安い傘で5,000円!? 現代と違う江戸時代の雨具を画像つきでまとめてみた

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雨具といえば、最近ではオシャレで機能的なレインコートやレインシューズなどもたくさんありますが、江戸時代にはどんな雨具があったのでしょうか。現代にも続くグッズや、今ではみないものなど、数百年前の雨の日対策を紹介します。

雨で濡れた着物の裾を絞る江戸時時代の女性(『集女八景 粛湘夜雨』歌川国貞 画)
突然の大雨にびしょぬれになってしまった美女が着物の裾をしぼっています(『集女八景 粛湘夜雨』歌川国貞 画)

雨の日には「笠」から「傘」へ


まず、古くから雨や雪、さらには暑い日ざしをよけるグッズとして大活躍だったのが「」です。

頭にのせてヒモで固定するアレです。時代劇などでもおなじみですよね。これが江戸時代も中期頃になると、「笠」に代わって手に持つ「傘」が庶民の間にも普及していきます。

その理由については、女性の髪形が複雑になり、頭に直接のせる笠ではヘアスタイルが崩れるのを嫌って、といわれています。諸説ありますが。

雨降る夜道を提灯を持った女性が傘をさして歩いています(『江戸八景』「衣紋坂乃夜の雨」喜多川歌麿 画)
雨降る夜道を提灯を持った女性が傘をさして歩いています(『江戸八景』「衣紋坂乃夜の雨」喜多川歌麿 画)
日本における傘の歴史はじつはとっても古く、古墳時代に中国から伝来したといわれます。

もともとは貴人にさしかける天蓋(てんがい)として使われていましたが、時代とともに改良が重ねられ、室町時代になると和紙に油を塗った防水加工がされ現代のように雨の日にも使われるようになりました。

江戸時代になると傘の開閉が簡単にできる仕組みが完成!実用品として広く普及しただけでなく、お祭り用の傘や歌舞伎の小道具などとしても大活躍しました。

助六といえば傘は欠かせない小道具(『花川戸助六 市川団十郎』歌川国貞 画)
歌舞伎が生んだ江戸を代表するイケメン、助六。助六といえば傘は欠かせない小道具(『花川戸助六 市川団十郎』歌川国貞 画)



江戸時代、傘ははじめ上方を中心に製造されていましたが、8代将軍・徳川吉宗の頃(18世紀初期)になると江戸でも傘がつくられるようになったとか。

傘とひとくちにいっても素材や模様によりバリエーションはさまざま。たとえば……

蛇の目傘(じゃのめがさ)
蛇の目傘を持つ江戸時代の女性(画像中央と左、渓斎英泉 画)
画像中央と左の女性が持っているのが蛇の目傘(渓斎英泉 画)
細身の傘で、広げると縁が太い輪の模様になっているのが特徴。はじめ僧侶や医者が使っていたが、やがて女性やオシャレでセレブな通人(つうじん)に人気に。値段は8匁(約2万円)なり。かなり高級品です。

番傘(ばんがさ)
番傘に入る江戸時代の男たち(『東都 御厩川岸之図』歌川国芳 画)
大の男たちが1本の傘にギュウギュウ詰め。こちらの絵に描かれているのが番傘です(『東都 御厩川岸之図』歌川国芳 画)
厚手の紙でできた丈夫な傘。最も安価なため、普段使い用の傘として庶民に親しまれました。それでも傘1本2~3匁(約5000~7000円)。高いぞ。

端折傘(つまおりがさ)
豊臣秀吉の花見のようす(『太閤五妻洛東遊覧之図』部分/喜多川歌麿 画)
豊臣秀吉の花見のようすを描いた浮世絵。画像右の女性は北の政所(ねね)で、お付きの女性が端折傘をさしています(『太閤五妻洛東遊覧之図』部分/喜多川歌麿 画)
公家や僧侶が儀礼用に使用した柄の長い傘。骨の端が内側に折れたようになっているのが特徴。一説に骨の先が人に当たりにくくなるように工夫したとも。すばらしい気遣い!

