居酒屋にメニューがない! 酒と肴はどうやって注文したのか?


現代だと着席するやメニューとお通し、おしぼりなどを店員さんがにこやかに持ってきてくれますが、江戸時代の居酒屋にそんなサービスはありません。

そもそもメニューがない

ちなみに、近年「これ、いらなくね?」と否定的意見の多いお通しですが、この暗黙のルールができたのは昭和に入ってからなんだとか(諸説ありますが)。

居酒屋にやってきたお客はまず酒を注文します。現代人も「とりあえずビール」などといいますが、江戸っ子も「とりあえず酒」。

酒はランクによってざっくり分かれていました。

たとえば、「大極上」「上酒」などというのはランクも値段も高い清酒、「にごり酒」「中汲(なかぐみ)」というのはいわゆる「どぶろく」のようなにごった酒でお手軽価格の安酒のことでした。

居酒屋の障子に「上酒」「隅田川 志ろ酒」などの文字が見える(『揚酒屋賑ひの図』)
画像左、居酒屋の障子に「上酒」「隅田川 志ろ酒」などの文字が見えます(『揚酒屋賑ひの図』)
酒はランクによって値段が異なるので、お客はその日の懐具合によって「8文のを1合」なんて感じに酒の値段と飲みたい量で注文したそう。

ちなみに、江戸時代の居酒屋で飲む酒の値段はいくらくらいだったかといいますと時代によっても変動はありますが、江戸時代後期だとランクの高い上酒が1合24〜28文くらい。1文を25円とざっくり考えると上酒1合600〜700円くらい。
にごり酒など安酒は1合8文(約200円)で提供されたそう。

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居酒屋のなかには限界まで水で薄めた酒を出すところもあり、「江戸の酒は酒臭い水だ」なんていわれることもあったとか、なかったとか。

さあ、酒を注文したら肴もね。

幕末の居酒屋(『鶏声粟鳴子』)
『鶏声粟鳴子』より
こちらは幕末の居酒屋さん。

画像中央に障子が立てかけられているのが見えますが、そこになにやら文字が書いてあります。

「おすいもの 御にさかな さしみ なべやき」

つまり、このお店のおつまみメニューが書いてあったんですねえ。

「お吸い物」というと酒の肴というより、料亭の懐石料理の一品というイメージがありますが、江戸時代の「お吸い物」とは「酒の肴として出される汁物」のことを意味したんだとか。へぇ!

とまぁメニューともいえないようなざっくりとした表示はありましたが、江戸時代の居酒屋に現代のような詳細なメニュー表やお品書きはありません。

なので客は店員に「今日の肴はなにがあるんだい?」と聞いて、注文しました。

とはいえ江戸の居酒屋にも“定番おつまみ”はありました。たとえばこんなもの(江戸時代後期)。

〜お品書き〜
  • ふぐ汁
  • あんこう汁
  • どじょう汁
  • から汁
  • 葱鮪(ねぎま)
  • 田楽
  • 湯豆腐
  • めざし
  • マグロの刺身
  • タコの煮物
  • かぼちゃの煮付け
  • 芋の煮っころがし
などなど

『江戸名所百人美女』「日本はし」(歌川豊国 画)
江戸っ子はタコが好きだったのか、こちらの美女もタコを肴に一杯やってます(『江戸名所百人美女』「日本はし」歌川豊国 画)
なんというか……おいしそうです。そして充実の汁物ラインナップ。

「から汁」というのは、おから入りのお味噌汁。味噌汁におから、というかなり異色の組み合わせですが、二日酔いに効果バツグンとしてこれが居酒屋メニューの大定番でした。

また、「葱鮪」というのはマグロと葱を一緒に煮たもののこと。焼き鳥の「ネギマ」ではありません。

『大晦日曙草紙』より
画像左下、男女グループの間に「葱鮪鍋」が置かれています。「鍋」といっても調理済み(『大晦日曙草紙』より)
刺身は現代でも酒の肴の大定番ですが、それは江戸時代も同じ

江戸近海でもたくさんマグロが捕れた江戸時代、安くておいしいマグロは“庶民の魚”として人気で、煮たり焼いたり刺身にしたりして食べられていました。

『風俗三十二相』「おもたさう 天保年間深川かるこの風ぞく」(月岡芳年 画)
料理をのせた台を重たそうに女性が運んでいます。台の中央には大皿に盛られた刺身の盛り合わせが(『風俗三十二相』「おもたさう 天保年間深川かるこの風ぞく」月岡芳年 画)
「刺身屋」という刺身専門店まであったほどマグロの刺身が大好きだった江戸っ子たち。

江戸の居酒屋でマグロの刺身がメニューに登場するようになったのは自然な流れで、江戸時代後期にはマグロの刺身も居酒屋の定番メニューになりました。

「店にないものが食べたい!」と別の店から出前をとって居酒屋に届けさせる、なんてワガママなお客もいたようです。

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