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「親も同然」といわれた長屋の大家、現在のアパート大家とは別物!?
長屋は基本的に借家であり、管理人は「大家」、借りている人は「店子(たなこ)」と呼ばれました。時代小説に登場する「差配さん」は大家さんのこと。長屋の物件オーナーは裕福な商人などの地主で、江戸時代の大家はあくまで雇われ管理人です。
大家はただ管理人というだけでなく、店子の世話役であり責任者でありました。そのため「大家は親も同然、店子は子も同然」とも言われます。
大家の仕事内容をざっと並べますと――
- 店賃(家賃)の取立て
- 店子の身元調査と管理
- 長屋の修繕(共同井戸やトイレ含む)
- 夫婦喧嘩などもめごとの仲裁 (!?
- 冠婚葬祭の手配
- 結婚相手の斡旋
- お金の用立て
- 旅行に必要な手形の手配
- 夜回りと火の番
- 奉行所からの町触(まちぶれ/町人に対して出された政策のこと)を店子に伝達
などなど。
店子が問題を起こし、町奉行所にしょっぴかれたりした場合は同行したり身元引受人にもなりました。もし罪人が出た時は連帯責任を負わされるなど、まさに親も同然。ちなみに、大家は裏長屋の一角に住んでいたり、表店の主だったりと常に店子に目が行き届くよう近くに住んでいました。
そんな責任重大な大家さんですが、“役得”もありました。それは、長屋の共同トイレにたまった糞尿を売ったお金が丸々ふところに入ること。この時代、糞尿は肥料として重宝され、江戸では近郊の農家がわざわざ買い取りに来ていました。
糞尿売却代(下肥料)はなかなかの収入で年間数十万円〜数百万円にも!(店子の人数による)。余談ですが、排泄物にはランクがあり、いいものを食べていた大名や大商人の屋敷から出る排泄物は、貧乏長屋の排泄物より値段が高かったとか。
「店中(たなじゅう)の 尻で大家は 餅をつき」なんて川柳もあります。
大家は年末に正月用の餅を店子に配る慣習があったんですが、その餅代は店子の糞尿代でまかなっているんだよ、というような意味です。糞尿が餅として還元され、それが再び糞尿となる。これもまたリサイクルです。