最後のテーマは「美しい」。
超美麗
なんという美しさ、なんという妖艶さ。快感に溺れる女性の口元から息遣いが聞こえてきそうです。肉筆画ならではの細かい筆使いも素晴らしい。特に、陰毛。濡れそぼっている部分とそうじゃない部分の描き分けが細かい。
この発想はなかった
まさかの影絵。女性の漆黒の髪がとても美しいです。影絵でセックスを描こうという発想の奇抜さに脱帽です。それにしてもこの男性、シルエットでもわかる毛深さである。(拡大して見てください)
横に長すぎる異色作
スラリとした美人を描き一世を風靡した鳥居清長の代表的春画。とにかく横に長い。そのサイズは縦12cm、横67~73cm。なんでこんな変わったスタイルなのかというと、その理由は、くるくると巻いて着物の袖に入れ持ち歩きできるように。春画は「勝ち絵」とも言われるように縁起物でもあるので、趣味人がお守りとして持ち歩くこともあったんだとか。
『袖の巻』は全12図なのですが、横に長いためなんだか閨房をのぞいているようなイケナイ気分になります。そして、女性の表情が素晴らしい。幸福感に満ちた作品です。
見えないことで生まれるエロス
恥ずかしいのでしょうか。男性に背を向けた女性が袖で顔を隠しています。恥じらう女性を男性はどんな表情で見ているのか・・・描かれていないだけに想像は膨らみます。反り返った女性の白い足の裏もまたエロい。さすが歌麿です。黒の着物の美しさと、画面を縦断するように流れる帯の美しさも秀逸。
次も見えそうで見えない。
影の主役は・・・
こたつに入っていたらムラムラきた男性が、若い娘さんを押し倒しコトに及ぶの図。地の文を読むと「人が来ますよ」と言ってかわいらしく抵抗する娘さんに対し、男性は「子どもじゃあるまいし、じっとしてなよ」となかなか強引。見えないけど絶対、目がギラついていることでしょう。
わあきゃあやっている男女を尻目にこたつでぬくぬくしていた猫は「よく寝てたのにうるさい奴らだな」と大あくびしながらボヤいてます。そう、この春画の主役はニャンコです。
天才・北斎の傑作ゴージャス春画
問答無用の美しさ。乱れた着物の色合いがすごい。大胆さと繊細さが絶妙に同居するこの春画、ため息が出ます。
最後はおまけをいつくか。「番外編」。
バッキバキですね
壁の穴をものすごい形相で男性がのぞいています。穴の向こうに広がる光景がどんなものかはバッキバキになっている男性の男性を見れば一目瞭然です。
現代でもエロ漫画やAVなどでも「のぞき穴モノ」(そんなジャンルがあるのかは不明)は人気がありますが、江戸時代の人も好きだったみたいですね。
あ、そっちなんだ
上から盲人の男性、若い男娼(たぶん)、女性といういわゆる3Pの真っ最中。3Pが珍プレイなのかは微妙なところですし、江戸時代の春画によく登場するところを見ると今よりノーマルプレイだったのではという気もします。
一番上の男性にご注目。その手を見ると女性器に伸びているのですが、男性器は真ん中の男の子のお尻に入っています。どうやら、どっちもいけるみたいです。
しかしどういう流れでこの組み合わせで始まったのかちょっと気になります。
赤ちゃんがタイヘンなことに
まず、お断りしておきますが、これ、江戸時代の作品です。鬼才・渓斎英泉による『枕文庫』は性に関するあれこれをまとめた指南書であり百科事典で、「奇書中の奇書」とも言われています。
これは妊婦さんのお腹の中ですが、胎児が男根と戯れています。絵だけ見るとなんだか楽しそうですが、内容的には妊娠中のセックスによる害が説かれています。男根が胎児の尻をつくと、生まれた時に尻にアザができるよ、など。
次も渓斎英泉。
シュール
鏡に映っているのは女性器のアップです。なに描いてんですか英泉さん、といいたくなりますが、春画には「大つび絵」「大まら絵」と呼ばれる局部をアップにした絵があり、艶本の裏表紙や扉絵に使われていたので、これもけして珍しくはない。
美人画に上半身だけを描いた「大首絵」というのがあるのですが、その性器版なわけです。春画はエロと笑いと芸術の合わせ技です。
最後。
この春画、動くぞ!
エロさを表現することに貪欲な江戸時代の人々、普通のエロでは物足りなくなり、江戸時代後期には「仕掛本」というちょっとしたカラクリのある艶本が登場します。
たとえば、これ。布団の部分がめくれるようになっており、チラリとめくると男女の交合シーンが露わになる、というギミックが。さらに、左下にあるつまみを引っ張ると男性の腰がカクカク動くというのだからビックリ。いやはや、まいりました。
「仕掛本」のパターンとしてはほかに、前のページに障子だけが描かれており、ページをめくるとセックスしている男女が現れる、なんてのもあります。秘め事をのぞいているような気分が味わえ、「仕掛本」は大人気になったとか。
たくさんの春画をご紹介しましたが、お気に入りはありましたでしょうか?美麗なものからユニークなものまで江戸時代のエロの奥深さにはただただ完敗です。
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