細い月が雲に隠れそうな暗い夜。
橋の上に立つひとりの美女。その手に握られた手紙はまるで生きているかのように天に舞い上り、あるいは彼女の体に巻きつきます。
この女性は天下人・豊臣秀吉の女中おちよ。
ある日、おちよは恋人の死を手紙で知り、そのショックから気が触れてしまい、手紙を体に巻きつけ城の周りを徘徊するようになってしまったのだといいます。
なんという悲しい話……。よく見ると描かれているおちよも裸足であり、尋常ではないようすが伺えます。
一見すると淡い色彩で描かれた幻想的で美しい作品ですが、物悲しさも漂うのはそういう逸話があるからなのです。
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