桜餅を買っていきました。
関東風桜餅の元祖である長命寺の桜餅が誕生したのは1717年(享保2年)のこと。長命寺の門番だった山本新六という男性が、隅田川堤に咲く桜を見ながら「そうだ、桜の葉を塩漬けにしてスイーツをつくってみよ!」と思いつき生まれたのが桜餅なんだそう。
桜の香りがほのかに移った桜餅は大評判となり、お花見土産の定番となりました。
長命寺の桜餅は浮世絵などにもたびたび描かれたので、それが人気に拍車をかけ、江戸時代後期には1年間で38万個以上も売れたんだとか。ちなみに1個4文(約80〜100円)とリーズナブルなのもヒットの要因です。
長命寺の桜餅は現役。お花見のお供に江戸の味を楽しむのもいいですね。
江戸時代のお花見と現代のお花見、共通点もたくさんあります。いつの時代もお花見は楽しいものです。