子ども時代の過ごし方が未来を決める!? 「いい子」「悪い子」それぞれの未来を描いた作品が恐ろしい
習い事などを熱心に行うと良縁につながる、ということをわかりやすく描いたおもしろい作品があります。『娘教訓二面鏡』という1873年(明治6年)の浮世絵作品がそれです。
こちら、始まりの絵。
女の子が寺子屋で熱心にお習字の練習をしています。女の子の周りをよく見ると、顔に「善」と書かれたヘンな生き物がいっぱいいます。
これは「善玉」という人の心のなかの良心を擬人化した江戸時代の大人気キャラクターです。
生みの親は江戸時代後期のベストセラー作家・山東京伝で、良心を擬人化した「善玉」と悪い心を擬人化した「悪玉」は一世を風靡し、その後のいろんな作品に登場しました。
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こちらの絵ではお習字をする女の子を応援するように見守ったり、墨をするお手伝いをしてくれています。いいやつら。
次のシーンでは、2人の女の子が唄のお稽古をしています。やっぱり善玉たちがあちこちに。
さらに次のシーンでは、お裁縫の練習中。
既製品がなかった江戸時代、着物がほころびたら手で直し、衣替えの季節になればシーズン仕様に自分の手で仕立て直していました。布団だってみずから縫うこともありました。そのため、江戸時代の女子にとって裁縫は不可欠なテクニックだったのです。
とまぁ、こんな感じでなにごとも熱心に取り込む「いい子」の日常がしばらく続きます。やがて、女の子も大きくなり年頃に。
今までの努力が実って良縁ゲットだぜ!善玉たちが男女を結ぶ赤い糸を持っています。まるで恋のキューピッドみたい。
その後も子宝に恵まれ、親孝行し、真面目に人生を歩んでいった女の子。最後のシーンはこんな感じ。
画像右があの時の女の子です。すっかりおばあちゃんになってしまいましたが、膝には犬を乗せ、目の前ではかわいい孫たちが遊んでいる。絵に描いたような幸せな楽隠居です。
この『娘教訓二面鏡』はこんな風に女の子の一生を描いた作品なんですが、ポイントは「いい子」「悪い子」それぞれの人生を対照的に描いていること。
では、気になる「悪い子」の人生も見てみましょう。
始まりは「いい子」と同じく寺子屋シーンですが、悪玉にそそのかされたのか完全にふざけています。悪玉たちは周りで「どんどんやれい!」と煽っていくスタイル。
三味線のお稽古もひどいもんです。師匠をガン無視して、悪友たちと遊んでいます。
その後も順調に(?)悪の道を進み、賭場にも出入りするまでの不良娘に……。そんな女の子にも縁談話が持ち込まれます。でも、親が決めた縁談なんて気に入らない。で、そうなると、こうなる。
いかにもダメそうな男と駆け落ちです。女性と悪い男とをしっかりと赤い糸で結ぶ悪玉、マジひどい。
ここからの転落っぷりがまたひどい。駆け落ちまでした男に捨てられた「悪い子」は、遊女となります。そして客との子どもを身ごもり生んだまではいいが、また捨てられる。そんな不幸続きの「悪い子」のラストシーンはこれです。
画像左の老女が「悪い子」の末路です。子どもが小さいところを見るとそんな年でもなかろうに、なぜかものすごい老けっぷりです。これはひどい、あまりにひどい。
この作品からもわかるように、江戸時代の空気としては「若い時の苦労で将来が左右されるよね」です。だから、『浮世風呂』に登場する女の子のように江戸時代の女の子たちは寺子屋やお稽古に熱心に取り組んだのでした。
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