さて、お次は個人的に一番オススメしたい江戸時代後期の絵師。

江戸琳派の鬼才 鈴木其一(きいつ)


〈略歴〉

1796年(寛政8)〜1858年(安政5)
江戸に生まれ、18歳で「江戸琳派」の祖・酒井抱一に弟子入り、一番弟子として師の代作をすることもあった。師の画風を受け継ぐだけにとどまらず、独自の画風を確立し多くの弟子を育てた。大胆な構図とビビッドな色彩、デザイン性に優れた作品は近代絵画を予感させるものとして近年、特に注目と人気を集めている。

現実離れした美しき世界

『夏秋渓流図屏風』(鈴木基一 画)
『夏秋渓流図屏風』
其一40歳前後のものと考えられている作品。天に向かってまっすぐに伸びる杉とその間を流れる渓流が描かれているのですが、渓流の現実離れしたビビッドな青のインパクトがものすごい。

金色の線で表現された川の流れが非現実性をさらに増しています。『夏秋渓流図屏風』というタイトルの通り、右側の景色は百合が咲きセミが鳴く夏のもの、対して左側の景色は紅葉した桜の葉が散る秋のもの。

2つの季節が混在する不思議な空間を色鮮やかに描いたこの作品は、現代人が見てもその斬新なセンスに感動すること間違いなしです。

貝ってきれいなんだなぁ

『貝図』(鈴木基一 画)
『貝図』
赤貝や浅蜊などの貝と梅を描いた美しい絵。貝の描写は写実的ながら模様の描き方などはグラフィックアートのよう。青い梅の実とほんのり色づいた熟した梅の実が画面にやさしさを加えているようです。

匂い立つような

『藤花図』(鈴木基一 画)
『藤花図』
縦長の画面にみっしりと描かれた満開の藤の花。紫のグラデーション効果によりゴージャスでありながら透明感もある藤の匂い立つような美しさは圧巻。

縦長に垂れ下がる藤の花、横に葉を広げる上部の葉、さらにうねるように藤の花に絡みつく蔓が画面にリズムを与えており、其一のセンスに舌を巻きます。

森羅万象、天下泰平

『百鳥百獣図』(鈴木基一 画)
『百鳥百獣図』(1843年)
アメリカから初めて日本に里帰りしたという貴重な作品。サイズは大きくないものの、描かれているのは壮大な世界。現実に存在する生き物から空想上の生き物までありとあらゆる鳥と獣が極彩色に描かれており、桃源郷のようです。

さぁ、いよいよお次で最後。ラストを飾るのは猫好きとして有名な超人気絵師。

スポンサーリンク


幕末浮世絵七変化 歌川国芳


〈略歴〉

1797年(寛政9)〜1861年(文久元年)
江戸日本橋で生まれた生粋の江戸っ子。12歳の時に当代きっての人気絵師・歌川豊国の弟子になったとされる。迫力ある武者絵で一躍人気絵師に。大の猫好きとしても知られ、猫を描いた作品も多い。動物を擬人化させたユーモラスな作品や、妖怪絵、美人画、風景画とありとあらゆるものを描いた。大胆な構図、遊び心と反骨精神に満ちあふれた作品は近年、特に人気が高い。

歌川国芳の肖像画
国芳の自画像といわれるもの。周りにめちゃくちゃ猫がいるのが微笑ましい。

驚きのワイドスクリーン

『宮本武蔵の鯨退治』(歌川国芳 画)
『宮本武蔵の鯨退治』
剣豪・宮本武蔵の鯨退治伝説を描いたものですが、主役の宮本武蔵より鯨が完全に目立っています。

武蔵のすごさを表現するため鯨を巨大にしたい、さてどうしよう……そうだ紙を3枚つなげてワイドスクリーンにしよう! という発想が斬新すぎます。ドット柄のような鯨の表現もユニークでオシャレですね。

縦にも伸ばそう

『吉野山合戦』(歌川国芳 画)
『吉野山合戦』
縦に長〜く描かれているのは五重塔。紙を縦に3枚並べる大胆な構成はあまり見たことがありません。

五重塔の屋根には鎧武者がおり、よく見ると下には厳しい顔をした僧兵がいます。これは源義経の替え玉になった家臣・佐藤忠信と義経の命を狙う吉野の僧兵との緊迫した睨み合いのシーン。

