江戸時代を代表する都市伝説「本所七不思議」がちっとも怖くない!?
「学校の七不思議」などとしてよく知られる「七不思議」というフレーズ。ある特定の場所や地域にまつわる不思議な話や怖い話を7つまとめた表現で、これも一種の怪談です。
「◯◯七不思議」というのは江戸時代からすでに全国各地にあり、大都市・江戸でもそこかしこに「七不思議」がありました。「千住七不思議」「麻布七不思議」「八丁堀七不思議」などなど。欲望と愛憎が渦巻く江戸城、特に大奥でも不思議話はたくさん伝えられています。このように江戸を舞台にした都市伝説は数ありますが、なかでも有名なのが「本所七不思議」です。
本所は現在の東京都墨田区の南部で、いわゆる「下町」と呼ばれるエリアです。明暦の大火後に開発が進み、新興住宅地となり武家屋敷や寺社も建ち並びました。
江戸時代から現代に伝わる都市伝説「本所七不思議」とは一体どんな内容なのか気になりますよね?では7つの不思議話をご紹介していきます。
その1 置行堀(おいてけぼり)
恐怖レベル★★★★☆
運河の多い本所では人々がよく釣りをしていた。ある時、仲間と釣りをした男が魚もたくさん釣れたので帰ろうとしたところ、堀のほうから「おいていけ〜、おいていけ〜」という不気味な声が……。ギョッとした男は逃げるように家へ帰るが、魚籠(びく)をのぞくと、なんと!…たくさんあったはずの魚は一匹残らず消えていたーー
というのが「置行掘」の基本ストーリーです。むむ、あまり怖くないような…。さすがにもっと怖い方がいいんじゃないかと当時から思われていたのか、「2人の釣り人のうち、ひとりは魚籠を置いて逃げたので難を逃れたが、魚籠を持って逃げようとしたほうの男は堀から伸びた腕に捕らえられ死亡した」「魚籠を置いて逃げ、そのあと戻って魚籠をのぞいたら空っぽになっていた」など色々なバリエーションが存在します。
この「置行堀」は落語などにも取り上げられているので、「本所七不思議」のなかでも一番有名です。ちなみに「千住七不思議」にも「置行堀」がありますが、本所のそれとは別の堀での怪事です。
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どんどんいきます。
その2 送り提灯(ちょうちん)
恐怖レベル★★☆☆☆
本所出村町での怪事。ある暗い夜、酒に酔った武士が歩いていると夜道の案内をするかのように提灯の明かりが突然ぼんやりと現れた。その明かりに近づこうとするとフッと消え、離れるとまた明かりが灯る。何度やってもこれの繰り返しで、明かりに追いつくことは絶対にできなかったーー
これも似たような話があちこちにあります。不思議っちゃ不思議ですが、怖くはないような……いや、実際こんな目に遭ったら怖いな、やっぱり。
その3 送り拍子木(ひょうしぎ)
恐怖レベル★★☆☆☆
本所入江町での怪事。ある静かな夜のこと、夜回りが「火の用心」と声をあげ拍子木を打ち鳴らし夜道を歩いていると、背後からカチカチと拍子木の音が聞こえてくる。音のほうを振り返るが誰もいなかったーー
「送り提灯」と内容はほぼ同じ(笑)。自分の前で起きた不思議か背後で起きた不思議かの違いだけで、これもあんまり怖くありません。
その4 燈無蕎麦(あかりなしそば)別名 消えずの行灯
恐怖レベル★★★★☆
夜になると本所の堀割下には二八蕎麦屋が出たが、そのうちの1軒は店先の行灯に火が灯ることがついぞなかった。そして、この行灯に火を灯そうものなら、その者は帰宅後に必ず凶事に見舞われたというーー
怖いというより理不尽。親切にも火をつけたら不幸な目に遭うとか最悪だ。ということで恐怖レベルかなり高めにしました。
「燈無蕎麦」とは正反対のバージョンもあります。「消えずの行灯」という話で、「店の主人もおらず、誰も油を足していないのに絶対に行灯の火が消えない蕎麦屋がある」という内容です。あれ? ますます怖くなくなった。
ちなみにこの怪異の正体はタヌキともいわれています。なので先ほどの浮世絵にも行灯の上にタヌキが乗っているのです。
次もタヌキ。
その5 狸囃子(たぬきばやし)
恐怖レベル★★☆☆☆
毎夜、人気のない野原の近くから楽しげなお囃子の音が聞こえてくる。その音を追っても音の出所には近づけず、歩き回っているうちに夜明けになっており、見知らぬ場所に立っていたーー
音の怪異の一種で、正体はタヌキだと考えられていましたが、ホントのところは正体不明。「狸囃子」じゃなくて「馬鹿囃子(ばかばやし)」と呼ばれることも。
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