シンプルイズベスト

『富嶽図』古礀(こかん) 画
『富嶽図』古礀(こかん) 画
四面の襖(ふすま)に描かれているのは富士山のみというシンプルさ。しかし、やわらかくにじむ墨の色味は温かさと静謐さを感じさせ、なんとも心が落ち着くようです。

作者は江戸時代前期から中期の浄土宗の僧。絵がとっても上手。

スポンサーリンク


荒々しく、ちょっと不気味

『富士山杉樹図屏風』伝狩野永徳 作(江戸時代前期)
『富士山杉樹図屏風』伝狩野永徳 作(江戸時代前期)
目の前を遮るように林立するのは杉林。荒々しいタッチで描かれた杉は、まるで絵本に出てくる魔女の森のような不気味さも感じさせます。その杉林を抜けると、黄金色の雲から顔をのぞかせる雪の富士山が。杉林と白い富士山のギャップがおもしろい作品です。

これは襖に描かれた絵だそうですが、この絵に囲まれた部屋の居心地はどんなものだったのでしょうね。ちなみに、香川県の金刀比羅宮(こんぴらさん)に行くと本物に出会えます。

富士山と……これはなんだ!?

『相州江之島ノ風景腰越ノ方ヨリ見図』勝川春章 作(1785年頃)
『相州江之島ノ風景腰越ノ方ヨリ見図』勝川春章 作(1785年頃)
画像右に見えるのはおなじみの富士山。それはいいんですが、その手前にデーンとあるコレは一体!? よく見るとこのナゾ物体に向かってたくさん人が歩いてきています(画像右下)。

さて、これはなにかといいますと




答えは江ノ島です。

かなりデフォルメされているので、あの江ノ島とは思えませんね。

江ノ島と富士山の組み合わせは画題として人気があったようで、さまざまな絵師が描いています。

青一色

『真乳山望冨岳』旦霞(たんか) 作(江戸時代後期)
『真乳山望冨岳』旦霞(たんか) 作(江戸時代後期)
青いです。とにかく青いです。青一色。そのなかにあって浮かび上がるような富士山の白さが際立ちます。夏の居間に飾りたくなるような作品です。

ちなみに作者の旦霞は生没年も画業の不明のナゾ多き人物です。

あの『解体新書』の挿絵画家が描く富士山

『富岳図』小田野直武 作(江戸時代後期)
『富岳図』小田野直武 作(江戸時代後期)
これまでの富士山絵とずいぶん雰囲気が違います。遠近法や陰影法が使われていて西洋画風です。手前のものは濃く、はっきりと描き、遠くのものを淡く描くことで奥行きを感じさせます。画像左、歩いている2人の男性の足元にも影が落ちています。日本画にはない表現ですね~。でも、西洋画ともちと違う和洋折衷な雰囲気が独特です。なんだかこの風景も日本のようで日本じゃないように見えてくるから不思議。

さて、作者の小田野直武は、「秋田蘭画」と呼ばれる西洋画の画法を取り入れた和洋折衷スタイルを確立した人物なのですが、直武に西洋画法を教えたのが“エレキテルの人”でおなじみ平賀源内です。

次も西洋風。

ここからの眺めが最高なんです

『駿河湾富士遠望図』司馬江漢 作(1799年)
『駿河湾富士遠望図』司馬江漢 作(1799年)
穏やかな駿河湾とそれを囲むような山々、そして美しく清らかな富士の山。これは駿州矢部の補陀落山(現在の静岡県静岡市清水・鉄舟寺)から見た風景だそう。見ているだけで気持ちのいい風が感じられそうです。

作者の司馬江漢は日本における洋風画のパイオニアのひとりで、多才な変わり者としても有名。富士山を愛し、油絵の富士をいくつも描いています。

次もまた西洋風。

写実的だけど本当じゃない風景のなかの富士山

『甲州猿橋之眺望』亜欧堂田善 作(江戸時代後期)
『甲州猿橋之眺望』亜欧堂田善 作(江戸時代後期)
これまたアートな橋からの眺めです。あ、ちなみに富士山は画像右奥、木立に隠れるようにチラリと見えています。これは江戸時代後期に描かれたものなのですが、こんなシャレた橋がどこにあったのかというと、どこにもありません。正確には、タイトルにもある甲州(現・山梨県)の「猿橋」という橋で、実在したのですが、絵のような石橋ではなく木製の橋。つまり、かなり作者の創作が入っているわけです。

西洋風の写実的な風景画ながら、描かれている風景は現実的ではない。そのアンバランスと江戸時代独特の日本風西洋タッチがいい味わいを出しています。

さて、これで最後の作品となります。

外国人から見たMount Fuji

『富嶽図』ヤン・フレデリク・フェイルケ 作(1820年?)
『富嶽図』ヤン・フレデリク・フェイルケ 作(1820年?)
たとえるならば、日本観光に来た外国人が、母国の友人(もしくは母親)に出した手紙に描いた風景的なシンプルさ。雲の表現がユニークです。また、画像左中央、富士山の麓の木々の描き方に作者のマジメな性格が感じられるようです。

こちらの富士山を描いたのは、長崎のオランダ商館で働くオランダ人医師フェルケ。長崎から江戸へ参府する際に見た富士山の景色に感動したのでしょう。国籍を問わず、富士山には人を魅了するものがあるようです。

作者が違えば、同じ富士山でもこんなに違う。お好みの富士山は見つかりましたか?

江戸ブログ 関連記事

江戸ブログ 最新記事

あわせて読みたい 戦国・幕末記事