珍獣からミイラまで見世物小屋は不思議な動物園?
江戸時代、見世物小屋が動物園の役割も果たしていました。ということで、
動物見世物。
なかでも2大スターともいえる動物がいました。
象です。今でも人気者。パオーン。
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象さんと人気を分け合ったのが、こちら。
ラクダです。ちょっと意外。
象もラクダも今では「珍獣」と呼ぶには身近になりすぎた感がありますが、江戸時代には舶来動物として外国から長崎や横浜などに運ばれてきてブームとなりました。70年代に上野動物園にやってきたパンダが巻き起こしたパンダブームに似たような感じ。
さて、アメリカ船によって横浜へやってきた1頭のアジア象(メス/3歳)が江戸の両国で見世物にかけられたのは1863年(文久3年)のこと。
初めて目にする「象」なる小山のごとき巨大な生き物に人々は仰天、その評判は江戸中を駆け巡り、興行は大ヒット、数多くの浮世絵が出され、その後も各地を巡業しました。
じつは江戸時代に象が江戸へやってきたのはこれが最初ではなく、江戸時代中期の1728年(享保13年)にも中国船によって長崎へ2頭の象(オスとメス)が運ばれ、かの“暴れん坊将軍”8代将軍・徳川吉宗に献上されたのだとか。
一方のラクダが来日したのは、1821年(文政4年)のことで、オランダ船に乗ってオス・メス2頭のラクダが長崎へやってきました。
その後、このラクダたちは大坂、続いて江戸で見世物にかけられ、“ラクダブーム”を起こすほど大きな話題となりました。一説に両国での見世物興行ではラクダ見たさに1日だけで5,000人もの人が押し寄せたこともあったとか。
今では「動物園の人気者」とはいい難いラクダですが、江戸時代にはたいそうな人気者でした。
もっとビックリなのが、象やラクダなどの「珍獣」には見るだけでありがたいご利益がたくさんあったということ。
たとえば象はひと目見ると「七難去って七福がやってくる」というラッキーアニマル。ラクダはもっとすごい。ご利益盛りだくさん。ざっと並べると……
- ラクダの絵を貼っておくだけで、疱瘡(ほうそう)・麻疹除けになる
- ラクダを見たり、ラクダの絵を貼ると夫婦仲がよくなる
- ラクダの尿は霊薬となり、瀕死の病人も元気になる
- とにかく見ればなんにでも効くし、いいことある
ラクダさん、すごいよ……すごすぎる。もはや火の鳥レベルの霊獣っぷり。
ほかにも、豹(ヒョウ)や虎、ヒクイドリ、クジャク、オウム、ヤマアラシなどといった舶来動物も「珍獣」として人気を博しました。
見世物のなかには豹と謳いながら大きな猫を見せる、なんてインチキなとこもあったとか。
また、外国からやってきた動物ばかりでなく日本にいる動物でも、普段あまりお目にかからないオオカミやキツネ、アザラシ、オオサンショウウオなども見世物の人気者になりました。
これは1833年(天保4年)に尾張の熱田の海沿いに迷い込んだアザラシ。このかわいい闖入者をひと目見ようと現場は大にぎわい、小舟で見物できる商売を始める者やアザラシグッズを販売する者なども登場し、アザラシブームに沸きました。まさに、江戸時代の「タマちゃん」。その後、このアザラシは捕獲され、見世物にかけられさらに大人気になったんだとか。
江戸時代の見世物は動物園の一面もあったんですね。ちなみに、日本初の動物園は上野動物園で、開園は1882年(明治15年)のことでした。
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