早朝から出発! カキやハマグリ、ヒラメなどの高級食材もゲット
先ほども登場した『東都歳事記』によれば江戸近郊の潮干狩りスポットは、芝浦・高輪・品川沖・佃沖・深川洲崎・中川沖。
品川にしても高輪にしても現代では大都会のど真ん中ですが、かつては江戸湾に面する潮干狩りのメッカだったんですね。
「今日は潮干狩りに行こうぜ!」となったら、それは1日がかりの大イベントでした。
またまた登場、『東都歳事記』に潮干狩りのくわしいスケジュールがありますので、それによるとこんな感じ。
早朝から船に乗ってはるか沖合に出る。卯の刻(午前6時頃)すぎから潮が引きはじめ、午の刻(正午頃)には潮が引ききり陸地となる。船から下りていざ潮干狩りスタート。
という具合です。
潮が引くまでずっと船で待っている江戸人、とても気長だなあ。せわしない現代人なら一旦帰宅するレベルの待ち時間の長さ。江戸の人たちはどんなことして時間をつぶしていたんでしょうか。
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さて、潮干狩りといえばメインの獲物は今も昔もアサリ。現代だと養殖物などを事前に砂浜にばらまいておく、という潮干狩り場もありますが、江戸時代はもちろん天然物の江戸前アサリです。そりゃそうだろと当たり前な話なわけですが、現代人から見るとじつに贅沢。
ほかに現代では高級貝の代表格的なこんなものもたくさん獲れました。
ハマグリ。
今では気軽に買えるようなお値段ではないハマグリですが、江戸時代には江戸湾でもハマグリがたくさん獲れたのでむしろ“庶民の貝”だったんだとか。天ぷらの屋台でもハマグリの天ぷらが1串4文(約80〜100円)というリーズナブルな価格で売られていました。
またカキも潮干狩りでよく獲れたそう。江戸前のカキなんて名前だけで美味しそうです。
貝類だけではありません。浅瀬に残った小魚を捕まえることもありました。
運がよければ時にはこんな大物も。
ヒラメ。
砂のなかに隠れていたヒラメを、どこだどこだと足で探り出し捕まえたりしたそうで、潮干狩りを描いた浮世絵にもちょいちょいヒラメが登場します。
ぜんぜん関係ないんですが、上の浮世絵に気になる部分があるので拡大します。
こっち見んな!
話を戻します。
潮干狩りに夢中になっていたらいつの間にか潮が満ちはじめていて焦った、という経験をしたことのある人もいるでしょう。
江戸時代もそれは同じだったようで、「落かゝる 日に怖気だつ 汐干哉」(高井几董)なんて句もあります。
アサリにハマグリ、カキやヒラメなどをゲットしたら、さっそく獲れた海の幸を肴に宴会を開くこともありました。
長屋の人々は潮干狩りでゲットした貝類などを隣近所に配ったりもしたようです。
楽しいうえに新鮮な海の幸をタダでゲットできるのですから、潮干狩りが人気を集めるのも大いにうなずけます。
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