深川江戸資料館のこだわり その2。 あふれる生活感
細かい部分までやたら再現度の高い深川江戸資料館。
なかでも興味深いのが庶民が使っていた生活用品の数々です。現代では見かけなくなったものもたくさんあり、当時の生活を垣間見ることができます。
たとえば、これはなんだ?
パッと見、お酒を入れる徳利のように見えますがじつはこれ「瓦灯(がとう)」という照明器具なんですね〜。
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照明器具ひとつとってもバラエティ豊かで、いろんなタイプのものが資料館の家々にありました。
これは船宿にあった「八間(はちけん)」という照明器具。昭和の住宅にこんな感じの蛍光灯がありました、懐かしい。「八間」は中央に見える小皿に燃料を入れ灯芯に点火し、天井から吊るして使いました。部屋全体を明るくしてくれるので、船宿のほか料理屋や遊郭など人がたくさん集まる場所で使われたんだとか。
これも今では見ない生活用品。これ、なんだ?
答えは「紙ほうろく」。答えを聞いてもピンとこないですよね。これは、火鉢の上にかざして遠火で炙って茶葉をほうじるための道具です。フライパンが普及すると姿を消したんだそう。
これは今でもある生活用品。使っている人はむしろ意識高いかも。
七輪です。外に持ち出して魚などを焼いたのですが、長屋の住人同士で貸し借りすることもあったよう。本当に使っているような使用感がいい感じです。
台所にもおもしろいものがいっぱい。
裏長屋にも大きなお店にも必ずあるのがこの竃(かまど/へっつい)。それと画像左にある「流し」。「流し」といっても各家に水道は通っていませんので、水は流れません。すりこぎや大根おろしを作る「おにおろし」、ざる、桶などの台所グッズがコンパクトに収納されています。
なかにはこんなユニークな台所グッズも。
ジャーン。ホタテの殻でできた「貝おたま」です。ちょっとオシャレ。でも使い勝手はどうなんでしょうね。
天井の方を見上げればこんなものも。
これは煙出しのための天窓。なんとヒモで開閉ができます。深川江戸資料館では実際に自分の手で開閉することができます。雨の日は開けることもできないので、煮炊きの煙はどうしていたんでしょうか。
先ほどご紹介した長屋暮らしの36歳未亡人、三味線師匠・於し津さんの家にあったのがこれ。
藁で編まれたカゴに猫が入っています。江戸時代版の猫のケージです。こんなものもあったんですね。於し津さんは先生なので、お稽古中に猫が邪魔しないようにしていたんでしょうか。
これも今ではお目にかからない。
江戸時代のカレンダー「大小暦」です。270年ほど前のご先祖さまたちは普通に使っていましたが、現代人にはさっぱりわからなくなってしまいました。
狭い長屋では家具も最小限しか置けませんので、使わないときには布団を枕屏風でこんな風に隠していました。
敷きっぱなしにしないところは素晴らしい。でも、なかには万年床の横着者もいたことでしょう。
ちなみに、使わない時に布団を風呂敷で包むのは火事の時にすぐに運び出せるため。江戸時代の布団は高級品で家財道具のなかでも非常に大切なものだったんです。
深川ならではの生活用品もさりげなく再現されています。これ。
大人の下駄と子どもの草履ではありません。どっちも大人用。大人用にしてはやけに小さいこの草履は「足半(あしなか)」と呼ばれるもので、船頭や木挽職人のように水辺で働く人たちが使ったんだとか。かかとがはみ出すので、滑り止めになったらしい。なるほどね。
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