一人鍋が定番! 江戸時代の冬の食事は現代とちょっと違っていた フグは庶民向け

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江戸っ子の冬スイーツは焼き芋で決まり!


寒い冬にはおやつもやっぱりあたたかいものが食べたいですよね。

さて、数百年前の江戸女子の大好物といえば「芝居、こんにゃく、芋、南瓜(かぼちゃ)」だったんだとか。いまとだいぶ違います。ここでいう「芋」こそサツマイモなのです。

ここでちょっとサツマイモの歴史をプレイバック。

日本にサツマイモがやってきたのは江戸時代初期のこと。南米原産とされるサツマイモはまず中国から琉球(現・沖縄県)に入り、そこから九州地方へ伝わりました。

“暴れん坊将軍”こと八代将軍・徳川吉宗は飢饉の際の非常食としてサツマイモに目をつけます。サツマイモはハードな環境でもよく育つ。

そして、「甘藷(かんしょ=サツマイモ)先生」で知られる学者の青木昆陽などの努力により関東をはじめ各地でサツマイモが栽培されるようになったのです。

青木昆陽の肖像画
幕府にサツマイモ栽培の試作を命じられ見事成功させた青木昆陽。昆陽の墓のある目黒不動尊では命日に「甘藷まつり」が開かれています


さて、江戸時代後期の寛政期(1789〜1801年)、江戸に「焼き芋」を売る店が登場します。

砂糖が高価だった時代、焼き芋の甘みは強烈。

甘くて、あったかくて、なにより美味しい焼き芋は女性を中心にたちまち大評判となり、焼き芋は冬のおやつの定番ポジションに上り詰めました。

焼き芋が大ヒットした要因がもうひとつあります。

それは値段の安さ

江戸庶民の味として有名な蕎麦は1杯16文(約320円くらい)とそのリーズナブルさで市民権を得ましたが、焼き芋はさらに安く、なんと1本4文(約80円くらい)だったとか。1本食べたらお腹がふくれる焼き芋ですからこの値段は安い。

甘い、おいしい、安い、お腹いっぱいーーと4拍子そろった焼き芋を売る店はまたたく間に増え、秋が深まると江戸市中のあちこちに焼き芋屋が出現したそう。

おもしろいのが焼き芋屋の正体。

焼き芋専門店はほとんどなく、その正体は各町の出入り口に設けられた木戸の番人「番太郎」でした。

木戸の番人小屋(『守貞謾稿』より)
画像中央に見える木戸の右にあるのが木戸の番人小屋
番太郎がいる木戸の番人小屋は、画像中央。拡大してみると

木戸の番人小屋の拡大(『守貞謾稿』より)
番太郎が副業で売る草鞋などがたくさん並んでいます(『守貞謾稿』より)
番人小屋って書いてますね。

治安維持のために町ごとに設置された木戸を開け閉めしたり、火の用心をするのが木戸番小屋に詰める番太郎の仕事なのですが、町から出される給料はめちゃ安。

そのため番太郎は番人小屋で草鞋とか駄菓子といった日用品を売る内職を許されていました

さながらコンビニ状態

現代のコンビニがドーナツを扱うかのごとく、巷で人気の焼き芋を扱う番太郎が出現。その売れ行きが良好と見るや、ありゃいいなとあちこちの番人小屋でもマネして焼き芋を売るようになったわけであります。

さて、江戸女子のハートをわしづかみにした焼き芋ですが、現代人が知る焼き芋とは作り方がぜんぜん違いました(またか…)。

江戸時代の冬景色(『小春十二月の内初雪』三代歌川豊国 画)
『小春十二月の内初雪』三代歌川豊国 画
こちらの浮世絵は12月の冬景色を描いたもの。画像左にいるのは焼き芋専門店のようです。かまどの奥には山盛りのサツマイモが入った籠もあります。こんなにいっぱいあっても売れたんでしょう。

赤々と火が燃えるかまどの上には木蓋が見えますが、そこで焼き芋を作りました。かまどに大きくて浅い平鍋を載せ、鍋にサツマイモを並べ木蓋をし蒸し焼きにするのが江戸の焼き芋だったんです。

江戸時代の焼き芋屋の平鍋
川越市立博物館にある江戸時代の焼き芋屋の平鍋。これで焼き芋をつくりました
ちなみに、1本丸ごと焼くのは「まる焼き」、大きな芋をいくつかに切って焼くのは「切り焼き」。江戸っ子は豪快な「まる焼き」がお好みだったそう。

江戸時代の焼き芋屋(『東都歳時記』より)
『東都歳時記』より
画像右中央に見えるのは焼き芋屋さん。かまどの下に敷かれたゴザの上にサツマイモがゴロゴロしています。

店の脇に「○焼」と書かれた看板があるのがわかるでしょうか?「○焼」とは「まる焼き」のこと、つまりサツマイモ1本を丸ごと焼くタイプの焼き芋屋さんのようです。

「○焼」のほか「八里半」という文字も看板に書かれていますが、これも焼き芋のこと。「栗(九里)にはやや及びませんが、焼き芋も甘くておいしいよ!」というシャレです。

やがて「栗よりうまい」ということで「九里(栗)+四里(より)うまい十三里」なるやや無理やり感のあるシャレが登場し、焼き芋=「十三里」となり「十三里」の看板を掲げる焼き芋屋が続々登場しました。

『名所江戸百景』「びくにはし雪中」(歌川広重 画)

イノシシ肉レストラン「山くじら」の反対側に焼き芋屋がありますが、その看板には「○やき」とよく見ると「十三里」の文字が書かれているのがわかります。

また「十三里=焼き芋」となったのは、サツマイモの名産地・川越が江戸から13里の場所にあったから、という説もあります。

ちなみに、埼玉県川越市の「川越いも友の会」にひよって10月13日は「さつまいもの日」に制定されています。これも焼き芋が十三里と呼ばれていたから13日なんです。

余談ですが、「い〜しや〜きいもぉ〜」の呼び声で町を回るリヤカータイプの石焼き芋屋が登場したのは戦後と結構最近のことです。リヤカータイプはほとんど見かけませんが、軽トラタイプの石焼き芋屋は都内でも時折目にしますよね。あれ、ほんとおいしい。

江戸時代の冬グルメは形は変われど、今もしっかり冬の味覚として多くの人に愛されているようです。

あわせてどうぞ→
江戸時代はミニ氷河期で極寒だった! 暖房家電もなく庶民はどうやって寒さをしのいだ?
ミニ氷河期だった江戸時代 庶民はどんな服装で冬の寒さをしのいだのか?


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コメント

  1. 江戸時代の鍋料理の特徴は、底の浅い小さな鍋が使われていたこと。しかも、大人数でひとつの大鍋をつつくのではなく、小さい鍋を1人で食べる「ぼっちスタイル」がむしろ定番でした。

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