死ぬまで絵の真髄を追い続けた「画狂老人」


3人目
葛飾北斎(かつしかほくさい)

「赤」と「黒」ふたつの富士

『富嶽三十六景』「凱風快晴」(葛飾北斎 画)
『富嶽三十六景』「凱風快晴」

『富嶽三十六景』「山下白雨(さんかはくう)」(葛飾北斎 画)
『富嶽三十六景』「山下白雨(さんかはくう)」
北斎の代表作として有名な富士山を描いた風景画シリーズ『富嶽三十六景』。“波の絵”など超有名作オンパレードの本シリーズでも屈指の傑作がこれ。

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2つを比較してみると構図はほぼ同じながら、「凱風快晴」(通称「赤富士」)はさわやかでゆったりとした静かな富士。一方の「山下白雨」(通称「黒富士」)は稲妻が走り雷鳴が聞こえてきそうな荒々しい富士。

現実を超越した不思議な世界

『富嶽三十六景』「甲州三坂水面(こうしゅうみさかすいめん)」(葛飾北斎 画)
『富嶽三十六景』「甲州三坂水面(こうしゅうみさかすいめん)」
同じく『富嶽三十六景』より。木々の緑も鮮やかな初夏の富士です。波ひとつない河口湖に“逆さ富士”が映り、動いているのは一隻の船だけ。静謐な空気に満ちた風景画です。しかし、よく見ると不思議な点が。実際の富士山は雪のない夏の姿ですが、湖面に映る“逆さ富士”は雪をいただいた冬の姿。さらに実際の富士と“逆さ富士”は対称に描かれています。現実には“ありえない風景”なのですが、北斎の手にかかると現実以上に感動的な風景に。

下界と天界を結ぶ雲の橋

『諸国名橋奇覧』「足利行道山くものかけはし」(葛飾北斎 画)
『諸国名橋奇覧』「足利行道山くものかけはし」
『富嶽三十六景』などのヒットを受け出された全国の奇橋を描いた風景画シリーズ『諸国名橋奇覧』より。すごいところに橋が架かっています。ここは行道山にある浄因寺(画面右)という山岳信仰の霊場で、画面中央には本堂と茶室をつなぐ橋が描かれています。しかし、この絵の“真の橋”は下界と天界を結ぶかのように流れる雲の橋でしょう。

グロテスクなのにほんのりユーモア

『百物語』「小はだ小平次」(葛飾北斎 画)
『百物語』「小はだ小平次」
怪談「百物語」をテーマにした化物絵シリーズ(5枚)の1枚。小平次は江戸時代怪談ものに登場するさえない歌舞伎役者で得意な役は幽霊、という人物。妻の浮気相手に殺され幽霊となった小平次が不倫中の2人を蚊帳の上からのぞきこんでます。こわいです。でも恨めしげな上目遣いがちょっとおもしろく、こわいながらもユーモアが漂います。そして骨や筋肉の描写にハンパない北斎のデッサン力を感じます。

もうひとつの“グレートウェーブ”

『怒涛図』「男浪(おなみ)」(葛飾北斎 画)
『怒涛図』「男浪(おなみ)」

『怒涛図』「女浪(めなみ)」(葛飾北斎 画)
『怒涛図』「女浪(めなみ)」
83歳の北斎が信州の小布施(おぶせ)を訪れた際、町の祭り屋台天井絵として描いたのがこちら。「男浪」は2つの浪がまるでにらみ合うかのように激しくうねり、「女浪」は寄り添うように輪を描いてうねっています。波だけというシンプルさながら、北斎にしかできない構図とデザインそして迫力。ちなみに、「女浪」の額縁には背中に羽の生えた天使のような子どもが描かれています。謎多きグレートウェーブです。

自画像の迫力

葛飾北斎の自画像
葛飾北斎の自画像
葛飾北斎は晩年『画狂老人卍』と名乗り数々の傑作を残しました

<葛飾北斎について>
「世界一有名な日本の画家」といっても過言ではない江戸が生んだ天才絵師葛飾北斎。死ぬまで貪欲に絵の真髄を追求し続け、生涯に描いた作品は3万点以上。人物画、風景画、春画、漫画など幅広いジャンルで森羅万象、あらゆるものを題材に「本物の画工」となるべく筆をふるい続け、その作品は今なお国内外に高く評価され多くのファンから愛されています。そんな北斎、天才にありがちな変わり者で生涯に93回も引越しをした“引越し魔”としても有名。

北斎や、その娘で同じく絵師の葛飾応為(お栄)の作品についてはこちらの記事もどうぞ。


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