【学校では教えない】江戸時代の奇人変人 12人の生き方が自由すぎる【当時から有名】

  このエントリーをはてなブックマークに追加

265年続いた江戸時代。厳しい封建社会といったイメージですが、自分に正直に生きた人々がいました。町人から大名まで「奇人」「変人」と当時からいわれた超個性派の12人を紹介します。



13歳の少年の人生を変えたのは、初めて足を踏み入れた京の島原遊郭。以来、遊郭のとりことなった男は壮大なプロジェクトを完遂します。

1人目
全国を訪ね歩いた遊郭のエキスパート

遊郭百科を完成 畠山箕山


「花盛春長閑」(二代歌川国貞 画)
(「花盛春長閑」二代歌川国貞 画)
江戸時代、満開の夜桜を眺めながら美しい遊女たちと酒を酌み交わす様子。箕山もこのように楽しんだのか。

1626年(寛永3)、畠山箕山(はたけやまきざん)は京の裕福な染物屋の跡取り息子として生まれました。幼い頃に両親を亡くし継いだ箕山でしたが、13歳の時にその後の人生を変える体験をします。

それは初めて足を踏み入れた島原遊郭でのあでやかな時間。すっかり遊郭のとりことなった箕山は、「オレ、遊郭での恋の駆け引きを極める!」という大望を抱き、親が遺してくれた店の財産をそそぎこみ、14歳で遊郭に通いまくりました

しかし、10年も経たずに財産を食いつぶし、店は倒産。箕山は追われるように京から逃げ大坂に移住します。セレブだった箕山は、宴席でお客に座興を見せる“男芸者”の太鼓持ち(幇間、末社とも)にまで身を持ち崩すのですが、それでもなんとかやりくりして遊郭に出入りし続けました


「どんなことがあっても、けっしてあきらめない(遊郭通いを)」


やがて遊郭のエキスパートとなっていった箕山は「色の道を、茶道や華道のような文化として大成させたい」と思うようになり、東は江戸の吉原遊郭、西は長崎の丸山遊郭まで全国津々浦々の遊郭を30年にわたって探訪します。

箕山53歳。ついに前代未聞の遊郭百科事典『色道大鏡(しきどうおおかがみ)』全18巻を完成させました。そこには、遊郭内のしきたりをはじめ、全国の遊郭の店の配置図、遊女伝、“野暮”から“粋”への道筋を説明した色道の極意など、遊郭に関するありとあらゆる事柄が解説されています。

身を持ち崩してなお遊郭通いを続けた箕山を「馬鹿な男だ」世間は笑いましたが、この男の人生、なぜか妙にすがすがしい。『色道大鏡』にある言葉です。「総じてものを飾ったりつくろったりするのは、初心者や田舎者のすることだよ




日本初の銅版画を製作し西洋画のパイオニアとなったり、お手製コーヒーミルまでつくる新しモノ好きの自由人。器用な才人は奇妙な奇人でもあった。

2人目
あふれる好奇心で時代の先を走った自由人

絵師&蘭学者 司馬江漢


司馬江漢の肖像画
有名な江漢の肖像画。これは江漢の自画像をもとに明治の洋画家・高橋由一が描いた油絵
司馬江漢は、江戸時代中期の1747年(延享4)、江戸の町家で生まれました。幼い頃から好奇心旺盛だった江漢は、当代きっての人気浮世絵師鈴木春信に浮世絵を学び、中国人絵師に学び中国伝来の写実画もマスター。

江漢の好奇心は最新の西洋文物へと向かい、西洋版画や油絵に興味を持つと、洋書を参考にして日本初の銅版画をつくっちゃいました。

それだけでなく、この作品、覗き眼鏡で見るのが前提となっているのが面白い。なんと、覗き眼鏡で見ると立体的に見えるとか。3Dの先駆けです

とにかく好奇心旺盛で行動力もある江漢は、42歳の時、ひとりで長崎へ向かいました。当時の長崎といえば西洋文化の入り口であり、最新知識の宝庫。ここに西洋絵画の研究をしに行ったのです。

長崎で初めてたくさんの輸入油絵を目にした江漢は、今度はまだ国内では誰も描いたことのない油絵に挑戦します。さっそくオリジナル油絵の具をつくると、ただ真似るだけでなく、浮世絵の画法と西洋の遠近法や陰影法をミックスさせ日本初の油絵も完成させます。すごい。

富士山を好んで描いた司馬江漢(『駿州薩陀山富士遠望図』)
富士山を好んで描いた江漢。こちらも富士山を大パノラマで描いた油絵。(『駿州薩陀山富士遠望図』)
江漢が秀でていたのは絵画だけではありません。蘭学者としても最新の天文学、地学などに通じ、世界地図を製作したり、「コペルニクスの地動説」を著書のなかで紹介するなどもしています。

