• 更新日:2017年8月18日
  • 公開日:2016年9月17日


人間味(?)あふれる妖怪たちの嬉し恥ずかしウェディングストーリー


<5作目>

『化物婚礼絵巻』
『化物婚礼絵巻』

こちらは、熊本藩八代(やつしろ)城の城主・松井家伝来の絵巻物。描かれているのは、人間世界とまるで変わらないある妖怪カップルのお見合いから出産までの物語です。

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互いにドキッ!お見合いで運命の出会い

妖怪のお見合い(『化物婚礼絵巻』より)

江戸時代の庶民の結婚はお見合いが基本。妖怪もそれは同じよう。

若い女性の妖怪(画像右)は恥ずかしそうに口元を隠し、嬉しげな視線をよこしています。その視線の先には、お相手の男性妖怪が(画像左から2番目)。

男性の方も女性に見とれすぎて、お茶をこぼしちゃってるのにも気づかない。ちなみにお見合いの場となった茶屋の名前は「うつしみ屋」。

茶店の茶釜は化け狸の变化(『化物婚礼絵巻』より)

よく見ると、茶店の茶釜は化け狸の变化!カワイイな。

結納の品にご満悦

妖怪の結納(『化物婚礼絵巻』より)

お見合いの結果は重畳で、さっそく結納の儀式。

婿方から嫁方へ豪華な結納品が贈られます。結納の使者が自信満々に差し出すのは、丸々と太った狸。ちゃんと水引もかけられているのがおもしろい。

嫁方の妖怪もご満悦の表情を浮かべてます。背後の屏風に描かれているのが、愉快そうに踊るガイコツという芸の細かさがニクイ。

百鬼夜行?いえいえ、嫁入り行列です

妖怪の婚礼(『化物婚礼絵巻』より)

トントン拍子にことは進み、いよいよ婚礼です。

おどろおどろしくも華やかな妖怪たちの行列は、白無垢姿の花嫁を載せた駕籠(画像右)を運ぶ嫁入り行列。

先導役を務める赤鬼はさすがの貫禄ですね~。駕籠を担ぐろくろ首は、よく見ると肩ではなく首で駕籠をかついでいます。長い首にはこんな有効活用方法もあるんです。

めでためでたの三々九度

白無垢姿の妖怪(『化物婚礼絵巻』より)

さぁ、若い2人がいよいよ夫婦になる瞬間。白無垢姿の初々しい花嫁は盃を手にし、長い舌を伸ばしてお酒を飲もうとしているのがブキミかわいい

そして相変わらず花婿は花嫁に熱視線を送ってます。とにかく見つめすぎぃ!

ちなみに2人の間にあるのは「島台(しまだい)」というもので、今でも古式ゆかしい結婚式には登場するそう。神の依代ともいわれる島台には、松竹梅や鶴亀、老夫婦などめでた尽くしの縁起物がいっぱい。

妖怪世界の縁起物も人間界と同じと見えます。

媒酌の女性妖怪の着物のデザインはバラバラのガイコツ(『化物婚礼絵巻』より)

媒酌の女性妖怪の着物のデザインはバラバラのガイコツ。おしゃれ~。

ホギャ~ホギャ~

妖怪の赤ちゃん(『化物婚礼絵巻』より)

結婚式が終わったら、あっという間に赤ちゃん誕生。

超スピード展開は妖怪ならでは。「赤ちゃん」の名にふさわしく全身真っ赤な一つ目ベビーの誕生に、みんな嬉しそう。

朝日がピカ-、妖怪がニゲロ~

お宮参りをする妖怪(『化物婚礼絵巻』より)

さっき生まれた赤ちゃんも、次のシーンではもうお宮参り。

すくすく育つ赤ちゃんのお祝いに浮かれていると、朝日が昇り始めます。まばゆい朝の光から身を隠すように、妖怪たちは一目散に逃げ出し、物語も幕を下ろします。

お見合いから婚礼、出産、お宮参りまで、すべてはなんと一晩の出来事だったというオチにびっくり。

いや~、妖怪のウェディングストーリーとはまた斬新。しかも人間界と変わらない妖怪たちの姿になんだか親近感を抱いてしまいます。

こうした「化物の嫁入り」というユニークなテーマは昔の人々にウケたようで、江戸時代から明治時代には絵巻のほか、錦絵や本などさまざまな形で出版されたんだそうです。

江戸時代の妖怪絵巻、いかがだったでしょうか? 怖い、というよりなんだかとってもカワイイですよね。江戸時代にはほかにもユニークな妖怪がたくさんいるので、またの機会に。

江戸時代の妖怪
「まったね~」

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