次は理系絵師。

狩野派きっての知性派 狩野山雪


〈略歴〉

1590年(天正18)〜1651年(慶安4)
九州肥前国の生まれ。16歳頃、豊臣氏の絵師として活躍していた狩野山楽に弟子入り、その後、山楽の婿養子になりさらに後継者となる。学者肌だった山雪はその画風も理知的で、垂直や水平、二等辺三角形を強調した幾何学的構図として知られる。また、日本最初の画家列伝『本朝画史』は山雪が草稿を書き、息子の英納が完成させた。

不思議に美しい老梅

『梅花遊禽図襖(ばいかゆうきんずふすま)』(狩野山雪 画)
『梅花遊禽図襖(ばいかゆうきんずふすま)』(1631年)
黄金色の背景のなかをコの字に身をくねらせるように枝を伸ばす老梅。奇妙に曲がりくねった枝を目で追っていくと可憐に咲く白い梅の花。季節は春なのかと思えば、老梅の幹には紅葉した蔦が絡みつき見る者の季節感を奪う。

とにかく不気味

『寒山拾得図(かんざんじっとくず)』(狩野山雪 画)
『寒山拾得図(かんざんじっとくず)』
巻物を手にしたボサボサ頭の2人が不気味な笑みを浮かべ身を寄せ合っています。

もうとにかく不気味。

この2人は寒山と拾得という唐時代の僧で、奇想天外な行動から脱俗を象徴するキャラクターとして人気を集め、日本でも多くの絵師が画題にしています。幾何学的構図を得意とした山雪だけに、この作品もさまざまな三角形と丸から構成されています。

はっけよーい!

『武家相撲絵巻』(狩野山雪 画)
『武家相撲絵巻』※部分
平安時代と鎌倉時代の物語を出典にしつつも、相撲の場面だけをピックアップして長〜い絵巻にしたちょっと変わった作品。相撲を観戦する人々の表情が秀逸で絵のなかから歓声が聞こえてくるよう。

さて、お次は若冲や蕭白ら“奇想の画家”たちに多大な影響を与えたといわれるお坊さん。

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奇想の起爆剤 白隠慧鶴(はくいんえかく)


〈略歴〉

1685(貞享2)〜1768(明和5)
“臨済宗中興の祖”といわれる江戸時代中期の禅僧。駿河国原宿に生まれ、15歳で出家、全国を行脚し修行に励んだ。42歳のときにコオロギの声を聴き真の悟りに達したといわれる。仏の教えを伝えるため1万点以上ともいわれる数多くのユーモアと慈愛にあふれた禅画を残した。絵師ではなく宗教者として描いた白隠の禅画は、大胆かつ自由でその表現方法は多くの絵師たちに大きな影響を与えた。

白隠慧鶴の自画像(白隠慧鶴 画)
白隠の自画像。白隠が描く達磨によく似ている。

ものすごい目力

『達磨図』(通称「朱達磨」)(白隠慧鶴 画)
『達磨図』(通称「朱達磨」)
白隠の達磨図は現存するだけで200点ほどあるそうだが、そのなかでも特に有名なのがこちら。

本物を見ることができ感動したのですが、とにかく大きい。2m近くもある。黒と赤のコントラストは強烈だが、巨大な皿のようなギョロ目のインパクトがものすごい。これが80歳を過ぎたときの作品だというのだからそのエネルギーには感心するばかり。

左上にある文字は「直視人心見性成仏(じきしにんしんけんしょうじょうぶつ)」という白隠がよく達磨の絵に書き入れた文言。

余談ですが、白隠はあくまで宗教者として絵を描いていたので、下書きはそのままだし、描線は何度も描き直しているし、といった絵師ならばありえない点がたくさんあるのがとても興味深かったです。

ポスターのようなデザインセンス

『達磨図』(白隠慧鶴 画)
『達磨図』
先ほどの達磨とはまたかなり印象の違う『達磨図』。

墨一色で一気呵成に描かれた線はスピード感と力強さにあふれています。シンプルでありながらインパクトもあり、まるでポスターを見ているよう。上部の文字は「どう見ても」と書いてあります。

隠れ人気キャラクター

『すたすた坊主』(白隠慧鶴 画)
『すたすた坊主』
ムッチリした体ににこにことした笑顔はまるで赤ちゃんのよう。描かれているのは、「すたすた坊主」という、代参するかわりに金品をせびる最下層の坊主。そのすたすた坊主に扮した布袋さまだそうですが、悲壮感はまるでなくとても幸せそう。

なお、この白隠のすたすた坊主はゆるキャラのようなかわいらしさから近年密かに人気を集めています。

擬人化された魚介類にニッコリ

『蛤蜊観音図(はまぐりかんのんず)』(白隠慧鶴 画)
『蛤蜊観音図(はまぐりかんのんず)』
画面下にある大きなハマグリから霊気が立ち上り現れたのは神々しい観音さま。

その観音さまを拝むのは人……ではなく、竜王やタコ、貝、エビといった海の生き物たち。お遊戯会のように頭にタコなどを乗せて擬人化表現とするところに白隠のユーモアセンスを感じます。海老おじいさんのつぶらな瞳がとても好き。

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