また、「和蘭茶臼(おらんだちゃうす)」というコーヒーミルをつくってみたり、晩年には人間観や人生観、学問観、社会観など江漢のあらゆる考え方がつまった『春波楼筆記(しゅんぱろうひっき)』という随筆を著してみたりとにかく色んなことをやりました。

司馬江漢お手製のコーヒーミル
江漢お手製のコーヒーミル。薬草を煎じる薬研(やげん)として使われたとか。斬新。
そんな異才の江漢は、同じく異才として超がつくほど有名な平賀源内と友だちでした。“類友”というやつでしょう。友だちの源内も“奇人”といわれた人物ですが、晩年の江漢もまた当時から“奇人”といわれていました。

江漢の奇人ぶりを表す有名なエピソードをご紹介します。1813年(文化10)のある日、江漢の知人たちにこんな手紙が届きました。

「江漢先生は老衰し、絵も描かず、蘭学や天文にも飽きてしまい隠棲していましたが、ついに悟りを開いて死にました」。それは江漢の死亡通知書。知人たちは突然のことに愕然とし、悲嘆にくれます。

ただし、これを送ったのは死んだはずの当の江漢。人づきあいが面倒になったのか、この奇行はひどい。

ある日のことですが、江漢がやむを得ない用事があり外出すると、死亡通知書を送りつけた知人と出くわしたことがありました。

肝をつぶした知人を無視して江漢が無言で立ち去ろうとするものだから、「え、ちょっ、江漢先生ですよね? 先生、先生!」と知人はどこまでも追いかけてくる。たまりかねた江漢は「ええい、死人がしゃべるか!」と知人を叱り飛ばし、その場を立ち去ったといいます。うーん、奇人です。

それから5年後、司馬江漢は本当に世を去りました。72歳でした。辞世は「江漢は 年が寄ったで死ぬるなり 浮世に残す 浮き絵一枚」。


  このエントリーをはてなブックマークに追加

江戸のおもしろトリビアを配信中

江戸ブログ 最新記事

【画像あり】江戸時代にもクリスマス!? 日本初のサンタは侍の格好だった!
クリスマスって戦後ぐらいに日本でも広まった?と思いきや、意外にその歴史は長かった。キリスト教が弾圧された江戸時代に、どうやってクリスマスを祝われていたのでしょうか?
2016-12-06 11:02:49
ゆるカワ地獄が面白い 200年前の奇才絵師・耳鳥斎の厳選32作品を紹介
近頃、江戸時代の“ゆるカワ”作品がアツい注目を集めています。以前ご紹介した北尾政美(きたおまさよし)もそのひとり。そして、今回ご紹介する耳鳥斎(読み:にちょうさい)も江戸時代が生んだ“ゆるカワ”絵師として展覧会や図録がジワジワ人気を集めています。そんな耳鳥斎の楽しい作品をご紹介。
2016-11-22 14:32:58
宝くじのルーツ、江戸時代の禁止ギャンブル「富くじ」とは【1等いくら?】
ギャンブルをやらない人でも身近な賭博が宝くじ。億万長者を夢見て宝くじを買ったことのある人も多いのでは? ということで今回は宝くじのルーツ、江戸時代の富くじをご紹介。
2016-11-19 09:55:03
桜吹雪の刺青や名裁きは作り話?それでも遠山の金さんのモデルがヒーローだった理由
決め台詞「この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねぇぜ!」で悪役たちに啖呵をきるシーンでおなじみ、時代劇ドラマのヒーロー「遠山の金さん」。大岡越前とともに“江戸時代を代表する名奉行”として知られる金さんの嘘と真実をまとめました。
2016-11-18 15:40:30
ペットショップに飼育書、ペットのお墓まで!?江戸時代のペット事情が現代と変わらない
犬に猫、金魚や小鳥に爬虫類まで――さまざまなペットを飼っている家庭が増え、ペットはもはや家族の一員となっています。ペットブームが起きたのは近年になってからと思いきや、じつは江戸時代にもペットは大人気。今回は江戸のペット事情をまとめました。
2016-11-14 14:28:11
松尾芭蕉の相手は13歳年下のイケメン?江戸時代の有名人たちの恋愛事情をまとめた
松尾芭蕉や小林一茶など江戸時代の有名文化人というと、色恋には無関心な“ストイックな人”というイメージがありますが、彼らとて人の子。恋をして、愛する人を想い涙することもありました。今回は有名文化人たちの恋模様をご紹介します。
2016-11-05 19:20:03
【画像多数】 富士山を描いた江戸時代の絵画が絶景すぎる【31作品】
古来、日本を象徴する霊峰として有名な富士山。江戸時代にも多くの芸術家たちが富士山の姿を描きましたが、今回はそのなかから厳選した31枚をご紹介します。
2016-11-03 19:34:06
【女性用ふんどしも!?】江戸時代の下着「ふんどし」が興味深い【戦前までは現役】
「ふんどし」というと“男性用の伝統的下着”というイメージがありますが、じつは戦前までは現役バリバリ。そして、女性用のふんどしもあった!? 江戸っ子たちの下半身を包んだふんどしについてまとめました。
2016-11-02 19:27:09
暴れん坊将軍 吉宗のライバル・徳川宗春の生き方がド派手すぎる
時代劇ドラマのヒーローであり、“幕府中興の祖”として有名な8代将軍・徳川吉宗。その吉宗の最大である尾張名古屋の愛すべきド派手お殿様、徳川宗春についてまとめました。
2016-11-01 14:38:42
【画像あり】江戸時代の妖怪絵巻がゆるカワ過ぎてほっこりする【厳選5作品】
近年の妖怪ブームで注目を集める妖怪界。妖怪をテーマにした展覧会は大人気。今回は数ある妖怪絵巻のなかでもとってもユニークでカワイイ5作品を紹介。
2016-09-17 21:24:37