などなど。今時の傘もバリエーション豊富ですが、江戸時代もなかなかのものだったようです。

ちなみにお手頃価格の番傘でも5,000~7,000円とけっして安くはないので、人々は古くなって破れてしまった傘でも捨てず、「古傘買い」というリサイクル屋に売りました。買い取り価格は1本100~300円くらい。

江戸時代の古傘買い(『守貞謾稿』より)
古い傘を買い取る「古傘買い」。

もちろん買い取った傘を再生して売り出すために、骨に新しい紙を張る必要があります。

傘の製造は分業制が成り立っていたので、古傘買い以外が新しい紙を張るわけですが、これを請け負ってたのが、時代劇でおなじみの「浪人の傘張り内職」です。

破損した番傘の修繕をする傘職人を撮影した古写真
破損した番傘の修繕をする傘職人を撮影した古写真。こういう人、時代劇で見たことある。ちなみにこの方は浪人ではありません。あしからず。画像引用元
あらためてまとめると、こういうこと。

傘が破れて使い物にならなくなる

古傘買いが買い取る

浪人が内職で傘張り

再生された傘が売りに出される

傘を買った人が破れるまで使う

破れたら…(以下ループ)

エコと経済活動が両立した無駄のない循環。さすが徹底したエコ社会・江戸です。


ついでに、江戸時代の雨の日に関する余談を。

江戸時代の時間は現代の「定時法」と異なり、日の出から日没までを「昼」、日没から日の出までを「夜」としそれぞれを6等分して時間を決める「不定時法」。

つまり太陽が重要な役割を担っていたのですが、では、雨の日には時間がわからなくなってしまったのでしょうか?

もちろんそんなことはなく。町には人々に時間を知らせる「時の鐘」があちこちに設置されており、1刻(約2時間)毎に鐘を鳴らし時報の役目をしていました。お城の太鼓や寺の鐘も時報の役目をしたとか。

余談おしまい。

傘が広告!? 大店がはじめた斬新なサービス


現在、雨の日に無料で傘を貸し出す「レンタル傘」というサービスがあちこちで行われているのをご存知でしょうか?

不要な傘の再利用やエコの観点からも注目されているこのサービス、じつは江戸時代にもあったのです。

江戸時代、現在の三越の前身である越後屋をはじめとした大店では、急な雨が降り出した時に、お客や通行人に番傘をレンタルするサービス「貸し傘」を行っていました。


なぜ、大店がこぞってこんなサービスを行っていたか?



それは、傘に店の屋号などを書くことで、傘をさす人々が“歩く広告”になってくれたから

江戸時代、傘は歩く広告として利用されていた(画像左の傘に屋号が書かれている、『絵本隅田川両岸一覧』より/葛飾北斎 画)
橋の上にはにわか雨に降られた人々が駆け足で行き交う姿が。画像左の人物がさしている傘に注目。大きく屋号が書かれています。これはいい宣伝になる。(『絵本隅田川両岸一覧』より/葛飾北斎 画)
店側にとっていい宣伝になったのはもちろんですが、見栄っ張りの江戸っ子にとって、越後屋など大店の傘をさしていることはレンタル傘なれど一種のステータス。

現代でいうとハイブランドの紙袋を持ち歩く女性の心理に通じるものがあるかもしれません。それにしてもいつの時代も商売人のアイデアには感心してしまいます。

このサービスはかなり好評だったようで、「江戸中を 越後屋にして にじ(虹)がふき」なんて川柳も残っています。



傘がないときはどうする?


