NG食材がいっぱい?将軍の食事
最後は将軍の食事を見てみましょう。将軍といえば武家の総大将、江戸時代のトップです。さぞかし豪華な食事なのではないでしょうか!?
将軍の朝食は朝8時。プライベート空間である中奥(なかおく)でひとりで食事をしました。その内容は
- 〈一の膳〉
- ごはん、汁物、刺身や酢の物などの向付(むこうづけ)、煮物
- 〈二の膳〉
- 吸い物、キスの塩焼きなどの焼き物
つまり「二汁三菜」です。昼食、夕食はこれにおかずが少し増える程度だったそう。
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なかなか豪華に思えますが、味はあまりおいしくなかったと思われます。というのも、できてからかなり時間がたった食事しか食べられないから。
将軍の食事をつくる台所と食事をする場所はかなり遠く、運ぶまでとっても時間がかかりました。さらにその間になんども毒味が入ります。一説には料理ができてから将軍の口に入るまで2時間近く経っていたとも。部屋へ運ぶ途中に温め直したりもしましたが、やはりできたてのおいしさには及びません。
おもしろいのは、将軍ひとりの食事なのに10人前もつくること。まず、2人の役人が1人分の膳を毒味。さらにほかの役人が1人分の膳を再び毒味。さらに将軍の部屋でも2人の役人が3度目の毒味。
ここまでして問題なければようやく将軍が食べることができました。10人前もつくる理由は、毒味の回数が多いことのほかに、どの膳を将軍が食べるのか直前までわからないようにするためだったとか。つくるほうもたいへんですね。ちなみに、残った膳は役人(スタッフ)がおいしく頂いたそうです。
しきたりの多い武家のこと、将軍の食事に関するさまざまなタブーがあり、NG食材もたくさんありました。たとえば
ネギ
おいしいですけど将軍は食べられませんでした。理由は匂いが強いから。同じ理由で、にんにく、にら、らっきょうなどもNG食材でした。
ほかにも
まぐろ
「え!?まぐろなんて高級魚じゃん!」と思うかもしれませんが、あっさりとした白身の魚が最上とされていた当時、脂の多いまぐろは“下魚(げぎょ)”とされ、むしろ庶民の魚でした。
ほかにも、さんま、ふぐ、どじょう などもNG。まぁ、ふぐは食べたら死んじゃいますからね。反対にキス(鱚)は頻繁に食べられていたそう。理由は魚偏に「喜」なので縁起がよいから。
また、江戸時代は肉食がタブーだったイメージがありますが、じつは肉も食べていました。牛馬は農作業に欠かせないため食用にされませんでしたが、鳥肉はわりとポピュラーな食材で将軍も口にしていました。特に将軍家に愛された鳥肉がこれ
鶴です。
鶴は姿の美しさなどから将軍や大名に珍重され、天皇家にも献上されました。鶴を食べるなんて今では考えられませんね。反対に、鶏は将軍のNG食材でした。古来、鶏は夜明けを告げる神聖な鳥といわれていたからでしょうか。
とはいえ、将軍家には忌日(きにち)が多く、月の大半は精進日となり魚も酒もNGでした。
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