• 更新日:2019年9月16日
  • 公開日:2016年7月3日


ココロと体を健康にする方法を教えます


<14作目>

『養生訓』(鈴木牧之 作・画)Nadi
『養生訓(ようじょうくん)』(1712年)
貝原益軒(かいばらえきけん) 作

画像引用元:
著者である福岡藩の儒学者貝原益軒がなんと83歳という高齢で書き上げた健康指南書。江戸時代にあって珍しいほどの長寿を保っていた益軒が、自らの実体験に基づき、長寿を全うするためにココロと体を健康にする方法を説いています。

江戸時代における長寿の秘訣としては、以下などが説かれています。

心身ともに健康であるためには、体をよく動かすこと、食欲・色欲など欲望をコントロールすること、季節の変化に注意すること、感情的になりすぎないこと、病気でもないのに薬を飲み過ぎないこと

また、人間誰もが避けて通れない「老い」についても「老いたら1日1日をたいせつにして長寿を楽しもう!」と、とってもポジティブなメッセージを読者に送ります。長生きしたい、という思いは今も昔も同じ。わかりやすく健康と長寿について解説した『養生訓』は広く愛読され、健康指南書の定番としてロングセラーとなりました。

ちなみに、作者・益軒の妻も夫の説く健康法を実践し長生きし、高齢になっても夫婦で散歩を楽しんだとか。イイハナシダナ~。

ここがヒットのポイント!
実際に長寿を保っている作者の実体験に基づいた健康法だから説得力がすごい。しかも、わかりやすく実践しやすいのが読者に支持された。

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教科書でもおなじみ、日本初の西洋医学書の翻訳版


<15作目>

『解体新書』(前野良沢 翻訳/杉田玄白 清書)
『解体新書』(1774年)
前野良沢(翻訳)、杉田玄白(清書)


~あらすじ~
ドイツ人医師による解剖学書のオランダ翻訳版『ターヘル・アナトミア』をはじめとする最新の西洋医学書を日本語に翻訳・再構成したもの。

今も昔も教科書でおなじみ『解体新書』。

よく知られている逸話ですが、同書がつくられるきっかけとなったのは小塚原の処刑場で行われた囚人の解剖。これに参加した杉田玄白や前野良沢らは、持参した『ターヘル・アナトミア』の記述があまりにも正確なことに驚愕し、これを翻訳することを決意したことから全てははじまります。

当時、オランダ語の辞書もなく、オランダ語の通訳は長崎という遠い場所にいるのみ。オランダ語をかじったことがある前野良沢の知識も翻訳ができるほど豊富ではないというお手上げ状態。

のちに杉田玄白は『解体新書』の苦労話を『蘭学事始』という本にまとめていますが、「櫂や舵の無い船で大海に乗り出したよう」な絶望的状況からのスタートだったそう。

まるで暗号解読のような地道で手探りな作業を続けること4年、11回もの改稿の末についに完成したのである。江戸時代に「プロジェクトX」が放送していたら間違いなく神回。

現代わたしたちが普通に使っている「神経」や「動脈」などの言葉も、『解体新書』が生まれるなかで誕生した造語というからビックリです。

ちなみに、図版を担当した画家・小田野直武は平賀源内の友人であり、これまた源内の親友であった杉田玄白に源内が小田野を紹介したとも。

ここがヒットのポイント!
日本初の西洋語からの本格的な翻訳書となり、オランダ語の理解が大いに進んだ。これにより医学書だけでなく博物学、天文学、地理学などさまざまなジャンルで西洋書が翻訳され、国内における蘭学発展の転機となった。

日常で使う算術はこれ1冊で完全網羅


<16作目>

『塵却記』(吉田光由 作)
『塵却記(じんこうき)』(1627年)
吉田光由(みつよし) 作


社会経済が発達した江戸時代、一般の人々も「九九」「足し算」「掛け算」など基礎的な計算知識が必要になってきていました。そんな時に登場したのがこの『塵却記』で江戸時代を通したロングセラーとなりました。内容をちょっと変えた異本もたくさん出版され、一説に400種類ともいわれる『塵却記』が出されたとも。

ここがヒットのポイント!
日常で使う実用的な算術を身近な話題をもとに絵入りで解説した丁寧さ。

江戸時代、商人になる子どもにとってそろばんは必須でした(『稚六芸』「書数」歌川国貞 画)
そろばんは商人になる子どもにとって必要不可欠(『稚六芸(おさなりくげい)』「書数(しょすう)」歌川国貞 画)

豆腐、豆腐、また豆腐、豆腐づくしの豆腐レシピ本


<17作目>

『豆腐百珍』(曽谷学川 作(伝))
『豆腐百珍』(1782年)
曽谷学川(そだにがくせん) 作(伝)


100種類の豆腐料理を紹介した豆腐レシピ本。『豆腐百珍続編』『豆腐百珍余録』などの続編も出版されるベストセラーとなりました。

ここがヒットのポイント!
豆腐料理100種類を「尋常品」「通品」「佳品」「奇品」「妙品」「絶品」の6段階に分類・評価した遊び心と、豆腐の歴史やうんちくなども盛り込んだ“作って楽しい、読んで楽しい”構成が絶妙。

女性たちが豆腐田楽を調理中(『豆腐田楽を作る美人』歌川豊国 画)
女性たちが豆腐田楽を調理中(『豆腐田楽を作る美人』歌川豊国 画)
また、『甘藷(サツマイモのこと)百珍』『蒟蒻(こんにゃく)百珍』などいわゆる「百珍ブーム」の火付け役に。いろんな食材で100種類もレシピを考えつく江戸人、まじハンパない。また、現代でも『豆腐百珍』を再現したレシピや現代版にアレンジしたレシピなども出されるなど本書の影響力は健在。

超有名料亭の主人が綴るお土産としても大人気となったロングセラー


<18作目>

『江戸流行料理通』(八百善 著)
『江戸流行料理通』(1822年)
八百善 著


~あらすじ~
江戸を代表する超有名料亭「八百善」の四代目主人が著者となり、「八百善」の料亭料理を丸ごと解説した料理本。著者が長崎や上方で学んだ卓袱(しっぽく)料理などについても書かれる。

料亭「八百善」といえば江戸を代表する超有名・超高級料亭で、超厳選素材を集めに集めてお客に出した1両2分の「極上お茶漬け」のエピソードでもよく知られます。

その八百善の四代目主人・栗山善四郎が書き残したのがこちらの本。八百善で出される料理の具体的レシピや調理器具の使い方、心構えなどが惜しみなく書かれています。

さらに一流の趣味人でもあった栗山善四郎は、当時の文化人たちとも交流があり、絵師・酒井抱一や食通の陶芸家・蜀山人ら豪華ゲストが参加しているのも見どころとなっています。

本はかさばらないし痛んだりもしないのでお土産としても人気があったそうで、八百善の名を全国区にする宣伝効果も絶大だったそう。

ここがヒットのポイント!
庶民が足を踏み入れることのできない高級料亭の全てがわかる!

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