ベストセラー小説の嚆矢となった絶倫男の一代記
<8作目>
『好色一代男』(1682年)
井原西鶴 作・画
~あらすじ~
主人公・世之介はわずか7歳で初体験した早熟な男子。従姉、人妻、遊女……と次々に関係を持ち、女性関係の激しさから19歳の時に勘当されてしまう。その後、世之介は諸国を放浪しながら各地の女性と関係を持つことになるのだが…。
主人公・世之介はわずか7歳で初体験した早熟な男子。従姉、人妻、遊女……と次々に関係を持ち、女性関係の激しさから19歳の時に勘当されてしまう。その後、世之介は諸国を放浪しながら各地の女性と関係を持つことになるのだが…。
作者は大坂生まれの作家・井原西鶴。「浮世草子」と呼ばれるジャンルの記念すべき1作目といわれます。ちなみに、本作が西鶴の処女作で挿絵も自分で手がけたとうのですから、西鶴の才能恐るべし。
『好色一代男』はタイトル通り、好色な主人公・世之介の7歳から60歳までの色っぽい一代記をオムニバス形式で描いたものですが、関係をもった人数がすごい。
54年間で関係を持った人数
女性 3,742人
少年 725人
どうしよう、どこから突っ込もう…。
とりあえず、相手が少年ということについては、江戸時代初期には庶民の間でも男色が珍しくなかったそうなので、これは特段珍しくはない。
人数について。単純に計算して毎週1~2人は相手をとっかえひっかえ。これを休むことなく54年間だから絶倫にも程がある。登場する遊女のなかには実在の有名遊女もいます。
しかも、60歳で最終回を迎えるのですが、ラストは女だらけの伝説の島へ船出するというのだから、もうやだ江戸時代。でも、老境に入ってまだまだヤル気まんまんの世之介はなぜか清々しくすらあります。
ここがヒットのポイント!
啓蒙や教化がメインの”おカタイ”読み物ばかりだった時代にあって、町人の世界をリアルに描き、庶民の喜怒哀楽を高い娯楽性をもって表現し読者に衝撃を与えた。主人公・世之介の生き方に「これこそ俺の理想だ!」と男性読者、大喝采。
啓蒙や教化がメインの”おカタイ”読み物ばかりだった時代にあって、町人の世界をリアルに描き、庶民の喜怒哀楽を高い娯楽性をもって表現し読者に衝撃を与えた。主人公・世之介の生き方に「これこそ俺の理想だ!」と男性読者、大喝采。
こちらも好色男子が主人公。
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“うぬぼれ男”の代名詞となった愛され主人公
<9作目>
『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』
山東京伝 作/北尾政演 画(1785年)
~あらすじ~
主人公の艶二郎(19歳)はお金持ちの道楽息子。団子鼻がチャームポイントの”ブサメン”ながら、夢は「女性にモテまくる」こと。女性にモテるため、有り余る金にものをいわせ艶二郎は試行錯誤するが……。
主人公の艶二郎(19歳)はお金持ちの道楽息子。団子鼻がチャームポイントの”ブサメン”ながら、夢は「女性にモテまくる」こと。女性にモテるため、有り余る金にものをいわせ艶二郎は試行錯誤するが……。
奇想天外な作品を数多く世に送り出した大人気作家・山東京伝の代表作。ジャンルとしては、絵と文章で構成された大人のマンガ「黄表紙」。
金持ちぼっちゃんの艶二郎が金で三角関係を演出したり、心中に憧れてヤラセ心中をやってみたり……といったストーリーのおもしろさもさることながら、読者のハートを掴んだのが艶二郎のキャラクター。「うぬぼれ男」の代名詞にまでなりました。
ここがヒットのポイント!
メチャクチャやってるのに憎めない、“愛すべきブサメン”艶二郎のキャラクターとしての魅力が百点満点。
メチャクチャやってるのに憎めない、“愛すべきブサメン”艶二郎のキャラクターとしての魅力が百点満点。
詳細なストーリーについては、『【画像あり】江戸時代の絵本・マンガ「黄表紙」がシュールすぎて困惑する【厳選7作品】』でお楽しみください!
今も売れてるロングセラー怪異小説
<10作目>
『雨月物語』(1776年)
上田秋成 作
~あらすじ~
平安時代の歌人・西行(さいぎょう)は、讃岐国にある旧主の第75代天皇・崇徳院の墓を訪ねた。すると西行の目の前に崇徳院の怨霊が現れ、世が乱れているのは私の祟りによるものだと語り、平家滅亡を予言する。浅ましい怨霊となってしまった崇徳院に、嘆き悲しむ西行は歌を捧げるが……。(「白峯」より)
平安時代の歌人・西行(さいぎょう)は、讃岐国にある旧主の第75代天皇・崇徳院の墓を訪ねた。すると西行の目の前に崇徳院の怨霊が現れ、世が乱れているのは私の祟りによるものだと語り、平家滅亡を予言する。浅ましい怨霊となってしまった崇徳院に、嘆き悲しむ西行は歌を捧げるが……。(「白峯」より)
『雨月物語』は江戸時代中期につくられたオムニバス怪異小説で、全9編の構成。
各タイトルは「白峯」「菊花の約」「浅茅が宿」「夢応の鯉魚」「仏法僧」「吉備津の釜」「蛇性の淫」「青頭巾」「貧福論」。ホモセクシャル風味な男同士の濃い友情ストーリーや、生死をさまよう僧侶の不思議な夢、蛇の化身である女にストーカーされる男の話などバラエティ豊か。
中国の怪談や日本の古典文学をベースに、秋成流にアレンジを加え、幽霊や怪異を通して人間の情念を怪しくも美しく描き出しました。
かの三島由紀夫も『雨月物語』を愛読書し、特に「夢応の鯉魚」がお気に入りだったそう。また、ヴェネティア国際映画祭銀獅子賞を受賞した映画『雨月物語』(監督・溝口健二)や宝塚歌劇団で舞台化されるなど後世においても多くの派生作品を生みました。
今も愛される『雨月物語』ですが、当時の売れ行きはボチボチだったそうです…。