旅行ブームの火付役にもなったのドタバタコンビの道中記


<2作目>

『東海道中膝栗毛』(十返舎一九 作)
『東海道中膝栗毛』(1802~09年)
十返舎一九


~あらすじ~
神田八丁堀の長屋に住む弥次郎兵衛と居候・喜多八は、パッとしない人生を変えるべくお伊勢参りへ行こうと江戸を出発。道中、しょうもないイタズラをしたり冗談を言い合ったり、女性にちょっかいをかけたり、地元のグルメに舌鼓を打ったりしながら2人は伊勢を目指し今日も行く。

こちらも江戸が生んだ大ベストセラー。教科書などでもおなじみ。ジャンルは、庶民の日常を滑稽に描いた「滑稽本」というものに分類されます。

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『東海道中膝栗毛』は当初、初編と続編の2編で終了予定でしたが、想像をはるかに超える大ヒットを受け、弥次・喜多コンビが大坂に到着し完結した8編まで続きました。増刷に次ぐ増刷により版木が磨り減り、少なくとも3万部以上売れたとも(諸説あり)。

ここがヒットのポイント!
弥次・喜多コンビの失敗談のおもしろさや軽妙なやりとりにクスリと笑わせられる。作者の十返舎一九が現地取材をし、自分の足と目で確かめたからこそ出る、その土地土地での庶民のリアルな生活が読者の旅情を誘い、地元民からは共感を得た。

『東海道中栗毛弥次馬』「蒲原」(落合芳幾 画)
『東海道中栗毛弥次馬』「蒲原」(落合芳幾 画)
蒲原宿にて。宿泊先で夜這いに失敗した喜多さん、宿の仏壇に落っこち宿屋の主人に怒られる、の図。この宿場以外にもちょいちょい夜這いをしかけ、失敗しています。

また、ほかにも。

『東海道中栗毛弥次馬』「雲津」(落合芳幾 画)
『東海道中栗毛弥次馬』「雲津」(落合芳幾 画)
雲津宿にて。旅の途中で知り合った狂歌師に弥次さん、「自分はかの有名な十返舎一九である」とウソをつく。これは、作者・十返舎一九の読者サービス。喜んだ狂歌師に誘われ家でもてなされるも、あっけなくウソがバレて2人は追い出されちゃいます。ほかの場所でもセコいウソをついてやっぱりバレて散々な目にあってます。自業自得ですが。

と、まぁ、終始こんな感じ。なにかと失敗してばかり弥次・喜多コンビですが、しょげることなく、失敗を狂歌に詠んで笑いとばしちゃうのが人気の秘密。

ちなみに、『東海道中膝栗毛』8編の完結後、読者から「弥次・喜多コンビのことをもっと知りたい!」という声が寄せられ(一説に「あんな軽薄なのが江戸っ子か!」とクレームがあったとも)、エピソードゼロにあたる『発端(はじまり)』が書かれました。スターウォーズかな?

それによると、実は2人は江戸っ子ではなく生まれは駿河(現・静岡県)。しかも、2人の関係性が超意外。弥次さん、もとはお金持ちの商家の旦那でしたが旅役者一座の少年にゾッコンになり身代をつぶしてしまい、江戸へ夜逃げしたとか。そして、この少年というのが喜多さんというからビックリ。

まさかの男色展開

クドカンの映画『真夜中の弥次さん喜多さん』で弥次・喜多コンビがゲイカップルでしたが、ある意味原作に忠実だったとは。

映画『真夜中の弥次さん喜多さん』(宮藤官九郎 監督)
弥次さんを長瀬智也、喜多さんを中村七之助を演じました。原作はしりあがり寿のマンガ
で、それぞれ問題を抱え駿河にいられなくなった弥次さん、喜多さんは2人して江戸へ夜逃げし八丁堀の長屋に収まったのだそう。ちなみのちなみ、2人の年齢は弥次さんが49歳、喜多さんが29歳とかなりの年の差コンビ(旅の出発時)。

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さて、メガヒット作品の宿命か、続編を望む声に応え、『東海道中膝栗毛』が完結した翌年から『続膝栗毛』シリーズがスタートしてこちらも大ヒットし。なんと12年間もシリーズは続き、前作の『東海道中膝栗毛』と合わせると弥次・喜多コンビは21年間も全国を旅し続けました。

途中、作者の十返舎一九が「もうネタ切れなのに版元がやめさせてくれない」と作中の序文でグチったりしてるあたりは現代の人気漫画家を彷彿とさせて、なんていうか日本変わってない

さらにさらに『続々膝栗毛』もスタートしましたが、これは一九が他界したため未完に終わりました。

江戸だけでなく全国各地で大人気となった『東海道中膝栗毛』にはパロディもたくさん。俗に「膝栗毛もの」と呼ばれています。

なかでも有名なのが明治初期に出た仮名垣魯文の『西洋道中膝栗毛』。主人公は弥次・喜多コンビの孫で、日本を飛び出し中国、インド、エジプトを経由しイギリスまで行ってしまいました。

ヒット作の主人公が海外へ行く、というのは昔から黄金パターンのようですね。同作はパロディものながら大人気で15編まで出版されました。

『西洋道中膝栗毛』(仮名垣魯文 作)に収録された双六のおまけ
『西洋道中膝栗毛』に収録された双六のおまけ
また、『閨中膝磨毛(けいちゅうひざすりげ)』というエロパロや、『道中女膝栗毛』という主人公をオッサンから女性に変えた作品などもありました。
ほかにも、『サザエさん』で有名な漫画家・長谷川町子さんも『新やじきた道中記』というパロディを描いており、なんとサザエさん一家もゲスト出演しています。

サザエさん一家も出演する漫画『新やじきた道中記』(長谷川町子 作)

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