傘が手元にない時は「てぬぐい」で急場をしのぎました。今でもハンカチやタオルを傘代わりにしますがそれと同じ。数百年前もやることは変わりません。

また、女性の場合は「御高祖頭巾(おこそずきん)」と呼ばれる四角い布で頭部をゆったり包む頭巾も雨よけとして利用されました。

江戸時代、豪雨に外出する人たち(『太閤五妻洛東遊覧之図』部分/喜多川歌麿 画)
豪雨の外出には完全防備で。画像右と中央の女性は傘にプラスして御高祖頭巾をかぶっています。画像左の男性はてぬぐいをプラス(『絵本四季花』より/喜多川歌麿 画)

以前、明治時代の美人特集で紹介しましたが、御高祖頭巾をかぶった女性はこんな感じです。

お高祖頭巾、目元のみ露出する女性(明治時代の美人)

お高祖頭巾の女性(日下部金兵衛撮影、明治時代の美人)

江戸版レインコート、合羽(かっぱ)


もうひとつ雨の日に活躍したレイングッズが合羽。この「合羽」という言葉、じつはポルトガル語の「capa」の当て字なんだとか。合羽の原型は、16世紀に来日した南蛮人がまとっていた長い袖なしマントで、当初は羅紗(らしゃ)やビロードなど高級素材が使われ、織田信長豊臣秀吉といったオシャレ武将に珍重されました。

江戸時代になると和紙に油を塗り防水加工を施した「紙合羽」が登場し、安い・軽い・便利、と三拍子そろっていることからあっという間に庶民にも広まりました。

さらに木綿の生産が増えた江戸時代中期には、木綿の合羽も登場、袖付きで小袖の上に着る木綿合羽は前が開かないようヒモが付いているという細やかな心配りも。

また、表地と裏地の間に防水用の油紙を入れた「引廻し合羽(ひきまわしかっぱ)」は旅行の必須アイテムとして大人気でした。

引廻し合羽を着る江戸時代の旅人(『木曾街道六拾九次』「沓掛」渓斎英泉 画)
木戸街道を旅人が行く。画像中央の男性が着ている縞模様の合羽が「引廻し合羽」(『木曾街道六拾九次』「沓掛」渓斎英泉 画)
体に身につける雨具としてもうひとつ忘れてならないのが蓑(みの)。蓑は合羽が登場するまでは主役級でした。

蓑の素材である藁(ワラ)は撥水性があるうえ、雨粒があたっても繊維に沿って流れ落ちるため内部には水が染み込まないという優れもの。

しかし、めちゃくちゃかさばる火気は厳禁(ワラなのでいい感じに燃える)、という痛すぎる弱点もありしだいに廃れていきました。それでも江戸時代にはまだまだ現役で活躍していました。

蓑を着る江戸時代の旅人(『東海道五十三次』「庄野 白雨」歌川広重 画)
強風をともなうにわか雨に旅人も転げるように坂道を急いでいます。画像右の旅人が蓑を着ています。(『東海道五十三次』「庄野 白雨」歌川広重 画)

明治時代中期に撮影された雨の日の人力車の写真
明治時代中期に撮影された雨の日の人力車の写真。人力車をひく男性が蓑を着用!明治になっても蓑は活躍していたようです。画像引用元

雨の日だって足元にはこだわりたい!


最後は足元の雨の日グッズについて。着物を着ていた江戸時代、雨の日に着物の裾が汚れないように履いていたのが「足駄(あしだ)」です。「高下駄(たかげた)」ともいいます。これは歯が高い下駄で、平安時代からあったとか。

雷雨のなかを足駄で走る若い女性(鳥居清満 画)
雷雨のなかを若い女性が走っています。その足に履いているのが歯の高い足駄。それにしても、ひるがえる裾から覗く白い足がセクシーです(鳥居清満 画)
明治時代になるとつま先が泥で汚れないようカバーが付いた足駄も登場しました。

いかがだったでしょうか? 江戸時代にもさまざまなレイングッズ(雨具)があったようです。たまには気分を変えて蛇の目傘をさしてみるのもいいかもしれませんね。

あわせてどうぞ→
ミニ氷河期だった江戸時代 庶民はどんな服装で冬の寒さをしのいだのか?
江戸時代はミニ氷河期で極寒だった! 暖房家電もなく庶民はどうやって寒さをしのいだ?


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