• 更新日:2019年10月12日
  • 公開日:2017年8月17日


さて、ひとくちに箪笥といってもそのバリエーションはさまざま。用途によって色々なタイプの箪笥がつくられていました。江戸時代、どんな箪笥が活躍していたのか代表的なものをご紹介しましょう。

大事な着物を守ります!
衣装箪笥


『浮絵駿河町呉服屋図(うきえするがちょうごふくやず)』(歌川豊春 画)
江戸時代を代表する呉服屋・三井越後屋の店内。店の奥にはたくさんの抽斗がついた大きな箪笥があちこちに(『浮絵駿河町呉服屋図』歌川豊春 画)
衣装箪笥はその名の通り、衣類を収納する箪笥のことで、最もポピュラーなものでしょう。

小さいけど豪華! 小物の整理・収納ならおまかせあれ
手許箪笥(てもとたんす)


手許箪笥。小さいけど豪華、小物の整理・収納にうってつけ
画像引用元:かやぶきの郷薬師温泉 旅籠
櫛(くし)や煙草(たばこ)などの日用品から、お金や印判、証文などといった貴重品まで、あらゆる小物の収納にベンリ。閂(かんぬき)式の鍵もついているのでセキュリティもバッチリ! 小さめサイズの箪笥ながら豪華な装飾を施したものもたくさんあるんだとか。

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刀を入れるためだけの超ニッチな箪笥
刀箪笥


刀箪笥。刀を入れるためだけの箪笥
画像引用元:かやぶきの郷薬師温泉 旅籠
武家に欠かせない箪笥がこれ。こちらもその名の通り、刀を収納するためだけの箪笥。刀がぴったり収まるように抽斗も幅は広く、深さは浅い。小さな抽斗には刀の鍔(つば)やお手入れグッズを収納したそう。

商家の箪笥はお店の顔!?
帳場箪笥(ちょうばたんす)


帳場箪笥。商家や宿屋など客商売のお店の帳場に置かれた箪笥
深川江戸資料館に再現された米屋の帳場。後ろにあるのが帳場箪笥。
商家や宿屋など客商売のお店の帳場(お客が支払いをしたりする場所)に置かれた箪笥がこの帳場箪笥。帳箪笥ともいいます。商家にとって命より大切な帳簿をはじめ、金銭や印判、証文など大事なものを収納しました。そのため、簡単に開けられないようカラクリ仕かけになっているものも。
また、帳場というお客の目につきやすい場所に置かれた帳場箪笥は、デザイン的にも凝ったものが多かったんだそう。

圧倒的、抽斗の多さ!
百味箪笥(ひゃくみたんす)


百味箪笥。抽斗(ひきだし)の多さが特徴
画像引用元:くすりの博物館
ものすごい抽斗(読み:ひきだし)の数です。写真の箪笥の場合、小さい抽斗が93個、大きな抽斗が4個もあります。こんなにたくさんの抽斗、なにに使ったのかといいますと、それはお医者さんや薬屋さん。そう、多種多様な薬や薬草をここに収納したのです。そのため「薬箪笥」とも呼ばれています。

これほどの数の抽斗を持つ箪笥を製造できる技術、かなりすごいですよねぇ。

江戸時代にもあった! 階段下収納の大センパイ
階段箪笥


階段箪笥。階段にもなる箪笥
画像引用元:富山市民俗民芸村
狭い日本の住宅環境において、階段下スペースを収納などに有効利用するのは今や当たり前ですが、なんと江戸時代にもその発想がありました。
この階段箪笥はその名の通り、階段にもなる箪笥。「箱箪笥」ともいいます。堅い欅(けやき)などの木材を使っているので、安心して階段として使うことができます。柱や壁と一体になったタイプと、移動もできる自立タイプがあったというからますますビックリです。

階段箪笥は現代でもインテリアとして人気があるので、ぜひ、お部屋のアクセントに取り入れてみてはいかがでしょう?

箪笥の究極形態
船箪笥(ふなたんす)


船箪笥。船乗りたちが愛用した船専用の小型箪笥
画像引用元:日本民藝館
こちらは江戸時代から明治時代にかけて日本海の海運を担った北前船などの商船で、船乗りたちが愛用した船専用の小型箪笥。

時化(しけ)にも耐えられる頑丈なつくり、万が一、難破しても内部が濡れないパーフェクト密閉。さらに、貴重品を盗まれないように複雑なカラクリ仕かけになっているものもたくさんありました。

船箪笥は貴重品を盗まれないよう、抽斗(ひきだし)は複雑なカラクリ仕様になっている
手形(パスポートのようなもの)や証文などの貴重品を盗まれないよう、抽斗は複雑なカラクリ仕様に!画像引用元:かやぶきの郷薬師温泉 旅籠
船箪笥はほかの箪笥に比べるとサイズが格段に小さいのですが、全面を覆うように施された金具の装飾が目を引きます。これは箪笥の強度をアップすると同時に、持ち主の権力を示すという意味合いもあったそう。

職人の技術を駆使し生まれた箪笥の究極形態ともいえる船箪笥ですが、時代がかわり北前船の役割が大型船や鉄道に取って代わられるようになると、船箪笥もその役割を終え、姿を消しました。なんだかちょっともったいない気がします。

大坂で誕生したといわれる箪笥は、その後、全国各地に生産地を広げ、たとえば幕末仙台藩が地場産業として手がけた箪笥づくりは「仙台箪笥」という名産品を生み、海外にまで輸出されるようになりました。

近年、衣装ケースやクローゼットを使用する人が増え、箪笥の出番も減りましたが、味のある和箪笥は現代的インテリアともとっても合うので、お部屋の模様替えをご検討の際には、和箪笥を取り入れてみるのもいいかもしれません。

明治時代に撮影された古道具屋の店内
明治時代に撮影された古道具屋の店内。画像右、店員の背後に葵の紋が入った小型の箪笥が。徳川家が売り払ったんでしょうか。現代でもアンティークショップなどで古い和箪笥を扱っているので、ぜひ。画像引用元:長崎大学附属図書館

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カテゴリ:災害 / 現代に繋がる / 生活

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