16歳が陰間の花、わずか数年で現役を引退
陰間となる少年たちは遊女と同じく“売られてきた”少年たちでした。
興味深いのが陰間として上等なのは「下り子」と呼ばれる上方出身の少年であるとされたこと。江戸生まれの少年は気性が荒く、言葉づかいも粗野なので陰間としては「下り子」よりランクが下と考えられていたそう。そのため江戸近郊出身でも「下り」とか「新下り(しんくだり)」と称して売り出したりしたんだとか。
陰間は「少年版遊女」というようなイメージもありますが、現役として働けるのは遊女よりもずっと短い期間でした。遊女は15歳前後で客をとり始め、27歳で契約が終了(年季明け)するのが一般的でした。それに対して陰間は12、13歳頃から客をとり始め、肉体が男性らしくなり中性的魅力の減る20歳を過ぎれば現役生命もそろそろ終わり、となったそう。
現代でいえば中高生が陰間のメインだったわけです。
元禄時代に書かれた『男色(なんしょく)実話教』という本で陰間を花にたとえ、その現役生命も短さをこう表現しています(超訳)。
「陰間の春は16歳。11歳から14歳までは花のつぼみ、15歳から18歳が最も美しい花の盛り、19歳から22歳は盛りを過ぎた散る花である」
まだまだ若い時期に引退した陰間、引退後はどうしたのでしょう。
遊女だと売れっ子ならばお金持ちに身請けされたり、どこかに嫁いだりしました。まっとうな職に就くものもいましたが、遊女下級遊女に身を落とし老齢になっても身を売る女性も少なくありませんでした。陰間の場合、身請けされることもまれにありましたが、多くは女性客を相手にする男娼になったそうです。
ハードすぎる陰間になるための修行
人々を魅了した魅惑の美少年「陰間」。陰間としてデビューする前には入念な修行が行われました。たとえば、美しい肌を手に入れるためザクロの皮でつくられた特製の粉で全身を磨いたり。
また、高く通った鼻筋が美しいとされたようで、10歳くらいから鼻を高くするためのトレーニングも行っていたとか。その方法はなんと寝るときに板で鼻をつまむというもの。イメージとしてはこんな感じでしょうか。
ほかにも、背が伸びすぎないように寝ているときに伸びをしてはいけない、なんて指導もあったとか。
そしてなによりも重要なのが肛門トレーニング。
これも11、12歳頃からスタートします。陰間となれば当然、肛門性交をすることになるわけで、肛門はいわば大切な商売道具。傷つかぬよう、痛みに耐えかね肛門性交恐怖症にならぬよう、デビュー前に慎重に仕立てられました。
肛門の仕立て方法は主に次の3種類。
- 指を使う
- 「棒薬(ぼうやく)」という今でいうバイブのようなものを使う
- 本物の男根を使う
では、順に紹介していきましょう。
指を使って肛門を鍛える方法
仕立て役は少年の肛門が傷つかないよう、しっかり爪を切っておく。最初は小指に脂薬という潤滑剤をつけ肛門に入れる。スムーズに出し入れできるようになったら薬指、中指、親指と指を変えていき、それにも慣れてきたら人差し指と中指の2本で出し入れする。さらに慣れてきたらいよいよ本物の男根でのトレーニングに突入。
仕立て役は少年の肛門が傷つかないよう、しっかり爪を切っておく。最初は小指に脂薬という潤滑剤をつけ肛門に入れる。スムーズに出し入れできるようになったら薬指、中指、親指と指を変えていき、それにも慣れてきたら人差し指と中指の2本で出し入れする。さらに慣れてきたらいよいよ本物の男根でのトレーニングに突入。
うーん、これを少年がされるのですからたいへんだったでしょうね……。
次。
棒薬でのトレーニング
肛門を仕立てるトレーニング初日からずっと寝るときに行うもので、まず、トレーニングの前に腰湯につかって括約筋を緩めておく。そして、棒薬を肛門に挿入し、就寝時はずっとそのままにし異物感に慣れさせる。
肛門を仕立てるトレーニング初日からずっと寝るときに行うもので、まず、トレーニングの前に腰湯につかって括約筋を緩めておく。そして、棒薬を肛門に挿入し、就寝時はずっとそのままにし異物感に慣れさせる。
ちなみに、棒薬というのは、8センチほどの木に綿を巻きつけ本物の男根のようにし、これに「たんぱん(硫酸銅)」をごま油で溶いた液を塗りつけたもの。「たんぱん」で直腸が腐食し感覚が鈍くなるので、客の男根が受け入れやすくなるという。
最後。
本物の男根でのトレーニング
必ず「いちぶのり」という潤滑剤を使う(詳細は後述)。仕立て人は「いちぶのり」を口のなかでよく溶かし、これを少年の肛門と自分の男根によく塗りつける。初日は男根のカリ部分だけを少し入れて終了。2日目は亀頭部まで、3日目は男根の半分まで、4日目には全部を、5日目以降は毎日3〜4回ほど最奥まで挿入する。
必ず「いちぶのり」という潤滑剤を使う(詳細は後述)。仕立て人は「いちぶのり」を口のなかでよく溶かし、これを少年の肛門と自分の男根によく塗りつける。初日は男根のカリ部分だけを少し入れて終了。2日目は亀頭部まで、3日目は男根の半分まで、4日目には全部を、5日目以降は毎日3〜4回ほど最奥まで挿入する。
これも過酷です。少年はもちろん大変。そして、仕立て人もプロの仕事をしなければならない。どんなに気持ちよくても絶対に射精してはいけないとされました。
と、このようにデビュー前の少年には徹底した肛門トレーニングが施されたのです。
余談ですが、江戸時代にはいろんな本があったのですが、なかには肛門の良し悪しについて書いた本もありました。それによるとーー
- 上品(じょうぼん)の肛門
- 尻の肉づきがよく、肌はふっくらキメこまやか。肛門は柔軟にして42のヒダがある
- 下品(げぼん)の肛門
- 尻の肉づきが悪く骨ばり、肌の皮は厚い。肛門もかたくて柔軟性に欠ける
らしいです。