微妙に五重塔の屋根に角度をつけることで、平面でありながら見ている者は塔を見上げているかのような錯覚に陥ります。

江戸時代版、ガリバー旅行記

『朝比奈小人嶋遊(あさひなこびとじまあそび)』(歌川国芳 画)
『朝比奈小人嶋遊(あさひなこびとじまあそび)』 1847年頃
画面いっぱいに横たわる半裸の男性がニヤニヤとしています。

その視線をたどると、なんと小さな大名行列が!

これは鎌倉時代に実在した朝比奈三郎という武者の伝説を描いたもの。「ガリバー旅行記」さながら、小人の国や一つ目の国などいろいろな異形の国を巡ったのだとか。一説に、当時実際にあった見世物小屋と大名とのトラブルを風刺したものとも。

やっぱり猫が好き

『猫の当字』「ふぐ」(歌川国芳 画)
『猫の当字』「ふぐ」
猫大好き国芳なだけにやっぱり猫の作品がありました。

展示されていたのは、猫が集まって「ふぐ」の文字をつくっているカワイイこちら。10匹それぞれ模様も表情も仕草も異なり、国芳の猫に対する深い愛情と観察力を感じます。

みんな飼い猫なのか、赤い首輪もおしゃれ。落款の部分も猫の首輪と鈴になっており、国芳のこだわりに感動します。

超巨大絵馬

『一ツ家(ひとつや)』(歌川国芳 画)
『一ツ家(ひとつや)』
額縁を含めると横4m近くもある超巨大な絵馬。描かれているのは「浅茅ヶ原の一ツ家伝説」。

旅人を泊めては殺し強盗を行う老婆、それを諌める娘、童子に扮し老婆を改心させる観音さまが描かれているのですが、とにかく老婆の表情が恐ろしい。

『一ツ家(ひとつや)』の老婆の表情(歌川国芳 画)

まさに鬼気迫る表情。対して鬼となった母を諌める娘の切なげな表情は見ていると心が傷むほど……。
この超巨大絵馬は浅草寺に奉納されたもので、江戸時代の人々もその迫力に驚いたそう。

以上、8人の絵師による奇跡の競演でした。

グッズコーナーも必見!


おかえりの前にグッズコーナーも要チェック。かつて展覧会のグッズといえば、図録とポストカード、あって便箋やメモ帳くらいなものでしたが、最近の展覧会はとにかくグッズが充実しているうえに全部かわいくておしゃれ。有名菓子店とコラボしたものなどもあり、お土産にもぴったりです。

買う予定はなかったのですが、あまりにかわいくてうっかり買ってしまったのがこちら。

歌川国芳のクッキー(展覧会『奇想の系譜展』のグッズ)

こちらは国芳の『猫飼好五十三疋』をデザインしたパッケージがかわいらしいクッキー。

フタを開けると

歌川国芳『宮本武蔵の鯨退治』のクッキーパッケージ(展覧会『奇想の系譜展』のグッズ)

なかには『宮本武蔵の鯨退治』がデザインされていて二度楽しい。

ちなみに、ポップなデザインが目を引く缶ケースの画像右下、中身はマーブルチョコなのですが、チョコの表面に蕭白の鬼や芦雪の子犬、国芳の猫など人気キャラクター(?)がプリントされています。

人気絵師大集合の企画展だけあって、ものすごい混雑ぶりでしたので、来場の際は時間に余裕を持っての鑑賞をおすすめします。

全体的な印象として「江戸絵画入門編」という感じではありましたが、一挙に見られるというお得感とそれぞれの画風を比較できるというのはいいなと思いました。会期中、作品の入れ替えもあるので何度も足を運んでみるのもいいですね。

2019年4月7日までの開催ですので、ご興味のあるかたはぜひ!

江戸ブログ 関連記事

江戸ブログ 最新記事

あわせて読みたい 戦国・幕末記事