美人というより美少女。ちょっとロリコン趣味な明和美人
続いて江戸時代中期にあたる明和期(1764~72年)の美人を見てみましょう。当時、「明和三美人」とうたわれモテモテだった3人の美人がいました。江戸は谷中の笠森稲荷前の水茶屋「鍵屋」の看板娘・お仙、浅草寺奥山の楊枝屋「柳屋」の看板娘・お藤、そして二十軒茶屋の水茶屋「蔦屋」の看板娘・およし。

明和期を代表する浮世絵師・鈴木春信が描いた「明和三美人」のうち笠森お仙(画面右)と柳屋のお藤(画面左)。中央にいるのは当時のトップスター女形(おやま)の瀬川菊之丞。(『お仙と菊之丞とお藤』)
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この3人のなかでも笠森お仙の人気は圧倒的。
シロウトの町娘ながら、その美少女ぶりが江戸中で大評判となります。今でいうと『美人すぎる鍵屋の店員』といったところで、ここらへんは数百年前も変わりません。
お仙が働く鍵屋はお仙見たさの客で大混雑。鍵屋も商売上手なもので、お仙人気にあやかろうと、なんと“お仙グッズ”を販売。美人画はもちろん、お仙手ぬぐいやお仙すごろく、果てにはお仙フィギュア(人形)まで作ったというから、殺伐とした資本主義に慣れきった我々ですら震え上がるほどの商魂です。
お仙ブームの火付け役となったのが浮世絵師の鈴木春信でした。お仙に魅了された春信はとにかくお仙を描きまくり、お仙の美人画によって人々はお仙ファンとなったのです。

春信によるお仙の美人画。ポーズがもうあざとい。
さて、お仙に代表される明和期の美人の条件をまとめますと……
- 全体的に可憐でかわいらしい少女風
- なで肩、柳腰の華奢なスタイル
- 小さくぷっくりとした唇
今でいうと「1000年に1人の逸材」といわれるアイドルの橋本環奈さんみたいな感じでしょうか。よくわかりません。
抜群のプロポーション!モデル顔負けの天明美人
続いて18世紀後半の天明期(1781~89)の美人を見ていきましょう。10年経つと世に受ける美人がガラッと変わります。明和期の清純少女タイプから、抜群のプロポーションを誇る健康美人が台頭してきます。

これは「江戸時代の六大浮世絵師」のひとりにもあげられる当時の人気絵師・鳥居清長の美人画『当世遊里美人合 たち花』です。
このプロポーションはすごい。8頭身いや9頭身はあるかもしれません。すらりとした長い手足の長身にキリッとした表情、いかにも健康そうな美人ですね。清長の描く特徴的な美人は近年、「江戸のヴィーナス」とも呼ばれています。
さて、清長の「江戸のヴィーナス」をもとに天明美人の条件をまとめると……
- すらりとした長身
- 長い手足
- あごは細めのシャープな顔立ち
- きりりとした濃い眉
- 切れ長で涼しげな目元
今でいうと長澤まさみさんとか榮倉奈々さんなんかがイメージでしょうか。よくわかりません。