丸いのがぎゅうぎゅう
丸っこい人がぎゅうぎゅうと集まって演奏会を聴衆中。談笑したり飲み食いしたりとじつに楽しそうです。なにせ、丸い。丸いのがニコニコしていたら、それ即ち幸せ空間。
これは琴や尺八の演奏会「さらえ講」のようすを描いたもので、大坂の文化人・流石庵羽積の著書『歌系図』(1782年)のなかの挿絵の一枚。
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どっちが長い?
天狗は鼻が長いのが自慢。七福神のひとり寿老人は長い頭がチャームポイント。はてさて、どちらが長いかな? と比べっこ。「オレ(わし)の勝ち~!」とばかりにどちらも手をピンと挙げているのが微笑ましいです。
とても偉人には見えません
近所のおっちゃん、おばちゃんが集まって談笑している絵、ではありません。描かれているのは絵のモチーフとして人気があった「六歌仙」。
六歌仙とは、平安時代を代表する6人の歌人のことで、僧正遍昭、在原業平、文屋康秀、喜撰法師、小野小町、大友黒主がそれ。小野小町は“絶世の美人”として有名ですが、耳鳥斎の手にかかると……まるでピーナッツみたいにこじんまり(左から2人目)。
これが……関羽……だと?
こちらは『関羽図』。「三国志」に登場する軍神・関羽です。長くて美しいヒゲと青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)が自慢。関羽って、だいたい誰が描いても「あ、これ関羽だよね」とわかるものですが、耳鳥斎はちと違う。
こちらの絵に描かれた人物のうちどちらが関羽かというと、
後ろの人物です
…たぶん。
大英博物館の説明によれば、関羽とその盟友にして主君の劉備が描かれているそうなので、青龍偃月刀を持っている方が関羽でしょう。
でも、これって完全にあのディズニー映画のキャラクターですよね。
そう、ベイマックス。
まさかのベイマックス似の関羽です。いやはや耳鳥斎。
最後はちょっと耳鳥斎らしくない作品。
真っ赤な髪を風に揺らし、髪と同じく真っ赤な大盃をかたむけているのは猩々(しょうじょう)。中国の伝説に登場するお酒好きの精霊で、能の演目では赤い髪に赤い面(おもて)、赤い装束という赤尽くしの姿で登場するため、絵のモチーフとしても人気があります。
細い三日月が出る夜、咲き誇る菊の傍らで静かに酒を飲む猩々の後ろ姿を描く――なんとも美しく静けさに満ちた一枚です。あえての後ろ姿、というところがたまらないですねぇ。
浪花生まれらしい「笑い」に満ちたユーモラスな耳鳥斎の絵は、今見ても新しくそして楽しい気持ちにさせてくれます。
もう一人のユルかわ絵師・北尾政美の作品もあわせてどうぞ!