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ひし餅に白酒、そしてハマグリーーひな祭りの食べ物にはどんな意味があるの?
さて、ひな祭りのお供えといえばまず思いつくのはひし餅ではないでしょうか?
ピンク(桃色)・白・緑の3色がいかにも春らしい。ちなみにこの3色にはそれぞれ意味があります。
- ピンク→邪気を祓うパワーを持つ桃の花カラー
- 白→白酒の色
- 緑→こちらも邪気を祓うパワーを持つというヨモギの色
また、この3色は春の情景を表現しているとも。雪の下には新芽が芽吹き、桜が咲くーーというイメージです。
ところが江戸時代のひし餅はちょっと違う。
こちら、深川江戸資料館で再現された長屋のひな祭りのようす。
男雛と女雛のほかに五人囃子も参加し、嫁入り道具も揃っています。長屋暮らしとはいえかなりお金に余裕のある住人のようです。
さてさて、画像中央にかなり大きなひし餅が見えますが、緑と白の2色だけでピンクはありません。
そうなんです。江戸時代のひし餅は緑・白の2色で、ピンクが追加されたのは明治時代からのことなんだそう。2色のひし餅って新鮮なビジュアル。
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さて次。
白酒もひな祭りには欠かせないもの。
白酒とは甘口の濁り酒で、ノンアルコールの甘酒とは似て非なるもの。間違ってお子さんが飲まないようにご注意ください。
「上巳の節句(ひな祭り)」に桃の花を浸したお酒を飲む、というのは江戸時代以前から行われていたようですが、「ひな祭りには白酒」が定番になったのは江戸時代のことだそう。
そのきっかけとなったのが、神田鎌倉河岸に店を構えていた酒屋・豊島屋。
豊島屋は「山なれば富士、白酒ならば豊島屋」といわれたほど白酒で有名な店で、2月下旬の白酒初売りの日にはお客が殺到、そのようすは江戸のガイドブック『江戸名所図会』に紹介されるほどでした。
ワォ! ものすごい繁盛っぷり。画像左上には、「白酒をゲットしようと遠方からも人が大勢やってきて夜明け前から店の前には大行列ができた」というようなことが書いてあります。初売りの日だけで1,400樽を売り上げたというからただごとじゃありません。
あんまり混雑するもんだから、櫓(やぐら)の上には医師と鳶(とび)が待機して、ケガ人対策と行列整理をしています。さながら江戸版DJポリス。
白酒で有名になった豊島屋にはこんな伝説があります。
ある夜、豊島屋の初代主人の夢枕におひな様が現れ、おいしい白酒のつくり方を教えてくれたそうな。そして教えられたレシピ通りにつくった白酒をひな祭りの前に売り出したところ大評判になり大ヒット。いつしか「ひな祭りには豊島屋の白酒」となりましたとさ。
こうして江戸でひな祭りのマストアイテムとなった白酒は、江戸から全国へ広まっていったといわれています。
なお、豊島屋の白酒は現代でも買うことができます。江戸っ子が舌鼓を打ったその味をぜひたしかめてみたいものです。
ほかに、ハマグリやアサリなどの貝類をお供えする習慣もありました。
こちらの絵には人形を持った美女と桃の枝を持った子ども、そして女の子がなにかをつついています。拡大してみましょう。
台にのったお皿にはハマグリやアサリ、サザエなど貝類がてんこ盛り。
現代ではハマグリというと“高級貝”のイメージがありますが、江戸時代には江戸近海でもハマグリがたくさん採れたので値段も安く、庶民でも気軽に買うことができました。高級どころかむしろ庶民派。
また、旧暦のひな祭りの頃は潮干狩りシーズンでもあり、人々は潮干狩りでゲットしてきたハマグリなどをおひな様にお供えすることもありました。
現代、ひな祭りの食べ物といえばちらし寿司&ハマグリのお吸い物が黄金コンビだと思いますが、江戸時代にはハマグリのお吸い物は婚礼メニューの定番でした。
ちなみに「婚礼のお吸い物にはハマグリを使うべし」といいだしたのは、八代将軍・徳川吉宗。
ハマグリは全国的にたくさん採れて貧富の差なく手に入れることができるから、という理由らしい。じつに細かいところまで気のつくお方です。
余談ですが、婚礼メニューで出されたお吸い物に入っているハマグリを花嫁は食べてはいけない、という謎のルールが江戸時代にはあったそうです。
江戸時代の人々がひな祭りにハマグリのお吸い物を食していたかはわかりませんが、婚礼メニューだったことと関係があるのかもしれないですね(情報求む)。
また、ハマグリの貝殻は対になっていないとピッタリ合わないことから「夫婦和合の象徴」とも考えられており、ハマグリをお供えすることで良縁を願う、という説もあります。
さぁ、最後は毎年頭を悩ませる「男雛と女雛の左右問題」について。