人工的につくられた春限定の大イベント、吉原の夜桜


気軽には行けないけれどお花見の名所として有名だったのが、吉原です。

遊女と夜桜(『吉原仲之町』歌川広重 画)
遊女と夜桜ーーなんとも色っぽい組み合わせ(『吉原仲之町』歌川広重 画)
美しい遊女たちが待つ“不夜城”吉原は庶民にとって憧れの場所でしたが、なかでもお花見の季節は特別でした。
吉原のメイントリート「仲の町」に咲く満開の桜は夜になると雪洞(ぼんぼり)の灯りに照らされました。そこにしゃなりしゃなりと歩を進める花魁道中が通りかかるのですから、この世のものとは思われない妖艶さだったことでしょう。

そんな特別感しかない吉原の桜ですが、じつは植木職人の手によってつくり出された春限定の人工物だったのです。

毎年、旧暦の3月1日になると植木屋さんが吉原に開花前の根付きの桜の木を運び込み、メインストリートに植えました。茶屋からの眺めも考慮して高さ調整も行われたそう。なんという気配り!そして、桜が散ってしまう3月下旬までにすべての桜の木は再び植木職人によって引っこ抜かれました。う〜む、すごい。吉原のエンタメへのこだわりに執念を感じます。

江戸時代へタイムスリップしたらぜひ吉原の夜桜を見てみたいものです。

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ファッション自慢にコスプレ、コント、恋の始まりも!?


現代人でもお花見へ行くとなったらワクワクしますが、娯楽が少ない江戸時代、お花見は現代人が感じる以上に大イベントでした。前日からいそいそと支度をし、雨が降らないようにテルテル坊主に願いをかけるーー。

特に女性たちの気合いの入れようはスゴかった。

睡眠時間を削って念入りに化粧をし、お花見用に特別に用意した「花見小袖(花衣とも)」と呼ばれる晴れ着に身を包みました。その着飾りっぷりは正月以上だったとも。

花見小袖に身を包む女性(『隅田堤花盛』渓斎英泉 画)
画像左の女性は貝殻がデザインされた個性的な着物。女性たちはセンスをフルに発揮して自慢のファッションでお花見にのぞみました(『隅田堤花盛』渓斎英泉 画)
しかもユニークなのがお花見会場に到着したあと。

お花見場所を確保すると女性たちは自慢の小袖を脱ぎ、袖にひもなどを通して木に吊るし幔幕の代わりにしたんだとか。艶っぽいですね、男性たちの視線が釘づけになったこと間違いなし。

脱いだ花見小袖を吊るして幕にする女性たち(『絵本艶庭訓』)
『絵本艶庭訓』に登場するお花見のようす。小袖を吊るして幕のようにしているのがよくわかります
美しく着飾った女性たちが集まるわけですから、お花見は男女の出会いの場にもなったようです。女性たちが気合いを入れるのもうなずけます。きっとお花見からはじまる恋もあったはず。

お花見をする美女たち(『風流花見姿絵』菊川英山 画)
桜の美しさも霞むばかりのうるわしき美女たち。一目惚れもあった?(『風流花見姿絵』菊川英山 画)
おそろいファッションでお花見を楽しむかわいらしいグループ客もいました。

お揃いの服装で花見を楽しむグループ(『江戸名所 飛鳥山花見乃図』歌川広重 画)
『江戸名所 飛鳥山花見乃図』歌川広重
おそろいの日傘が楽しいこちらのグループは寺子屋の師匠(先生のこと)と習い子(生徒のこと)たちらしい。
子どもたちが読み・書き・そろばんなどを学ぶ寺子屋では、師匠がたくさんの習い子を引率してお花見することもよくあったとか。小学校の遠足みたいですね。一説に寺子屋に習い子を呼び込むためのPR活動でもあったとも。

さて、お花見といえばちょっとハメを外してドンチャン騒ぎがつきもの。

現代だとカラオケしたり一発芸を披露したり、コスプレしたりする人たちもいますよね。江戸時代はどうだったかというと…まあだいたい同じ!

江戸時代の人々も三味線をつま弾きながら吟じたり、踊りやモノマネを披露したり、コスプレをする人もいたそう。たとえば男性が女装したり、女性が男装したり、歌舞伎のキャラクターになりきってみたり。やることは時代が変わってもあんまり変わらない。

三味線にあわせて踊る男性(『浪花名所図会 安井天神山花見』歌川広重 画)
女形(おやま)の所作でしょうか。扇子を手にした男性が、腰をくねらせながら三味線にあわせて踊っています(『浪花名所図会 安井天神山花見』歌川広重 画)
「茶番」という即興劇も花見の余興として人気だったそうで、なかなか凝った出し物を演じるグループもいたらしい。

ほかにも俳諧に興じるグループなんかもいました。インテリ層は古式ゆかしく詩歌を詠んだりしました。

花見で桜の木に短冊を結ぶ女性(『十二ケ月の内 三月 花見』渓斎英泉 画)
よつんばいになった男性の背を踏み台にした女性が、桜の木に句をしたためた短冊を結ぼうとしています。恋の句かな?(『十二ケ月の内 三月 花見』渓斎英泉 画)

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