あわせて読みたい 戦国・幕末記事

大河ドラマ『真田丸』のキャストと実際の肖像画を比べてみた
戦国関連の記事2016年大河の真田丸。人気脚本家・三谷幸喜が描く戦国時代。注目のキャストと現代に残る肖像画を並べてまとめています。
2015/01/10 17:04:00
【あさが来た】2015年 もっとも人気だった幕末人物は? 303人中ベスト10を発表【花燃ゆ】
幕末関連の記事2015年は朝ドラと大河ドラマがともに幕末を取り上げました。日本最大の幕末サイト『幕末ガイド』に登録された303名のうち、アクセス順にベスト10を紹介します。
2015/12/31 13:45:00
2015年 幕末の人気記事ランキング! 1位は納得のあの人物
幕末関連の記事2015年の幕末記事のなかで、もっとも人気を集めたのは?10位から1位までランキングで紹介します!
2015/12/20 19:52:00
【猫好き浮世絵師】天才・歌川国芳が描いたネコたちがおもしろ可愛い【猫づくし】
幕末関連の記事いまから150年以上前、江戸時代末期に活躍した歌川国芳という絵師がいました。国芳は類まれなるデザイン力とユニークな発想の持ち主で、美人画や妖怪画など幅広いジャンルの作品を数多く生み出しました。そんな彼が最も好きだったのが"猫"。猫が死んだ時は寺に葬り仏壇まで作ったそうです。そんな歌川国芳が描いた、ユーモアと愛に溢れた"猫浮世絵"の数々をご紹介します!
2015/11/08 14:29:00
【実話】荒木村重は謀反の後、意外な人生を送っていた【軍師官兵衛で人気】
戦国関連の記事織田VS毛利が本格化して、盛り上がりをみせるNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』。なかでも、ひときわ注目を浴びているのが荒木村重。織田信長に反旗をひるがえしたのは有名だけど、その後の人生は意外なほど知られていません。今回は荒木村重の謀反の"その後"を紹介します。
2014/09/15 7:27:22

日本の歴史をもっと身近に。

戦国ガイド
戦国時代の大名・武将の名言や画、子孫など
戦国記事のみ掲載している特集ブログ
【おすすめ】戦国時代の家紋を一挙紹介
江戸ガイド
江戸時代の将軍/大名/文化人の名言や画、子孫など
★いまココ★ 江戸時代をもっと楽しめる特集ブログ
幕末ガイド
日本最大級の幕末サイト!
幕末をもっと楽しめる特集ブログ
明治ガイド
明治時代のみを扱ったレアなサイト
【おすすめ】明治の著名人が残した名言
大正ガイド
どこか懐かしく新しい時代、大正を知ろう!
【おすすめ】芥川龍之介、竹久夢二、宮沢賢治など大正の偉人を一挙紹介
昭和ガイド
昭和の芸能人やスポーツ選手、芸術家の名言や子孫など
【おすすめ】昭和の有名人が残した心に残る名言。その数、1,000以上
コメント

コメント

  1. 「遊郭に通いつめ、遊郭百科辞典をつくった男」「天狗にさらわれ、超能力に目覚めた少年」など、当時から世を騒がせた12人を紹介

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

トラックバックURL