100話語り終えるとなにかが起きる!? 江戸時代にブームになった怪談会「百物語」のやり方って?
現在、夏となればライブハウスなどで怪談会が催されたり、友だち同士でコワい話を語り合う……なんてことがまま行われます。肝を冷やして涼を呼ぼう、というわけです。
江戸時代の庶民たちも似たようなことをやっていました。とはいえ、現代のように怪談=夏の風物詩というわけではなかったみたいで、怪談会は夏に限った遊びではなかったようですが。
では、江戸時代の怪談会「百物語」のやり方をご紹介しましょう(時代や流儀によって多少異なる)。
- 参加人数:自由(7〜8人がベストらしい)
- 開催時間:新月の夜
- 開催場所:参加者のうち誰かの家。使用するのは3部屋(最低2部屋)
- 必要な道具:灯芯(灯りをつけるための芯)×100本、灯油(ともしあぶら)を入れた油皿、青い紙で周囲を囲った行灯、鏡×1面
!注意事項!
刃物は危険なので、部屋や周辺に刃物があれば遠くへ片付ける。もちろん刀も帯刀しない。
刃物は危険なので、部屋や周辺に刃物があれば遠くへ片付ける。もちろん刀も帯刀しない。
さぁ、では「百物語」を始めましょう。
ちなみに、使用する3部屋の振り分けは、「参加者が集まる部屋」「空き部屋」「行灯と鏡が置いてある部屋」となっており、部屋の配置がL字型になっているのが理想的なのだそうですが、横続きでもOKらしいです。そして「参加者が集まる部屋」も「空き部屋」も真っ暗。行灯がある部屋も100本もの灯芯に火が灯っているとはいえ、現代の電球の明るさに比べたらかなり薄暗い。つまり、ものすごく暗いなかで怪談会は行われていたというのを念頭においてください。
これが百物語の手順だ!
- 手順その1
- 参加者は部屋に入ったら内側を向いて車座になります。
- 手順その2
- ひとりずつ怪談を1話、語ります。
- 手順その3
- 1話語り終えたら、隣接する空き部屋を通り抜け、鏡と行灯の置いてある部屋へ向かいます。空き部屋は真っ暗なので手探り&足探り状態でソロソロと進んでいきます。※この間も退室者を除いた参加者で怪談トークは続行中。絶やさない。
- 手順その4
- 鏡と行灯のある部屋へ到着したら、行灯のなかに置いてある100本の灯芯のうち1本を抜いて火を消します。それから鏡を手に取り、自分の顔を見ます(地味にこれが一番怖い……)。
- 手順その5
- 再び空き部屋を手探り状態で通り抜け、参加者の輪に戻り、自分の番が来たらまた怪談を語ります。
- 手順その6
- これを続けていき、100話目が終わり、100本すべての灯芯の火が消えると、墨を流したような暗黒の世界が訪れます。と、その瞬間、本物の怪異が現れ……ギャーーーー!!!!!
以上が怪談会「百物語」の大まかな流れです。想像するだけでブルっときます。
ただし、100話すべて語らず99話でストップするのが一般的だったんだとか。
もともと武士の肝試しがルーツともいわれる怪談会ですから、本物の怪異が出ないための安全策として99話でストップしたとも。それでも100話すべて語ったツワモノ(?)もいたのでしょう。実際に怪異が起きた、という記録も残っています。
怪談会「百物語」の由来についてはよくわかっていませんが、17世紀半ば、江戸時代前期の4代将軍・徳川家綱の頃にはすでに行われていたようです。
武士から庶民に広まった怪談会「百物語」は、肝試しのゲームとして、また、寝ずの番をする夜伽や夜勤の者たちの眠気覚ましのカンフル剤として大いに人気を集めました。
なお、怪談会「百物語」で語られる怪談ですが、幽霊や妖怪が出るような“いかにも”な怪談もありましたが、不思議な話だとか奇妙な現象の話だとか怨念や恨みつらみなどとは縁のないフワッとした内容のものも多かったんだとか。怪談話では、狸とか狐とか蛇とか動物も大活躍しました。
怪談会「百物語」のブームをさらに後押ししたのが『百物語』がタイトルについた怪談集の出版ラッシュです。その嚆矢となったのが、1677年(延宝5年)に出版された『諸国百物語』(著者不明)という本で、序文によれば信州諏訪(長野県諏訪)で浪人者を中心に3〜4人の旅の若侍たちが行った「百物語」での怪談話をまとめたものなんだそうな。北は仙台から南は九州まで100の怪談が収録されています(20話×5巻)。幽霊あり、鬼あり、大蛇あり、生き返る死者ありとバラエティに富んでいます。
ちなみに、『諸国百物語』以降、たくさんの『百物語』の名を冠した怪談集が出版されたのですが、実際にちゃんと100話収録したものは『諸国百物語』だけというから驚きます。いいかげんだなあ。
そのほか、江戸時代には怪異小説の白眉といわれる『雨月物語』(上田秋成)なども誕生し、怪談ブームに拍車をかけました。
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