さて、お次。みんな大好きかわいい子犬で有名な絵師。

京のエンターテイナー 長沢芦雪


〈略歴〉

1754年(宝暦4)〜1799年(寛政11)
丹波国・篠山の下級藩士の子として誕生。20代の時に円山応挙の弟子となる。性格はよく言えば奔放、ちょっと傲慢な面もあったという。大胆な構図と奔放な筆致で描かれる作品は明るいものが多く、随所に遊び心を感じさせる。

長沢芦雪の肖像画(長沢芦鳳 画、1830-44年ごろ作)
49歳で急死した蘆雪の死には謎が多く、さまざまな噂がささやかれる。

“例の子犬”を探せ

『白象黒牛図屏風』(通称「黒白図」)(長沢芦雪 画)
『白象黒牛図屏風』(通称「黒白図」)
六曲一双の屏風からはみ出さんばかりの巨体を横たえ向き合う白い象と黒い牛。

よく見ると白象の背には真っ黒な二羽のカラス、黒牛の足元には真っ白な子犬がいます。黒と白、大と小ーー二重の対比になっているという仕掛けなのです。

こちらの作品で特に人気が高いのがこの子犬。

「黒白図」の犬
ぺろっと舌を出し、横座りした子犬は白い毛玉のようなキュートさ。余談ですが、グッズコーナーにはこの子犬をデザインしたTシャツも販売していました。

初公開のとぼけた猿

『猿猴弄柿図(えんこうろうしず)』(長沢芦雪 画)
『猿猴弄柿図(えんこうろうしず)』
芦雪晩年の作。長らく所在がわからなかったけれど本展の調査の途中で再発見された作品なのだとか。

たくさんの柿を大事そうに抱えた猿は上目づかいでどこかとぼけた表情。必死に崖を登る小猿に目もくれず知らんぷりするようなその顔は(あぁ、こんな表情する人いるな)と思わせるほど人間ぽい。

こちらも表情豊かな猿たち。

猿の楽園

『群猿図襖(ぐんえんずふすま)』(長沢芦雪 画)
『群猿図襖(ぐんえんずふすま)』(1795年)
海辺の岩場に集まった猿、猿、猿。

これは兵庫県の大乗寺の「猿の間」にある襖絵で、芦雪の代表作のひとつ。展覧会に出品されていないのですが、襖はまだ続いているそう。

岩の上で日向ぼっこをしたり、小猿を連れて悠々と歩いたり、岩についている貝を必死に食べようとしたりする猿たちはみなとても表情豊か。

ナメクジだけという奇想

『なめくじ図』(長沢芦雪 画)
『なめくじ図』
画面を這い回る一匹のナメクジ。まさかのナメクジの絵。

これが床の間に飾ってあったら間違いなく二度見します。当然というか、ナメクジを描いた作品は珍しいらしい。しかしグロテスクさはなく、むしろナメクジがかわいらしく見えてくる不思議な作品。

肉眼で見えない極小世界

『方寸五百羅漢図』(長沢芦雪 画)
『方寸五百羅漢図』(1798年)
3㎝四方の小さな紙に白象に乗る釈迦と五百羅漢が描かれているのですが、あまりに小さくて肉眼ではなにが描かれているのは判然としないほど。来場者のなかにはオペラグラスで鑑賞されている方もいましたが、正解です。

拡大画像も展示してあったのですが、小さな紙にぎっしりと釈迦や五百羅漢、動物たちが描かれており、芦雪の凄味に圧倒されます。

『方寸五百羅漢図』の釈迦と五百羅漢(長沢芦雪 画)

類を見ない龍

『龍図襖』(長沢芦雪 画)
『龍図襖』
8面の襖に描かれた2頭の龍。右側の「龍雲図」はまるで漫画のようなかっこよさで、襖を破って龍が飛び出してきそうな迫力。もうもうと沸き立つ雲を切り裂く龍はとにかくかっこいい。

左側の「昇竜図」は笑っているかのような龍の表情が印象的。龍の全身を描いた作品は非常に珍しいそうで、芦雪の既存にとらわれない挑戦的な精神を感じさせます。刷毛でさっと描いたような鱗の表現もユニークで、全体的におおらかで楽しげな雰囲気。個人的に芦雪コーナーで一番好きだったのがこの2頭の龍です。

お次は浮世絵の源流ともいわれるこの人。

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執念のドラマ 岩佐又兵衛


〈略歴〉

1578年(天正6)〜1650年(慶安3)
戦国時代、摂津国伊丹で戦国武将・荒木村重の子として誕生。父・村重が主君である織田信長に反旗をひるがえすも失敗し、一族は滅亡、2歳の又兵衛は奇跡的に救出された。京で絵師として活動を始め、40歳頃、越前北庄(現・福井県)に移住し20年余を同地で過ごした。その後、三代将軍・徳川家光の娘の婚礼調度品制作を命じられたことを機に江戸へ移り、73歳で波乱に満ちた生涯を終えるまで江戸で活動した。古典的な題材を扱いながらも従来の表現とは異なるダイナミックな表現から「浮世絵の源流」と評されることも多い。

岩佐又兵衛の自画像
岩佐又兵衛の自画像といわれるもの。どの流派にも属さず、自分だけの画風を確立した孤高の人。

又兵衛の代表作

『山中常磐物語絵巻(やまなかときわものがたりえまき)』(全12巻)(岩佐又兵衛 画)
『山中常磐物語絵巻(やまなかときわものがたりえまき)』(全12巻)※部分
これは、“牛若丸”こと源義経の母・常盤御前の悲劇を描いた壮大かつ残酷な絵巻物。

一見すると絢爛豪華な美しい絵巻物だが、常盤御前が盗賊に襲われ惨殺される場面の凄惨さは思わず目をひそめるほど。余談ですが、数ある展示物のうちこの『山中常磐』の展示コーナーが一番混雑していて、正直ほとんど見ることができませんでした……。

京の人々を生き生きと描く国宝

『洛中洛外図屏風』(通称「舟木本」)(岩佐又兵衛 画)
『洛中洛外図屏風』(通称「舟木本」)※部分
京の市街(洛中)と郊外(洛外)を俯瞰的に描いた『洛中洛外図』は数多くあり、これもそのひとつ。

ただ、又兵衛の『洛中洛外図』がほかと違うのが都市を描く、というより京で暮らす人々に焦点を当てたことだそう。その通りで、六曲一双の屏風には生き生きとした人々がぎっしりと描かれている。

来日した南蛮人、喧嘩をする人、歌舞伎踊りを見る者、壮麗な祇園祭、はたまた農作業をする人々など。いつまでも見ていられるほど楽しい。

新発見&初公開の異色作

『妖怪退治図屏風』(岩佐又兵衛 画)
『妖怪退治図屏風』
錦雲をかき分け堂々と登場するのは勇ましい騎馬武者たち。

彼らの視線の先、禍々しい黒雲のなかにはたくさんの異形の者たちがうごめいている。しかしよく見ると妖怪たちはみな情けない顔をして急いで退散するところのよう。

慌てふためくその表情を見ているとなんだかかわいそうになってくる。

『妖怪退治図屏風』に登場する妖怪たち(岩佐又兵衛 画)

ちなみにこの作品は又兵衛の工房で製作されたと考えられているそう。400年近く昔の作品とは思えないほど色鮮やかで、特に金色のまばゆさは感動もの。

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